TAKUMAが語る、10-FEETの新作『コリンズ』映画『THE FIRST SLAM DUNK』の劇伴が広げたバンドの可能性 TAKUMAが語る、10-FEETの新作『コリンズ』映画『THE FIRST SLAM DUNK』の劇伴が広げたバンドの可能性

TAKUMAが語る、10-FEETの新作『コリンズ』
映画『THE FIRST SLAM DUNK』の劇伴が広げたバンドの可能性

2022年に結成25周年を迎えた国内屈指のライブ・バンドである10-FEET。彼らが5年ぶりとなる新作『コリンズ』を完成させた。アルバムには、昨年末の公開以来大ヒットを記録している映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌「第ゼロ感」を含む15曲を収録。“今の自分たちが表現したい音を詰め込んだ”と語る注目の作品について、バンドのフロントマンであるTAKUMA(vo、g)に話を聞いた。

取材・文:尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) 写真:瀧本 JON…行秀

今の自分たちが表現したいものを凝縮して詰め込んだ作品に仕上がった

5年ぶりの新作アルバムですが、どのような作品にしたいと思っていましたか?

 曲を作りながら“どんな内容にするか?”ってことを考えていった感じでしたね。結果として、今の自分たちが表現したいものを凝縮して詰め込んだ作品に仕上がったと思います。

新曲だけでなく、過去に作った曲も収録されているそうですね。

 20年くらい前に作った「炎」と、2011年に書いた「和」という2曲です。今の僕らがビシッとアレンジすることで、デモを作った当時に理想として思い描いていた完成形にたどり着けるんじゃないかなって思いでトライしたんですけど、やってみたら“そうそう、こういう曲にしたかってん”って、凄くスッキリしたところに結びつきました。

今の10-FEETだからこそ完成させることができた表現になったんですね。

 そうですね。昔に作った曲だからといって、“初期衝動の再現”みたいなことをやってもあまりうまくいく気がしなくて。それよりも、今の自分たちの感覚を信用して作り込んでいった感じです。

 そういう意味では、自分たちの中で“10-FEETらしさ”に対する許容範囲が、めちゃめちゃ広がった気がします。“これ以上やったら、もう俺らじゃないんじゃないか?”みたいなラインを設けなくても、今の僕らだったら何にチャレンジしても失敗はしないんじゃないかって手応えは感じていましたね。どんな表現をしても“10-FEETらしさ”は壊れないというか。

 ひょっとしたら『THE FIRST SLAM DUNK』の劇伴(・劇中音楽)を作ったことも大きかったかもしれないです。自分の音楽観を限界まで広げて、自分の持てる力をすべて注ぎ込むような意識でやっていたので、曲作りに対する自由度がめちゃ大きかったんですよね。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』を映画館で観ましたが、シーンに合わせて流れる曲がめちゃくちゃカッコ良くて鳥肌が立ちました。

 めっちゃいいとこで使ってくれはったんですよ。何度か試写を観に行かせてもらったんですけど、1~2回目の時にはまだ音がついてなくて。担当の方から“ここで流れます”って言われていたんですけど、完成試写会で観た時に、事前に伝えられていた場面で曲が流れなかったんです。“このシーンで使ってくれるって言っていたのに……”ってちょっと残念がっていたら、そのあとのもっといいシーンで流れて、“もうニクいな、オイ!”みたいな(笑)。そういう焦らしプレイもありましたね。本当に最高の映画でした。

バスケット・ゴールの高さが“10フィート”というのも、どこか縁を感じます。

 本当に良い縁ですね。“10-FEET”というバンド名を考えた時に、スケートボードのランプのサイズが10フィートだったり、バスケットゴールの高さが10フィートだということをメンバーと話していたりして。僕自身も、ストリート系の競技はずっと好きだったので、そういった共通点が結びついたのはとても嬉しかったです。

映画のエンディング主題歌である「第ゼロ感」は、口ずさみたくなるリフも印象に残りました。ドロップDチューニングのシンプルなフレーズだったので、すぐにギターでコピーしました。

 ありがとうございます。めちゃくちゃ簡単でしょ?

めちゃくちゃ簡単でした(笑)。

 やっぱり簡単に弾けるカッコ良いリフって、かなり限られていると思うので、自分でも“これだ!”と思ったらすぐに出さないとアカンな、と。

「第ゼロ感」のリフは、どのように作り込んでいったのですか?

 コロナ禍が始まった頃のステイホーム期間中、ただ自分が楽しいと思う曲を自由に作っていた時期があって、その時にパッと出てきたリフですね。バリ単調やから、探したらどこかにありそうなフレーズなんですけど……なんか新鮮に聴こえたんですよ。

 悔しいもので、肩の力を抜いてやっている時にたまたま自分の中から出てきた“いいテイク”だったというか……ボーカル録りでもむにゃむにゃ歌った仮歌を超えられないとか……そういう類のフレーズだったのかなって思います。もし、みんなの前で“なんかカッコいいリフ弾いてよ”って言われたら、恥ずかしくて選ばないようなフレーズという気もするんですよね(笑)。

長く活動してきた中で身につけた演奏技術やアレンジ方法といったテクニックが、シンプルな考え方を邪魔するみたいな。

 そうそう。これまでは20年以上“10-FEETの曲を作る”ことを意識していたんですけど、今回そういうことは特に考えず、“今後、バンドでやることは一生ないかも”ってタイプの曲もたくさん作っていました。

 「第ゼロ感」や「aRIVAL」などは、まさにそういう気持ちで作った曲で……ゆくゆくは10-FEETの活動にも役立つんじゃないかなって思いながら作っていましたけど、まさかこのような形で世に出るタイミングが訪れるとは想像もしていませんでしたね。

思わず弾いてみたくなるシンプルなリフという点で、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」ばりの名フレーズだと思います。

 確かにそうかもしれないですね(笑)。手数もそれくらい少ないですし。自分の頭の思考回路的に、最初から10-FEETの曲として作っていたら、おそらく出てこなかったようなフレーズなので、そこは自分の中でも大きな発見でした。

「第ゼロ感」のデモをメンバーに聴かせた時の反応はどうでしたか?

 悪くなかったですよ。いいほうやったと思います。

曲のラストで鳴るDマイナー・コードも印象的でした。映画のエンドロールでも、井上雄彦監督の名前が出てくるところで鳴っていましたが、なぜ曲の最後をDマイナーで締めくくろうと思ったのですか?

 あのパートは、実は“あるシーン”に合わせて弾いたフレーズなんですよ。

本来なら劇中で使われる予定だったと。

 そうなんです。劇中の色んな場面に音を当てるために、膨大な量の素材を作ったんですけど、もともとは“ある登場人物のあるプレイ”に当てるために作った音なんです。どちらかというと劇伴用に作った効果音だったので……まさか主題歌のほうにも採用することになるとは思っていませんでしたね。

 普段の自分だったら嫌がりそうなアレンジなんですけど、その時は“いいやん”って感じたんですよ。あのDマイナーの響きは僕の中でけっこう重要でしたね。

そうだったんですね。

 あと、あのフレーズはギターではなく、MIDIで鳴らした音なんです。ちょっとチープな音で作ったシーケンスに歪みとリバーブを足したんですけど、生ギターで弾いたり、そこそこいい音のMIDI音源で試してみたら全然雰囲気を出せなくて。打ち込みの奥深さを知りましたし、面白さも感じました。

 ライブで演奏する時はギターで弾いているんですけど、曲の雰囲気がライブならではの表現に変わるので面白いですね。

TAKUMA(写真:瀧本 JON...行秀)
TAKUMA(写真:瀧本 JON…行秀)

ギターを弾くうえで大事なことは“できることを、できる限り、思い切りやる!”

Disc2には、劇伴で使われたインスト曲が収録されています。「暁の砂時計」で聴けるスラップ・ベースや「Alert of oz」のツーバスなど、楽器プレイヤーとしての魅力が凝縮されているように感じました。

 確かにそうかもしれないですね。ライブでの再現を前提としていないので、“最高のプレイをレコーディングする”というアプローチで作りました。NAOKI(b、vo)もKOUICHI(d)も、伸び伸びやれたんじゃないかな。バンド演奏を心から楽しんでいるようなところがグルーヴに出ていたらいいなと思っていましたね。

ちなみに劇伴の「Double crutch ZERO」は、「第ゼロ感」にアレンジを加えて作った曲ですか?

 順番としては、最初に「第ゼロ感」のデモ音源があって、それが「Double crutch ZERO」になり、それがシェイプアップされて「第ゼロ感」が生まれたという流れですね。

「深海魚」ではスライド・ギターのソロが耳に残りました。どのように作っていったのですか?

 アルバム制作の最後にできた曲なんですけど、映画『THE FIRST SLAM DUNK』に登場するある人物が、過去の美しい思い出を思い浮かべている場面をイメージして作りました。ソロに関しては、もう頭の中でボトルネックのフレーズが鳴っていたので、それを具現化した感じです。

 「深海魚」のアレンジに関しては、最初は“アコースティック・ギターの音だけでもいいのかな?”って考えていたんですよ。でも試しにエレキを入れてみたら、沖縄にイギリスが加わったような雰囲気で、それが凄く面白く感じたんです。

10-FEETの楽曲では、歪ませたギター・サウンドが大きな存在感を放っていますが、音作りでこだわっているところは?

 若い頃にスレイヤーやセパルトゥラ、メタリカ、メガデス、パンテラといったバンドの曲を聴いて、“なんちゅう音してんねん!”って衝撃を受けたんです。“どんな凄い歪みマシンを使ってんねん!”って。

 で、自分も彼らが使っている機材を集めたりして弾いてみたりしたんですけど、やっぱ同じような音は出せなくて。そうやって試行錯誤しながら色んな経験を重ねていく中で、“音源で鳴っている音ってそこまで歪んでないぞ”ってことに気づくんですよね。

 昔の僕は極端なメタル小僧だったので、“歪んでいない音楽は認めない!”みたいな時代もあったんですけど、凄くカッコいいって思って聴いていた音楽が、実は全然ロー・ゲインだったりして(苦笑)。そこで“右手の重要さ”に気づくんです。“これタッチのニュアンスで歪ませてるんだ”って。

 なので今は、なるべく歪み系の機材を使わずに“いかに歪んでいる感じを出せるか?”というのが、めちゃめちゃ大事だと思っていますね。

「123456789101112」のサビは、1回目と2回目でコード進行のアプローチを少し変化させていますね。狙いは?

 一箇所、半音だけ変えているんですけど、ほんの少しだけの違いなのに効果があるな、と思ったので採用しました。言われて初めて気づくレベルだと思うので、やらなくてもいいのかな?とも思いましたけど、何回か聴き返してみて“なんや、今の?”って感じてもらえるかなと。

 やっぱり3ピース・バンドは、それぞれが兼業しなければならないところも多いし、鳴っている音も多くはないので、“簡単で効き目のあるやつ”が、めちゃくちゃ大事なんです(笑)。

TAKUMA(写真:瀧本 JON...行秀)
TAKUMA(写真:瀧本 JON…行秀)

レコーディングで使用した機材について教えて下さい。ギターは何を使いましたか?

 メインで使ったのは、ギブソンのエクスプローラーですね。ライブで使っているエクスプローラーとは別にレコーディングでよく使うモデルがあって、それを弾きました。たまにカッティングや単音リフを弾く場面でストラトを使ったりもしましたけど、基本的にはマーシャルとエクスプローラーの組み合わせでした。

アコースティック・ギターは?

 確かマーティンのDXシリーズだったと思います。「まだ戻れないよ」、「おしえて」、「深海魚」で使いました。

アンプは何を使いましたか?

 アンプは、マーシャルのJVMですね。セッティングは、ミドルとベースが5~6くらいとそこそこ多めで、レゾナンスは3~4くらい。プレゼンスの使い方は難しいところですけど、僕は2~3くらいで使っています。

10-FEETは2022年で結成25周年を迎えましたが、これまでの活動を振り返って、いちギタリストとしてターニング・ポイントになった出来事は?

 ギター人生のターニング・ポイントか……これは僕がギターを始めた頃の話なんですけど、グリーン・デイの「バスケット・ケース」のミュージック・ビデオを観た時に、パワー・コードをかき鳴らしながら歌っているビリー・ジョー(アームストロング/vo、g)の姿がめちゃめちゃカッコ良くて……衝撃を受けたんです。

 速弾きのうまい人がまわりにたくさんいる中で、当時の僕はろくにソロも弾けなかったんですよ。“もう、ギターをやめようかな”と思っていたところに、グリーン・デイが彗星の如く現われたんです。その時に、“ソロを弾かなくてもカッコいいギターが弾けるんだ”と思い、再びギターを手に取ったんです。

 で、思い切りコードをかき鳴らし続けていたら、やがて周りの尊敬していたギタリストたちから褒めてもらえるようになって。なので、例えギターが上手に弾けなくても好きなことを突き詰めていったり、“型破り”とか“変わっている”と言われてもいいから色んなことに挑戦してみるのもいいのかなって思います。僕にはそんな転機がありました。大事なのは、“できることを、できる限り、思い切りやる!”です。

1月からはロング・ツアーも始まります。ライブを楽しみにしているギター・キッズに向けて、意気込みをお願いします。

 これは“バンドあるある“だと思うんですけど……長いツアーの中では、メンタルがめっちゃ疲れてしまったり、メンバーとの仲があまり良くない時期もあったりするんですよね。ちょっと疲れてしまって、いつも言ってる“お疲れ様”って挨拶がパッと出なかったり……ほんの些細なことで人間関係のバランスが崩れてしまうこともあったりするんです。

 ただ、“今日の俺たちは演奏だけでしか分かり合えてなかったな”って時に、凄くいいライブができたりすることもあって。で、しばらく経って“あの時の雰囲気、最悪やったけどめっちゃカッコよかったな”って笑い合えたりするんですよね。

 なのでいい時も悪い時もあると思うけど、そういうところも楽しみながら、みんなにも面白がってもらえたらいいなって思います。

最後に作品制作を振り返って、一言お願いします。

 完成したばかりのアルバムですけど、“良い作品ができたんじゃないかな”と思ってます。今までのレコーディングの中で一番楽しんでやれたと思っているので、聴いてくれた人の楽しみにも結びついてくれたら嬉しいですね。

10-FEET。左から、KOUICHI(d,cho)、TAKUMA(g,vo)、NAOKI(b,vo)。
10-FEET。左から、KOUICHI(d,cho)、TAKUMA(g,vo)、NAOKI(b,vo)。

「10-FEET “コリンズ” TOUR 2023」開催中!
詳細:https://10-feet.kyoto/pages/collinstour

作品データ

コリンズ
10-FEET

EMI Records/UPCH-29450(完全生産限定盤)/2022年12月14日リリース

―Track List―

  1. SLAM
  2. 第ゼロ感
  3. ハローフィクサー
  4. まだ戻れないよ
  5. aRIVAL
  6. ブラインドマン
  7. 123456789101112
  8. アオ
  9. 彗星
  10. アリア
  11. おしえて
  12. シエラのように
  13. 深海魚

※完全生産限定盤、通常盤BにはCD2“『THE FIRST SLUM DUNK』劇中音楽(10-FEET Original ver.)”を収録。完全生産限定盤、初回生産限定盤にはDVD“「京都大作戦2022〜今年こそ全フェス開祭!〜」”が付属する。

―Guitarist―

TAKUMA