小林壱誓が語る、緑黄色社会の新作『pink blue』での、歌のメロディを活かす印象的なギター・アプローチ 小林壱誓が語る、緑黄色社会の新作『pink blue』での、歌のメロディを活かす印象的なギター・アプローチ

小林壱誓が語る、緑黄色社会の新作『pink blue』での、歌のメロディを活かす印象的なギター・アプローチ

男女混合の4ピース・バンド、緑黄色社会。彼女らの楽曲は長屋晴子(vo,g)が歌うキャッチーなメロディと、シンセの煌びやかな音色が骨子となっているが、その隙間に差し込まれる“シンプルだけど耳に残る”ギター・アレンジも聴きどころの1つ。今回は、そんな彼女らが2023年5月にリリースした新作『pink blue』のギター・アプローチやサウンド・メイクについて、ギタリストの小林壱誓に詳しく聞かせてもらった。

取材/文=伊藤雅景 写真=Azusa Takada

“耳触りの良い気持ち悪さ”みたいなのを狙って作りました

それでは、新作『pink blue』のギターについて聞かせて下さい。今作は、キャッチーさとオルタナ感が高次元に調和した楽曲アレンジが印象的です。

 俺はポップスっぽいアプローチも、いなたいロック的なサウンドも大好きですが、根底では“ギターは歌ありきの楽器”と思っているところがあって。だから絶対に歌の邪魔はしないし、エグいプレイやアレンジにするにしても、ちゃんと歌の帯域からはずれるように意識したり。今作のギターはそういう部分を前提としつつ、“耳触りの良い気持ち悪さ”みたいなのを狙って作りましたね。

アレンジで気をつけたことはありますか?

 基本的に、ボーカル・メロディの裏では動くフレーズをあまり弾かないようにしていますね。例えば、ギターは歌が抜けた瞬間で“何かフックを入れる”プレイが多いかもしれない。これはいつ身についたとかではない気がします。いつの間にかそういう作り方になっちゃってましたね。

バンドを結成した頃から?

 いや、最初はメチャクチャやってました(笑)。ボーカルが歌ってようが関係なく、“ギターで何か面白いことやってやろう”みたいな。

(笑)。

 でも、色んな曲でギター・アレンジを勉強していくうちに、そういうプレイは合わないかもと気がついて。もちろん、エグいことをやりまくるのも間違いじゃないし、カッコいいと思います。そもそも、自分が好んで聴いてる音楽の中には、歌の裏だろうが気にせず弾きまくってる人がいっぱいいますし。ただ、緑黄色社会においてのギターの立ち位置はそこじゃないなっていう。あと、1回で覚えられるかつ“歌えるギター”にするっていう部分は特に意識しています。

確かに、シンプルでグッとくるフレーズがたくさん入っていますよね。特に「うそつき」のリフとか。

 「うそつき」は、長屋(晴子/vo,g)の曲ですね。デモの段階でシンセのリフが入ってたんで、そこにユニゾンする形で作りました。

鍵盤のメロディが先にあったんですね。

 そうですね。長屋のデモはほぼピアノがメインなので、基本的にはそのピアノ or シンセのフレーズがボンッて送られてくる感じです。そのメロが良かったら、そのままギターに置き換えることも全然あります。自分の曲は自分でギターを作るんですけど、テーマになるメイン・フレーズをどうするかっていう部分はメンバーと話し合いながら練っていきますね。

レコーディングでは直アンで直感的に弾いています

小林壱誓(g)
小林壱誓(g)

では、ギターのサウンド・メイクやレコーディングでのアレンジについて聞かせて下さい。今作は音数が少なく、シンプルなギター・トラックが印象的でした。

 ギターはなるべく重ねずに1本で録ることが多いですね。「さもなくば誰がやる」ではバッキング・ギターがなかったり。

ギターがダブル(同じフレーズを重ね録りする手法)の曲、確かに少ないですもんね。

 今回だと「Starry Drama」はダブルで録ってました、確か。でも歌メロの裏とかは1本です。イントロやインターだけダブルにしていましたね。そういうふうにできるだけ音数を削いでいったほうがそれぞれの楽器が聴こえてくるっていうのは経験則でわかってきているので。最初の頃は、1曲通してダブルの曲もあったんですけど、最近はやらなくなりましたね。

だんだん、音数もトラック数も削ぎ落としていったと。

 その分、レコーディングは楽になります(笑)。

削ぎ落としているというところでいうと、エフェクティブな音色も比較的に薄めですよね。

 自分でエフェクトをかけ録りすることが一切ないからかもしれない。最終的なミックスの段階で、“ここは空間で飛ばしたほうがいいよね”っていうやり取りをすることはあるんですけどね。

必要最低限だからこそ、「陽はまた昇るから」で一瞬出てくる(1:57〜)ワウの音色がより印象的に聴こえている気がします。

 あの一瞬だけ出てくるやつですね。あれは“隙間で何かやりたくなる”っていう気持ちがありました(笑)。

なるほど(笑)。ギターの音色についてですが、鍵盤との帯域の兼ね合いを意識している部分はありますか?

 ギターはいつも鍵盤より先に録るんで、その時点でベストな、カッコいい音を作っちゃいます。鍵盤やシンセ系はそこから作ってもらってますね。もちろんシンセの音もかなりこだわりますよ。なんなら、そこに一番時間をかけてるかも。ギターはとにかく直アンで直感的に弾いてみて、何回か微調整したらそのままOKになることが多いです。

男らしい!

 どうなんですかね(笑)。でも、いい意味での男らしさはあるかもしれない。最初の1回弾いた音で“もういいじゃん、これで”みたいなこともよくありますし。アンプは、とりあえずいつもライブで設定している目盛りに合わせて、そこからちょっとずつ微調整してるくらいです。

代わりがきかないギタリストでいたいです

今後、新たに挑戦したいギターのアプローチはありますか?

 アプローチの話ではないんですけど、今はとにかくビンテージのテレキャスターが欲しいです(笑)。昨日(2023年5月某日)、新しいテレキャスター欲しいな〜と思って楽器屋に探しに行ったんですよ。そこで一番惹かれた1本が、ビンテージの350万くらいするテレキャスターで(笑)。

 もちろんビンテージじゃなくても良いギターはたくさんあるんですけどね。ただ、1回ビンテージを弾いちゃうと“やっぱこれがいいな……”ってなっちゃって。穴見(真吾/b)にもめっちゃ言われるんですよ。“1本、最高なの買ってよ”って(笑)。

買ったら絶対撮影させて下さい!

 ぜひ(笑)!

ギタリストとして、今後の展望はありますか?

 俺は絶対に歌を邪魔しないし、“歌を引き立てるギターを弾きたいな”と思っていて。バンドにとっても、人間としてもそういう存在でありたいというか。そして、“どんな上手くて賢いギタリストにも、緑黄色社会のギターの代わりはできない”っていうギタリストでいたいです。

今日はありがとうございました! 最後にツアーに来てくれるファンに向けて一言お願いします。

 とにかく“歌を聴いてほしい”っていう気持ちでギター弾いているので、“長屋の歌を聴いてくれ!”って思ってます(笑)。もちろん、ギターの音が好きな人はもちろんギターを聴いてほしいし、そのフレーズにグッときてくれたら嬉しいですね。あと、俺も時々歌ってるのでそこも注目してほしいです(笑)。

TOUR INFORMATION

pink blue tour 2023

日程

  • 2023年6月15日(木)東京国際フォーラム ホールA
  • 2023年6月17日(土)山梨・YCC県民文化ホール 大ホール
  • 2023年6月21日(水)京都・ロームシアター京都
  • 2023年6月24日(土)新潟県民会館 大ホール
  • 2023年6月25日(日)石川・本多の森ホール
  • 2023年6月29日(木)東京エレクトロンホール宮城 大ホール
  • 2023年6月30日(金)岩手・盛岡市民文化ホール 大ホール
  • 2023年7月4日(火)三重・四日市市文化会館
  • 2023年7月7日(金)静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
  • 2023年7月9日(日)東京・J:COMホール八王子
  • 2023年7月14日(金)広島・上野学園ホール
  • 2023年7月16日(日)香川・レクザムホール 大ホール

チケット

料金:6,600円(税込)全席指定

※情報は記事公開時のものです。最新のチケット情報や公演詳細は緑黄色社会公式サイトをチェック!

緑黄色社会公式サイト
https://www.ryokushaka.com/

作品データ

『pink blue』
緑黄色社会

ソニー/ESCL-5826/2023年05月17日リリース

―Track List―

  1. ピンクブルー
  2. Starry Drama
  3. ジブンセイフク
  4. あうん
  5. ミチヲユケ
  6. うそつき
  7. 陽はまた昇るから
  8. 湿気っている
  9. Don!!
  10. White Rabbit
  11. さもなくば誰がやる
  12. Slow dance

―Guitarists―

小林壱誓、長屋晴子