TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の世界を生歌唱&生演奏で再現する舞台公演、“LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」”。今回はその“音楽コーディネート”を担当したKubotyに、舞台用の機材選びやサウンドメイクの裏側について聞いてみた。また、ギター・マガジン2023年10月号では、後藤ひとり役を演じた守乃まも(g)と、喜多郁代役の大森未来衣のメイン・ギターを紹介したが、そこで掲載しきれなかった機材やアイテムも合わせてお届けしよう。
取材・文:錦織文子 撮影:星野俊 協力:Kuboty
レス・ポール・カスタムとMooerのGE300を中心に舞台のバンド・サウンドを構築した
舞台でのギター・サウンドのことを聞かせて下さい。機材選びから、音色作り、現場でのディレクションまで全面的にKubotyさんが担当していったそうですが、どのように進めていったのでしょうか?
まずは結束バンドの音源をひたすら聴き込むところから始めました。アニメの音楽制作陣からギター単体のパラデータも共有してもらったので、かなり高い精度でサウンドの解析ができたと思います。
機材のセレクトは実際に結束バンドのレコーディングで使われたものを参考に?
ギタマガのぼっち表紙特集(ギター・マガジン2023年8月号)での(岡村)弦さんや三井(律郎)さんのインタビューや機材紹介ももちろん全部チェックしましたし、かなりヒントになったんですけど、実は使用機材を丸々踏襲したわけではないんです。あくまでも舞台の演者さんたちのプレイや、舞台のシチュエーションありきでチョイスして。レス・ポール・カスタムとMooerのGE300を中心に舞台のバンド・サウンドを構築していったんです。
かなりシンプルですね。Mooer GE300を選んだ理由は?
僕がずっと使っていたので扱いやすかったのと、コスト・パフォーマンスに優れたブランドなので、手に取りやすい機材として選びやすかったところはありました。
で、実は大森ちゃんのギターはP-90一発ですけど、実はGE300のTone Capture機能を使って、TLタイプのセンター・ポジションのサウンドを出しているんです。
そうだったんですか!? どうりでP-90らしくない音がすると思いました。
あのジャキジャキ感はP-90だと難しいけど、ルックス的にはあのペルハム・ブルーのLPJタイプを使いたいじゃないですか(笑)。そうなった時にこの機能は重宝しましたね。
アンプ・シミュレーターは何を採用したんですか?
Mooerで音源に近い音色を近づけていったら、アンプの音色はENGLタイプだったんですよ。
レコーディングではBognerなどが使われていましたが、意外なセレクトです!
GE300にはBognerタイプがなかったというのもあるんですけど、中域に特徴があって歪みが深くて太く抜けてくるサウンド志向のアンプを探していったら、もうこの音で決まりでしたね。
あとはLogic上に自分が作った音を入れて、音源で鳴っているギター単体のフレーズと入れ替えても遜色ないぐらいの次元までは作り込んでいきました。
違う機材でそこまで突き詰めていくとなると、かなり再現するのに難航したのでは?
一番最初のベーシックさえ決まっちゃえば、キャビネット・シミュレーターの周波数帯の特徴で近い音色にできることがわかって。キャビネットとマイクの組み合わせを決定したうえで、ベーシックの歪みの深さや、アンプとヘッド、ペダルの組み合わせを決めていけば、舞台上の音はもうバッチリでした。
結束バンドの作品には“下北沢サウンド”というテーマがありますが、その点について考慮したところはありますか?
もちろんアニメでの音楽に忠実に表現していきましたが、結束バンドの楽曲って“下北であり、下北にあらず”という感じがあるんですよ。実際、曲調やアレンジとしては下北沢の世界観で仕上がりつつ、サウンドは下北沢にこんなやつらいねぇだろってくらいヘヴィに仕上がっていると思います(笑)。“LAのゴリゴリに分厚いステーキ”みたいな感じだったよね?
アニメの音楽制作に携わったギターの三井律郎さんも、下北沢のバンド・サウンドの妙味を踏襲しつつ、結束バンドとして新しいサウンドを提示したかったと言っていました。
いわゆる下北沢ではないというところが、結束バンド・サウンドですよね。マーシャルだとあの分厚いサウンドは出せないですよ。
Guitars
守乃まも(後藤ひとり役)のサブ・ギター
後藤ひとり役、守乃まものサブ・ギター、エピフォンのレス・ポール・カスタム。メイン・ギターはギブソンのカスタムを使用。
大森未来衣(喜多郁代役)のサブ・ギター
喜多郁代役、大森未来衣のサブ・ギター、スパークリング・ペルハム・ブルーのLPJタイプ。ブランドは非公開。メインで使用しているのも同タイプのギターだ。
大森のメイン/サブ・ギターのネック・サイドにはフレット数が記されたラベルが貼られており、努力の痕跡が垣間見える。舞台のギター練習が始まった当初、大森はコードを見ながら弾き語りする程度のスキルであったが、わずか2ヵ月で急成長。ギターの上達具合まで喜多そのものだ。
Sound System
LECTROSONICS/R400A
& SHURE/MW4D
路上ライブでの演奏シーンで守乃と月川玲(廣井きくり役)が使用したワイヤレス・システム。守乃は下段のLECTROSONICSのR400Aを、月川は中段のシュアのMW4Dを使用。
Line 6/HX Stomp
& TC Electronic/Polytune
ライブハウスでの演奏シーン以外で、守乃がギターを弾く際はすべてワイヤレスを使用し、Line 6のHX Stomp(マルチ・エフェクター)でサウンドメイク。ワイヤレスの信号がHX Stompへ行き、PA卓にダイレクトアウト。写真左下のチューナーは舞台袖でギター・テックが使用するTC ElectronicのPolytune(チューナー)。
Others
劇中で喜多がギターと間違えて購入した6弦ベース、アイバニーズのBTB866SC-WKL。
後藤ひとり役の守乃が舞台で使用したボードケースは、Kubotyの私物であるアルモアのPS-3。ギター・マガジン8月号付録の後藤ひとりステッカーが貼られていた。
舞台中に使用しているギター・ケース。左が大森が使用したアイバニーズのIGB541。守乃まもが使用した同じくアイバニーズのIGB540だ。
ギター・マガジン2023年10月号
『布袋寅泰とGUITARYTHM』
本誌では、後藤ひとり役の守乃まも(g)と喜多郁代役の大森未来衣(vo, g)が使用したメイン・ギターのほか、Mooer GE300によるサウンド・システムを一挙紹介!