クリス・シフレットの3rdソロ・アルバム『Lost At Sea』がリリースされた。ここで聴けるカントリー的な要素も内包したアメリカン・ロックは、フー・ファイターズとは違う音楽性で、彼のパーソナルな音楽観が見えてくる。今回はクリス・シフレットに、ソロ活動とフー・ファイターズとで、ギタリストとしてどのような違いがあるのかを聞いた。
インタビュー/翻訳=トミー・モリー Photo by Scott Legato/Getty Images
年を重ねてシングルコイル・サウンドに傾倒してきた
3rdソロ・アルバム『Lost At Sea』がリリースされました。今作はどのような作品になったと感じていますか?
俺はこのアルバムでのギター・プレイにかなり興奮しているよ。アコギやマンドリン、バンジョーといったアコースティック楽器のほとんどを、友人のチャーリー・ウォーシャムにプレイしてもらっていて、エレクトリックはネイサン・キータールという仲の良いギタリストが弾いている。そしてもう1人、トム・ブコヴァックというギタリストも参加してくれているんだ。
俺のギター・プレイはかなりストレートで、おもに中央にあるリズム・ギターやリードを弾いている。
ネイサンはディレイなどを使った奇抜でヴァイブのあるフレーズをたくさんプレイしてくれていて、初めて聴いた人はキーボードだと勘違いするかもしれないね。
ソロ活動とフー・ファイターズでのギター・サウンドで、意識的に差別化しているポイントなどはありますか?
意図的に変えているってことはないけど、年を重ねてクラシックなシングルコイル・サウンドに傾倒していくようになってきたかな。ソロ・アルバムは、レス・ポールやグレッチを使うこともあるけど、テレキャスターやストラトキャスターもかなり使っている。ライブとなるとクラシックなテレキャスターを持っていくことが多いね。
これまでハムバッカーのギターを多く使ってきたのは、フー・ファイターズで求められるサウンドという理由以外にも、あなたが影響を受けたギタリストによるところもあるのでしょうか?
もちろんさ! エース・フレーリー、ランディー・ローズ、エディ・ヴァン・ヘイレン、ヴィヴィアン・キャンベル、AC/DCといった、あの時代の人たちを聴いて育ったわけだからね。彼らからの影響っていうのはかなり大きいよ。
だから昔はシングルコイルのサウンドに慣れていなかったけど、今ではその素晴らしさを理解して楽しんでいる。ギラついた感じが気に入っていて、ギターのボリュームを上げることで、アンプが軽く歪んだ時のサウンドが好きなんだ。
ソロ作品にはフー・ファイターズとは別のサウンドがあって、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズやイーグルスに通じるヴァイブを感じます。
あぁ、それは嬉しいね。ありがとう。
そういった70年代のアメリカン・ロックのようなサウンドを作るために、フー・ファイターズとは異なるアンプやエフェクト・ペダルなどを使うことはありますか?
それはあるね。クラシックなテレキャスターとプリンストン・リヴァーブやデラックス・リヴァーブ、AC15といったアンプを組み合わせているよ。これらのアンプをラウドに鳴らして歪ませてもいいし、クロンのCentaurやメナトーン(Menatone)のRed Snapperといったオーバードライブ・ペダルでプッシュした歪みにしてもいいよね。
俺のペダルボードは宇宙船みたいなサイズなんだよ(笑)
フー・ファイターズは大きなステージで3人のギタリストたちがラウドにプレイしていますが、あなたはアンサンブルの中でどの楽器を最も聴いていますか?
それは良い質問だ! ライブだとイヤー・モニターを装着していて、ライブ・アルバムを聴いているようなサウンドにミックスしてもらっているんだ。
中でも自分のギターとボーカルをたっぷりと聴けるようにしているけど、あくまでもすべての楽器が聴けるようにしてもらっている。パット(スメア)とデイヴ(グロール)がそれぞれの立ち位置にいるように定位していて、ネイト(メンデル/b)はドラムやキーボードと一緒に真ん中に配置してもらっている。俺には全員のサウンドが必要なんだ。
その中でバスドラムやハイハットなど、何か特定のパーツに注意を傾けることはありますか?
バスドラムやスネアには注意を払って聴くね。ライブだとそこは基本的な部分として感じるべきだからさ。
3本のギターによる一体感を生むために、サウンドメイクで考えていることはありますか?
2人とは異なるようにするかな。俺のセットアップは彼らとは異なるし、俺はP-90でもプレイする。使うエフェクトも多いし、年々バンド内での立ち位置も変わってきた。ディレイやコーラス、フェイザー、フランジャーといったトリッピーなサウンドで色づけをするのが俺の役割なんだ。
アンプのセッティングについて考えていることは?
ステージではVOXのAC30とフリードマンのBE-100を使っていて、これらによって大まかに3つのサウンドを使い分けている。BE-100のダーティーなチャンネルはゲインを8くらいに設定した最もヘヴィなサウンドで、クリーン・チャンネルはかなりジャングリーな音にしている。
AC30はこれらの中間のゲインの設定で使っていて、まさしくトム・ペティのスタイルのサウンドだね。VOXとフリードマンはかなりサウンドが異なっているから、アンプの切り替えでカラーを使い分けているよ。
そういったサウンドの使い分けを知ると、デヴィッド・ボウイのバンドにおけるエイドリアン・ブリューのような役割があなたには求められているようにも感じました。
俺は彼ほどにふり切った感じのプレイはできないけど、ある意味近いところはあるのかもね(笑)。デイヴとパットはけっこうストレートでシンプルなペダルボードを使っているけど、俺は宇宙船みたいなサイズなんだよ(笑)。
ひたすら練習することだね。それ以外に方法はないよ
ギタマガWEB読者はエレキ・ギターをバンドでプレイしている人が多いですが、フー・ファイターズのような一体感を生み出すにはどんなポイントが重要ですか?
俺が長い時間かけてきてたどり着いたことなんだが、ドラマーをよく聴くことだね! バンドのみんながドラマーに耳を傾ければ、みんなで同じものにカチッとハマってうまくいくようになるさ。
ロックンロールをやるならドラムとベースがガッシリとハマってくれれば、ギターは自由にプレイできるようになるんだ。そうすればギターもより一層オーディエンスに届くサウンドになるはずだよ。
最後に、フー・ファイターズのようなカッコいいバンドになることを夢見る読者たちにアドバイスを下さい。
ひたすら練習することだね。それ以外に方法はないよ。ギターをプレイしている理由って、結局はギターが好きだからだろう? それ以外に歩むべき道のりはないんだからさ。
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作品データ
『Lost At Sea』
クリス・シフレット
輸入盤/2023年10月20日リリース
―Track List―
- Dead and Gone
- Overboard
- Black Top White Lines
- Damage Control
- Weigh You Down
- Burn the House Down
- Where’d Everybody Go?
- I Don’t Trust My Memories Anymore
- Carrie Midnight Texas Queen
- Parties
―Guitarists―
クリス・シフレット、ネイサン・キータール、トム・ブコヴァック、チャーリー・ウォーシャム