12月10日(火)に新宿LOFTで開催された、サバシスターの忘年会企画「さばちゃんといっしょ2024」。本公演でステージに用意されていた、なち(vo,g)のギター3本を本人のインタビューと共にご紹介。
取材・文=小林弘昂 機材撮影=西槇太一
Nachi’s Guitars
ESP
Original Model “Nachi Angel”
世界で1本だけのオリジナル・モデル
この日、なちが使用したギターは本器のみ。ESPギター・クラフト科とのコラボレーションによって生まれたフル・オーダーのオリジナル・モデルだ。今年の夏から製作が進められ、11月に完成したばかりだという。
“せっかくだからまだ持っていない形のギターにしたい”と、Vタイプを選択。ド派手なカラーはメタリック・ピンクというもので、その上にピンク・ラメが噴かれている。ヘッドとボディ・バックには、なちが描いた天使の絵のインレタが貼られており、なちは本器を“なちエンジェル”と命名。
ボディとネックはマホガニー、指板はエボニーを採用。出音やネック・グリップは普段メインで使用しているES-335をもとに製作してもらったとのことで、“持ち替えても違和感はない”と語る。ピックアップはDiMarzioのDP260(フロント)とDP261(リア)を搭載。弦はすべてのギターにD’AddarioのRegular Light(.010〜.046)を張っている。
2009 Gibson Custom
50th Anniversary 1959 ES-335 Reissue Prototype “Chuck”
横山健から借りている59年リイシューがメイン
なちの普段のメイン・ギターは、ES-335の誕生から50周年を迎えた2009年に発売された、メンフィス・ファクトリー製の59年リイシュー・モデル。本機は横山健(Ken Yokoyama/Hi-STANDARD)が2014年にギブソンを通じて手に入れた50周年記念シリーズのプロトタイプで、なちは1年ほど前から借りている。
ボディ・トップとバックはラミネーテッド・メイプル、ネックはマホガニー、指板はローズウッドという材構成。ピックアップは’57 Classicを2基搭載。ピックアップは普段ミックス・ポジションを選択しているが、その理由は“よくわからないので真ん中にしています”とのことだった。
ボディ・バックには横山がハワイで購入したチョコレート・コーヒー・ビーンズのラベルと、なちが制作したオリジナル・キャラクター“なちすけ”のステッカーが貼られている。なちは横山に内緒で“なちすけ”ステッカーを貼ったそうで、“そこがお気に入りです”とコメント。
MOON GUITARS
Original Model “Nachitang”
軽いボディがお気に入りのオリジナル・モデル
MOON GUITARSから“ギターを作りませんか?”とオファーを受け、2024年の夏に完成したオリジナル・モデル。ボディ・シェイプは“MGタイプが似合うんじゃないか?”と言われたので採用したとのこと。鮮やかなボディ・カラーはカプリ・オレンジというものだ。なちは本器のことを“ナチタング”と呼んでいる。
ピックアップはP-90タイプが2基搭載されているが、こちらもなちのオーダーではなく、MOON GUITARSによるセレクトだという。指板はメイプルで、ポジション・マークはなちのこだわりで星型になっている。また、ヘッドの裏にはなちが描いたイラストが。
なちは本器について、“音は凄く軽やかだと思います。それとボディがめちゃくちゃ軽くて、そこがお気に入り”とコメント。
Interview
見た目がとてつもなくかわいくて
超気に入ってるんです。
今日のライブで使うVタイプのギター、初めて見ました。詳細を教えてもらえますか?
ESPの学生さんが作ってくれたギターです。私、ピンクが凄く好きで、完全にフル・オーダーで色とか形とかを決めました。ヘッドのロゴは私が描いた天使の絵で、ボディの裏にも天使の絵がいるんですよ。だから、“なちエンジェル”っていう名前にしました(笑)。
なちエンジェルですか(笑)。いつ完成したんですか?
本当に最近で、先月くらい。今日初めて使います! ラメは大きいのと小さいの、2種類使ってキラキラするように作ってくれたみたいなんですね。見た目がとてつもなくかわいくて、超気に入ってるんです。
音の印象は?
私、あんまり音に関して詳しくないんですけど(笑)、自分でも音が作りやすいし、太い音が鳴っていて、かなり気に入っています。普段はES-335をメインで使っているので、音とかネックの太さをなるべく335と近くなるように作ってもらったんですね。だから違和感なく弾ける感じです。
ほかに、なちさんからオーダーした部分はありますか?
とにかくギターは見た目が好きで、カラフルなギターを見るのが好きなんですよ。なのでパーツの色を揃えたり、ポジション・マークもハート型にこだわって作ってもらいました。ナットの幅とか、白いバインディングとか、そういうところも選んだんですけど、細かいパーツはある程度、学生さんにお任せした部分もあります。
健さんから借りているメイン・ギター、ES-335についても聞かせて下さい。なぜ335を選んだのでしょう?
ずっとセカンドストリートで買った2万円もしないくらいのギターを使っていたんですけど、修理してもチューニングが合わなくなってきて、健さんに“どうしよう?”って相談したら、緑のレス・ポール・ジュニアと335をリハに持って来てくれたんです。レス・ポール・ジュニアは見た目がお気に入りだったんですけど、めちゃくちゃ重たくて、“これは持てないな……”と思って(笑)。で、健さんは“赤くて大きいギターを女の子が持ってるのが凄くかっこいいと思う”と言ってくれたんですね。私、こんなに大きいギターを持ったことがなかったんですけど、そう言われたのを信じてこれを借りました。
音の印象はどうですか?
暖かい音がしますし、凄く太い音も鳴ります。ボディが大きいから肘を置けるんですよ。それが安定していて、めちゃくちゃ弾きやすいです。あと、ボディの裏にステッカーを貼っていて。“なちすけ“っていう、杉並区のキャラクター“なみすけ”を真似して私が勝手に作ったやつなんですけど、健さんに言わずに勝手に貼りました(笑)。そこがお気に入りです。
MOON GUITARSのMGタイプについても教えて下さい。
今年の夏くらいに完成したオリジナル・ギターです。今の事務所(PIZZA OF DEATH)に入る前から作っていただいたんですよ。きっかけは、THE LET’S GO’sに呼んでもらって弾き語りでイベントに出た時に、MOONの方が観に来てくれていて。というのも、THE LET’S GO’sのCOCOさん(vo,g)がMOONでギターを作っていたんですね。で、MOONの方が私の弾き語りを褒めてくれて、“ギターを作りませんか?”と言ってもらったんです。
なちさんからオーダーした部分は?
“MGタイプが似合うんじゃないか?”と言ってもらったので、形はそれにしました。一番こだわったのはポジション・マークです。COCOさんがギターのポジション・マークを星型にしていて、私も星が好きなので、“星型は絶対にやって下さい!”と(笑)。あとはヘッドのうしろにも自分で描いたロゴを入れました。
P-90タイプが載っていますけど、音の印象はどうですか?
音に関しては特に何もオーダーしていなくて。MGタイプにP-90を載せるというのは、たぶんMOONのこだわりなんじゃないでしょうか……(笑)? でも音は凄く軽やかだと思います。それとボディがめちゃくちゃ軽くて、そこがお気に入り。本当に軽い!
ピックアップ・ポジションはいつもどこに?
よくわからないので、いつも真ん中にしているんです。このギターはローディーさんの手によってテープで固定されていますね。
最後に、ピックについても聞かせて下さい。
ライブでは絶対に健さんからもらったピックしか使わないっていうこだわりがあって。私は楽器店で売っている健さんモデルのピック(Jim Dunlop / Ken Yokoyama Signature Pick)を高校生の時からずっと使っているんですね。で、健さんがスタジオに来てくれた時、“それ使ってるならあげるよ”って、販売されてないイラストのピックを20枚くらいくれて、それをなくさないようにずっと使ってるんです。
そうだったんですか。
でも超最近、健さんがオニギリ型じゃなくてティアドロップ型のピックを使うようになって、“だからお前もこれを使え”って3枚だけ譲り受けました。1枚なくしちゃったんですけど(笑)。なのでティアドロップ型でも弾けるように練習中。ちなみにマイク・ホルダーに付けているピックは自分で作った投げる専用のやつです。“ラッキーだね、なちより”と書いています。