2025年9月1日(月)に日本武道館で一夜限りの来日公演を行なったBEAT。エイドリアン・ブリュー(vo,g)、スティーヴ・ヴァイ(b)、トニー・レヴィン(b)、ダニー・ケアリー(d)というロック・ミュージック界のオールスターが80年代キング・クリムゾンの楽曲を演奏する本プロジェクトで、エイドリアン・ブリューが使用したギターを解説する。
文=小林弘昂 通訳=トミー・モーリー 機材撮影=星野俊 人物撮影=SHOTARO (S)
Adrian Belew’s Guitars
Parker
Fly Adrian Belew Signature Edition
最先端のスペックを詰め込んだ理想の1本
エイドリアンのメイン・ギターは、2009年に一般発売もされたPaker Flyのシグネチャー・モデル。本人曰く、“オリジナルのシグネチャー・モデルはギター界のフェラーリだよ。チューニングが安定していて、軽くて、ちゃんと共鳴する。ネックはすごく薄いけど頑丈なんだ”とコメントしている。
ボディはソリッド・ポプラ、ネックは1Pバスウッド。剛性を確保するため、木部はカーボン・グラス・コンポジットで補強されている。指板もカーボン・グラス・コンポジット製。Sperzelのロック・ペグやステンレス・フレットも特徴の1つ。

通常のギターのスペックだけではなく、MIDIシンセ接続用の13ピン出力や、Line 6のVariaxコンポーネントも採用。ボディにはボリューム・ノブ、トーン・ノブのほかにVariax用のノブも搭載されており、ここで25種類のギター・サウンドを選択することができる。撮影時には1959年製レス・ポールのサウンドを再現した“LESTER”に固定されていた。

ピックアップは、フロントにParkerオリジナルのSustainiac Stealth PRO、リアに本器専用のDiMarzioのハムバッカー、そしてピエゾ・システムにRMC Pow’r BridgeサドルとRMC Poly-Drive Ⅰプリアンプを搭載。マグネティックとピエゾをそれぞれ単体使用することも、ミックスすることも可能。
Sustaniac Stealth PROはトーン・ノブを操作することでFundamental(基本波モード)/Harmonic(倍音モード)という2種類を選択できるが、オフにして通常のフロント・ピックアップとしても使用できる。
トレモロ・ユニットは、スプリング未使用ながらも上下方向に完全な可動域を持たせるParker Vibrato Bridgeが搭載されており、エイドリアンは、“このトレモロ・ユニットは圧倒的な表現力を与え、自分のサウンドに欠かせない存在となっている”とコメント。
弦はD’AddarioのNYXL0946(.009〜.046)で、チューニングはレギュラー。
使用楽曲(2025年9月1日@日本武道館)
- 「Neurotica」
- 「Neal and Jack And Me」
- 「Heartbeat」
- 「Sartori In Tangier」
- 「Industry」(後半のみ)
- 「Larks’ Tongues In Aspic(Part Ⅲ)」
- 「Sleepless」
- 「Frame By Frame」
- 「Matte Kudasai」
- 「Elephant Talk」
- 「Three Of A Perfect Pair」
- 「Indiscipline」
- 「Thela Hun Ginjeet」
1966 Fender
Mustang “Twang Bar King”
『Beat』と『Three Of A Perfect Pair』でも使用した改造ムスタング
キング・クリムゾンの『Beat』(1982年)から使い続けている1966年製ムスタング。シリアル・ナンバーは“149158”。
『Discipline』(1981年)のレコーディングでは1969年製ストラトキャスターを使用したため、当初BEATのツアーでは本器とストラトキャスターの2本を持ち込もうと考えていたそうだが、お気に入りのギターを2本同時になくしてしまう可能性を考慮し、本器のみを使うことにしたという。
ヘッドとボディに施されたペイントは、エイドリアンのソロ作『Twang Bar King』(1983年)のアートワークに合わせてマイク・ゲッツ(Mike Gets)が手がけたもの。デザイン違いでペイントされたムスタングがもう1本あるのだが、そちらはハードロックカフェに売却された。
本器は大きく改造されており、まずチューニングの安定性を求めてトレモロ・ユニットがKahler製に交換されている。また、通常のギターとしての使用のほか、Roland GR-300というギター・シンセのコントローラーとしても使用できるよう、ジャックを特殊な21ピン仕様に変更。ボディ下部にはギター・シンセ用のコントローラーも増設され、ボディ・バックには大きなキャビティが空けられた。

ピックアップはLace Sensorが3基、そしてMIDI用のRoland GK-3が搭載されている。
チューニングは基本的にレギュラーだが、「Model Man」、「Dig Me」、「Man With An Open Heart」の3曲では3弦をGからAまで上げていた。
使用楽曲(2025年9月1日@日本武道館)
- 「Model Man」(E-A-D-A-B-E Tuning)
- 「Dig Me」(E-A-D-A-B-E Tuning)
- 「Man With An Open Heart」(E-A-D-A-B-E Tuning)
- 「Industry」(前半のみ)
- 「Waiting Man」
- 「The Sheltering Sky」
Picks

ピックはJim Dunlop Nylon Standardの0.67mm。すべり止めの用途のほか、ピックをギターに貼り付けるためにテープを貼っている。
Others

「Three Of A Perfect Pair」ではドリルをピックアップに近づけてノイズを出していた。
スライド・バーはマイク・スタンドに金属製が、エイドリアンの立ち位置左側に置かれたElectro-Harmonix Echoflangerのスタンドにガラス製が用意されていた。
金属製のスライド・バーはParker Fly用で「Neurotica」と「Sartori In Tangier」で使用。ガラス製のスライド・バーはムスタング用で「The Sheltering Sky」で使用された。
2025年9月1日(月)日本武道館
【Setlist】
01. Neurotica
02. Neal and Jack And Me
03. Heartbeat
04. Sartori In Tangier
05. Model Man
06. Dig Me
07. Man With An Open Heart
08. Industry
09. Larks’ Tongues In Aspic(Part Ⅲ)
10. Waiting Man
11. The Sheltering Sky
12. Sleepless
13. Frame By Frame
14. Matte Kudasai
15. Elephant Talk
16. Three Of A Perfect Pair
17. Indiscipline
-Encore-
18. Thela Hun Ginjeet











