2025年9月1日（月）に日本武道館で一夜限りの来日公演を行なったBEAT。エイドリアン・ブリュー（vo,g）、スティーヴ・ヴァイ（b）、トニー・レヴィン（b）、ダニー・ケアリー（d）というロック・ミュージック界のオールスターが80年代キング・クリムゾンの楽曲を演奏する本プロジェクトで、エイドリアン・ブリューが使用したサウンド・システムを解説する。
文＝小林弘昂 通訳＝トミー・モーリー 機材撮影＝星野俊
Adrian Belew’s Pedalboard
モダン機材とビンテージ機材を使い分けるシステム
【Pedal List】
①BOSS / GKC-AD（GKコンバーター）
②Empress Effects / Compressor MKⅡ（コンプレッサー）
③Source Audio / PT GLITCH（グリッチ）
④DigiTech / HarmonyMan（ピッチ・シフター）
⑤RIM Music Technology / Masterming GT（MIDIフット・コントローラー）
⑥BOSS / EV-5（エクスプレッション・ペダル）
⑦BOSS / EV-5（エクスプレッション・ペダル）
⑧Roland / GR-300（ギター・シンセ）
⑨BOSS / FV-500L（ボリューム・ペダル）
⑩BOSS / FV-50H（ボリューム・ペダル）
⑪TC Electronic / Polytune 3 Noir（チューナー）
⑫Cioks / DC7（パワー・サプライ）
Parker Flyとムスタング、2本のギターによって異なるエフェクトやアンプを使い分けているエイドリアン。
Parker Flyを使用する場合は、まず①GKC-ADにインプット。Parker Flyのアナログ13ピン方式で入力された信号を、本機でデジタル・シリアル方式にすることで、ギター・エフェクターに接続できるようにしている。
その後は②〜④の番号順でつながれたあと、エイドリアンの立ち位置後方に置かれたラック内に設置されている⑬Axe-FX Ultraへ。
⑬Axe-FX Ultraのアウトからは、エイドリアンの立ち位置後方に置かれた2台のElectro Voiceのスピーカーに接続され、ステレオで出力。
エイドリアン曰く、Parker Flyと⑬Axe-FX Ultraのシステムは“モダン・リグ”と呼んでおり、“エイドリアン・ブリュー・パワー・トリオ、デヴィッド・ボウイ、トーキング・ヘッズ、そして最近のすべてのプロジェクトで使っている音が出せる”とのこと。
基本的なギター・サウンドは⑬Axe-FX Ultraで作成しており、MIDI接続された⑤Masterming GTで楽曲ごとのプリセットを呼び出している（後述するムスタング用のエフェクトなども本機で切り替えを行なっている）。
⑤Masterming GTに接続された⑥EV-5はボリューム・ペダルとして、⑦EV-5はエフェクトのエクスプレッション・ペダルとして活用している。
②Compressor MKⅡは常時オン。MIX、RELEASE、OUTPUTノブがMAXに設定されていた。エイドリアンはコンプレッサーなしではギターを弾かないそうで、ギター・テック曰く“彼のギター・サウンドには、かなりコンプレッサーがかけられている”という。
③PT GLITCHはエイドリアンのためにカスタム製作されたもの。噂ではLexicon Primetime（ディレイ）のグリッチ・モードを再現したペダルと言われているが、“詳細は秘密”とのこと。
④HarmonyManは5度上に設定され、「Larks’ Tongues In Aspic（Part Ⅲ）」、「Elephant Talk」、「Indiscipline」、「Thela Hun Ginjeet」などで使用。
21ピン仕様のムスタングを使用する場合は、まず⑧GR-300にインプットされる。⑧GR-300は1981年にキング・クリムゾンで使用するために手に入れたもので、エイドリアンは“BEATは本機なしでは上手くできない”と語っており、「Model Man」、「Industry」、「The Sheltering Sky」などで使用された。
⑧GR-300のGUITARアウトとSYNTHアウトからは、それぞれ⑨FV-500LのINPUT 1と2に接続され、⑨FV-500Lでギターとシンセのミックス・バランスを調整できるようになっている。
⑨FV-500LのOUT 1からはマスター・ボリュームの役割を担う⑩FV-50Hを経由し、ラック内に置かれた⑭Dyna-ssoRにつながれている。また、⑪Polytune 3 Noirは⑩FV-50Hのチューナー・アウトに接続。
Adrian Belew’s Sound System
【Gear List】
⑬Fractal Audio / Axe-FX Ultra（ギター・プロセッサー）
⑭JAM Pedals / Dyna-ssoR（コンプレッサー）
⑮RJM Music Technology / Mini Effect Gizmo X（MIDIループ・スイッチャー）
⑯Electro-Harmonix / Big Muff 3rd Ver.（ファズ）
⑰MXR / 10 Band EQ（EQ）
⑱Source Audio / Artifakt（ローファイ・エフェクト）
⑲Electro-Harmonix / Echoflanger（ディレイ／フランジャー）
⑳BOSS / FV-50H（ボリューム・ペダル）
㉑Source Audio / Nemesis Delay（ディレイ）
㉒strymon / DECO V2（テープ・サチュレーション）
㉓Eventide / H9（マルチ・エフェクター）
㉔BOSS / EV-5（エクスプレッション・ペダル）
㉕Lichtlaerm Audio / The Key and The Gate（ノイズ・ゲート）
㉖Furman / PL-Plus DMC J（パワー・コンディショナー）
ムスタングを使用する際の信号は足下の⑧〜⑩を経由し、ラック内の⑭Dyna-ssoRを通って⑮Gizmo Xにインプットされる。⑮Gizmo Xの各ループに接続されているペダルは下記のとおり。
・Loop 1=⑯Big Muff → ⑰10 Band EQ
・Loop 2=⑱Artifakt
・Loop 3=⑲Echoflanger → ⑳FV-50H
・Loop 4=㉑Nemesis Delay
・Loop 5=㉒DECO V2
・Loop 6=㉓H9（㉔EV-5）
そして⑮Gizmo Xのアウトから㉕The Key and The Gateにつながれ、最後はRoland JC-120に接続されている。
⑭Dyna-ssoRは常時オンで、SustainノブはMAXに設定されている。コンプレッサーを深くかけることについて、ギター・テックは“エイドリアンのプレイ・スタイルは音の減衰が速い。それと関係しているのでは？”とコメント。
⑯Big Muffは70年代後半の“V4”と呼ばれる、オペアンプやTONE-BYPASSスイッチが搭載された時期のもの。ビンテージのBig Muffを色々と試した結果、このV4が最もフィードバックが得られたそう。⑰10 Band EQも同じループ内に接続されており、ノイズやフィードバックを出す際の⑯Big MuffのEQを調整している。今回のライブでは「Waiting Man」でオンにしていた。
リアルタイムでノブを動かせるように、⑲Echoflangerはスタンドに設置され、エイドリアンの立ち位置左側に置かれている。「Dig Me」、「Industry」、「Waiting Man」、「The Sheltering Sky」で使用。たまにParker Flyでも⑲Echoflangerを使うことがあるという。
㉑Nemesis Delayはディレイとして使用せず、SHIFTERモードに設定し、すべてのノブをオフにした状態でINTENSITYノブだけを上げると12弦ギターのようなサウンドが出せるそうで、「Man With An Open Heart」などでオンにしている。エイドリアンは“すごく良い音で気に入っている”とコメント。
㉒DECO V2はJC-120のサウンドに温かいテープ・サチュレーションを加える目的でオンにしている。“コーラスやフランジも良い音”とのこと。
㉓H9はおもにディレイやリバーブをプリセットしているが、今回のツアーでは未使用。㉔EV-5は本機に接続されている。
Adrian Belew’s Amplifier
Roland / JC-120
80年代キング・クリムゾンのサウンド
1977年頃、エイドリアンがデヴィッド・ボウイに参加していた頃から使い出し、トーキング・ヘッズ、そして80年代キング・クリムゾンでも活躍したJC-120。BEATでは当時のサウンドを再現するために導入された。ムスタングを使用する際は本機から出力される。
マイクはSennheiserのE906（ダイナミック）が2本立てられていた。
CHANNEL-2のLOWインプットを選択し、BRIGHTスイッチはオフ。各ノブはVOLUMEが5、TREBLEが3、MIDDLEが5、BASSが6.5、DISTORTIONとREVERBがオフに設定されていた。
CHORUSはSPEEDが9で、DEPTHがMAX。撮影時にはオンになっていたが、常にかけっぱなしではなく、エイドリアンが必要に応じて手動でオン／オフを切り替えている。
2025年9月1日（月）日本武道館
【Setlist】
01. Neurotica
02. Neal and Jack And Me
03. Heartbeat
04. Sartori In Tangier
05. Model Man
06. Dig Me
07. Man With An Open Heart
08. Industry
09. Larks’ Tongues In Aspic（Part Ⅲ）
10. Waiting Man
11. The Sheltering Sky
12. Sleepless
13. Frame By Frame
14. Matte Kudasai
15. Elephant Talk
16. Three Of A Perfect Pair
17. Indiscipline
-Encore-
18. Thela Hun Ginjeet
