ザ・ベスのエリザベス・ストークスとジョナサン・ピアースが語る、トランペットから学んだ作曲方法とピアノ由来のギター・アルペジオ ザ・ベスのエリザベス・ストークスとジョナサン・ピアースが語る、トランペットから学んだ作曲方法とピアノ由来のギター・アルペジオ

ザ・ベスのエリザベス・ストークスとジョナサン・ピアースが語る、トランペットから学んだ作曲方法とピアノ由来のギター・アルペジオ

ニュージーランド・オークランド出身の4人組ロック・バンド、ザ・ベス(The Beths)が4thアルバム『Straight Line Was A Lie』を引っ提げ、2026年2月に東京(渋谷WWW X)と大阪(Yogibo META VALLEY)で初来日公演を行なった。本記事では、エリザベス・ストークス(vo,g)とジョナサン・ピアース(g)のインタビューをお届け。大学でジャズを学んだ彼らが、ギター・ロックを演奏するうえでの独特なアプローチ方法などを話してくれた。2人のライブ機材はギタマガWEBの有料会員限定記事で後日公開!

取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 人物撮影=Frances Carter

左から、トリスタン・デック(d)、エリザベス・ストークス(vo,g)、ジョナサン・ピアース(g)、ベンジャミン・シンクレア(b)
左から、トリスタン・デック(d)、エリザベス・ストークス(vo,g)、ジョナサン・ピアース(g)、ベンジャミン・シンクレア(b)

もともと違う楽器をやっていて、
ジョナサンはピアノ、私はトランペットだった。
──エリザベス・ストークス

今回の来日が初めての日本ですか?

エリザベス 前に訪れたことはあるけど、演奏しに来たのは今回が初めて。

一度、来たことがあるんですね。

エリザベス 12年くらい前に休暇でね。ベン(d)も同じように来たことがあるみたい。ジョナサンは今回が初めてなんだって。私が前回来た時はけっこうな長旅で、東京、京都、大阪、名古屋、それから広島にも行ったの。すごくクールだったから、また戻って来られて本当に嬉しい。

あなたが子供の頃に日本に抱いていたイメージは、ポケモンや任天堂のゲームが大きかったのでしょうか?

エリザベス そうだね。ニュージーランドで育った子供の頃は、やっぱりアニメやポケモンみたいなものが身近にあったよ。2000年代くらいから日本の食べ物もたくさん入ってきたんだ。寿司とかね。でもニュージーランドやオーストラリアの寿司ってすごく変で、なんていうか……全然おいしくないし、あまり食べるべきではない感じ(笑)。でも日本食はすごく人気があるんだよ。

私たちも海外で提供される寿司を見て、あまりの独創性にギョッとすることがあります(笑)。

エリザベス 本当に全然違うんだよね。別の食べ物という感覚(笑)。

まずは、あなたたちのバックグラウンドについて聞かせてください。エリザベスとジョナサンは高校生の時に知り合ったそうですが、当時はどんなギタリストから影響を受けていましたか?

エリザベス 若い頃、ギターは“目的のための手段”だったの。とにかく曲を弾きたくて、ギターなら簡単に演奏できるじゃない(笑)? だから“Ultimate Guitar”みたいなWEB上のフォーラムで、弾きたい曲のコードを調べてプレイするっていう感じだったんだよね。機材にはあまり興味がなかったし、ずっと疎かったと思う。

私はアコースティック・ギターを持っていて、ジェニー・ルイスみたいなインディー・フォークをよく聴いていたの。バンドならブライト・アイズやデス・キャブ・フォー・キューティーみたいな、ちょっとエモっぽいインディー系。だからリード・パートよりもコードを覚えてプレイする感じだったんだ。それとビリー・ジョーも好きで、グリーン・デイやフォール・アウト・ボーイみたいなポップ・パンクも聴いていたよ。

ジョナサン フォール・アウト・ボーイはヘヴィなギター・ワークのバンドだよね。

エリザベス うん。最初の何枚かのアルバムはギター・アレンジもすごく細かいの。

ジョナサン オレがギターを始めた頃はホワイト・ストライプスが最大のインスピレーション源だった。それとレッド・ツェッペリンみたいなクラシック・ロックやブルースだね。次第にフォーク・ロックにもハマっていって、ザ・バンドのロビー・ロバートソンがすごく好きになったんだ。彼のプレイは本当に好きだよ。だから、いわゆるクラシックな人たちを通ってきたんだ(笑)。

大学ではジャズを学んでいたということですが、どのようなことを学びましたか?

エリザベス もともと私たちは違う楽器をやっていて、ジョナサンはピアノ、私はトランペットだった。当時はあまり実感できなかったけど、振り返ってみるとけっこう多くのことを学んだと思う。音楽理論とか、コミュニケーションの取り方とかをね。ジャズは基本的にアンサンブルの音楽だから1人で完結するものじゃなくて、ほかの人と一緒にプレイして“グループの中でどうやって自分を表現するのか”を学ぶの。

それとトランペットをやっていたことも大きかった。トランペットは1つのメロディ・ラインしか表現できない楽器だから、ハーモニーを同時に出すことはできないよね? リズムとメロディで勝負するっていう感じ。それが曲作りにもかなり影響していて、ハーモニーよりもメロディで表現したいっていう感覚が強いのかもしれない。

ジョナサン ピアノを弾いている時はずっとフラストレーションがあったんだ。音を出してもただその音が鳴って、すぐに消えていくだけっていうかね。歌みたいに表現力を出そうとすると、和音を重ねて音をにじませるような工夫をしないといけない。

でもギターだといろんなサウンドを作れたり、異なるテクスチャーが使えたりして、そこがすごく面白かったんだ。ギターなら歪ませるのなんて当たり前だし、ベンドだってできるしね。そういう表現はピアノだとできなくて、“どうしよう?”と考えること自体がストレスだったよ。だから結局、自分はギターを弾きたいんだと気づいたんだと思う(笑)。

オレはアルペジオに関して、
かなり明確なコンセプトがあるんだ。
──ジョナサン・ピアース

現在の楽曲制作はどのように行なうんですか?

エリザベス 最初は私だけで始めるの。曲を書いて、ラフなデモを作るんだけど、Aメロが2回とサビだけみたいなこともある。もう少し作り込んでハーモニーのバッキング・ボーカルを入れることもあれば、シンプルすぎて地味な時もあるかな。そこからバンドに持って行って、みんなでアレンジをしていく。

ジョナサン 最近はレコーディングの過程で詰めていくことが多いから、録音しながらいろんなレイヤーを重ねたり、サウンドを決めていったりするよ。

エリザベス ドラマー(トリスタン・デック)とベーシスト(ベンジャミン・シンクレア)もかなりクリエイティブで、彼らも“表現すること”が大事だと思っている。そんな感じで私たちはみんな自己表現欲が強いから、ある程度の緊張感が生まれるけど、最終的には曲としてまとまりのあるものに仕上げなきゃいけない。ジョナサンがプロデュースもしているから、彼が全体のサウンドを俯瞰して見て、ちゃんと機能しているかどうかを確認しているの。飽きさせないようにバランスを取っているんだ。

ジョナサンは「Silence Is Golden」などでフリーキーなソロを披露しています。フレーズはどのように考えていますか? コード進行を意識することもあれば、頭の中で聴こえてきた音を再現することも?

ジョナサン けっこう後者寄りかな。かなりメロディアスな時もあるし、あまりメロディ重視じゃない時もある。どちらかというとフィーリング重視で、ハーモニーやテクスチャー的なテクニックでアプローチしているね。「Silence Is Golden」のソロは何度もインプロヴァイズして、その中でアイディアを練っていったよ。

そうだったんですか。

ジョナサン 頭の中にハーモニーのアイディアがあって、Bメジャーの上にGメジャーを重ねるようなことを考えていたんだ。それがサビの終わりとか、サビに入る直前のハーモニックな緊張感につながっている気がする。だから理屈的なアイディアはあったけどハッキリしたメロディはなくて、ひたすら弾いては気に入ったフレーズを拾って、それをレコーディングした感じだね。

「Silence Is Golden」のソロの途中、Uni-Vibeを踏んだかのような音の変化があります。あれは何を使ったんですか?

ジョナサン Z.VexのFuzz Factoryを使ったのを覚えてるよ。フレーズを弾いてからノブを回してGateを開いて、あの甲高い悲鳴のようなサウンドを作り、再びGateを閉じて、次のフレーズをプレイしたんだ。エンディングではフレーズを止めて、Gateを開いてそのままノブを回して……ところで、あのノブってなんていう名前だっけ?

Stabですね!

ジョナサン そう、Stabだ! 君たちは何でも知っているな! グッドだね(笑)。それでStabを“ウィーン”って回してからオフにして、最後のフレーズを弾いたんだ。

ザ・ベスの楽曲の特徴といえばメロディアスなアルペジオです。フレーズ構築の際のこだわりはありますか?

ジョナサン オレはアルペジオに関して、かなり明確なコンセプトがあるんだ。聞いてくれたのは君たちが初めてで、すごく嬉しいよ。これは間違いなくピアノから学んだことだね。

ピアノはコードの形やボイシングがすごく重要で、音程のレンジを広く取るか、狭くするかでかなり変わるだろう? その感覚をギターでやろうとしているんだけど、ギターは制限も多くて、特に近接した音同士でのボイシングにはあまり向いてないんだ。でも逆にワイドなボイシングにはすごく向いている。だからアルペジオを考える時は弦の広めのボイシングを使うようにしていて、トップ・ノートでコンテンポラリーなメロディになるようにも意識しているんだ。

それと低音側でメロディを動かすのも好きで、「Jump Rope Gazers」ではちょっとキーから外れた低音のラインを入れて緊張感を作っている。そういった実験をやっているんだよ。

最新作『Straight Line Was A Lie』の中で、読者にオススメのギター的な聴きどころは?

ジョナサン リズ(エリザベス)のプレイで特に気に入っているのは「Roundabout」だね。冒頭から鳴っているメインのアルペジオっぽいフレーズは、リズがシガー・ボックス・ギターみたいな小さい4弦ギターで作ったんだよ。オレはそれを気に入っている。かなりクールなギター・プレイなんだ。

エリザベス ありがとう。私は「Best Laid Plans」でのあなたのプレイが好き。メインのジャングリーなアルペジオは私なんだけど、そのあとに出てくる“ヒュイン!”っていうフレーズはジョナサンのアイディアで、本当に天才的なんだ。最初にあれをプレイした時、ベンが“それだ、それで決まりだ!”と言っていたのを覚えている。本当にクールなの。

今年はすでにフジロックでの再来日が決まっています。最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

エリザベス 本当に楽しみにしている。ずっと日本に来て演奏したいと思っていたし、日本には音楽への深い愛があるってわかっているからね。1年で2回も来られて……しかも、とても興味深くて長い歴史を持つフジロックでプレイできるなんて、本当に意味のあることだと思うの。すごく幸運だし、ワクワクしていてるよ。良いライブがしたいから、しっかり練習するつもり(笑)。ジョナサンはどう思う?

ジョナサン もうそれで十分じゃないか(笑)!

エリザベス フジロックってコーチェラみたいに映像は配信されてるの?

そうですね。ここ何年かは配信も行なっていますし、もしかしたらYouTubeにホワイト・ストライプスが出演した2004年の映像もあるんじゃないでしょうか?

ジョナサン オー、イェー! 彼らの絶頂の頃だね!

フジロックにはニール・ヤングがエンドレスでアンコールをプレイしたなんていう逸話もあります。

ジョナサン その映像もぜひ観ておかなきゃいけないね(笑)。

作品データ

『Straight Line Was A Lie』
ザ・ベス

ANTI- / SILENT TRADE
STCD-0021
2025年8月29日リリース

―Track List―

01. Straight Line Was A Lie
02. Mosquitoes
03. No Joy
04. Metal
05. Mother, Pray For Me
06. Til My Heart Stops
07. Take
08. Roundabout
09. Ark Of The Covenant
10. Best Laid Plans

―Guitarists―

エリザベス・ストークス、ジョナサン・ピアース