【本人解説】ライアン・ジャーマン(ザ・クリブス/The Cribs)が、2026年10月の来日公演で使用した3本のギター 【本人解説】ライアン・ジャーマン(ザ・クリブス/The Cribs)が、2026年10月の来日公演で使用した3本のギター

【本人解説】ライアン・ジャーマン(ザ・クリブス/The Cribs)が、2026年10月の来日公演で使用した3本のギター

2026年1月に、約5年ぶりとなる9枚目のアルバム『Selling A Vibe』をリリースしたザ・クリブス。10月2日(金)には、本作を引っ提げた8年ぶりとなる来日公演が渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて実現した。本記事では、ライアン・ジャーマン(vo,g)が使用した3本のギターを本人の解説とともにご紹介。

取材・文=小林弘昂 通訳・翻訳=トミー・モリー 機材撮影=星野俊

Ryan Jarman’s Guitars

2025 Fender Custom Shop
Ryan Jarman Signature “Mus-Uar”

新たなメインは
カスタムショップ製シグネチャー

現在のライアンのメイン・ギターは、シグネチャー・モデルのMus-Uar(ムスアー)。もともとムスアーは2016年8月にSquierから発売されていたが、本器は2025年にカスタムショップで新たに製作されたワンオフもの。

カート・コバーンがデザインしたジャグスタングをインスピレーション源とし、以前ライアンが愛用していたムスタングとジャガーの要素をミックスしたギターだ。

ネックはショート・スケール。ヘッドはジャガー・タイプで、ペグはフェンダーのModern Locking Tunerを採用している。

ピックアップは、フロントがPure VIntage ’65 Vintage Jaguar、リアがティム・ショウがデザインした出力が低めのハムバッカーShawbuckerという組み合わせ。しかし本器はピックアップ・セレクターを取りはずし、常にリア・ピックアップが選択されるようになっている。

もともとは通常のチューン・オー・マティック・ブリッジが搭載されていたが、チューニングの安定性を求め、リック・オケイセックから教えてもらったというハーモニカ・チューン・オー・マティック・ブリッジに交換。

弦はRotosoundのRoto Blues(.010〜.052)で、チューニングはレギュラーにセッティング。

使用楽曲(2026年10月2日@渋谷duo MUSIC EXCHANGE)

  • 「Dark Luck」
  • 「I’m A Realist」
  • 「Hey Scenesters!」
  • 「Girls Like Mystery」
  • 「Summer Seizures」
  • 「Never The Same」
  • 「We Share The Same Skies」
  • 「My Life Flashed Before My Eyes」
  • 「Looking For The Wrong Guy」
  • 「Come On, Be A No-One」
  • 「Men’s Needs」
  • 「Mirror Kissers」
  • 「Be Safe」
  • 「Pink Snow」

2016 Squier
Ryan Jarman Signature “Mus-Uar”

2016年に発売された
初のシグネチャー・モデル

サブとして用意されていたのは、2016年にSquierから発売されたライアンのシグネチャー・モデル。本器のカラーはフィエスタ・レッド。

メインのカスタムショップ製と同様のカスタムが施されており、ピックアップ・セレクターを取りはずし、常にリア・ピックアップのみを選択。ブリッジもハーモニカ・チューン・オー・マティック・ブリッジに交換されている。

本器には、ライアンが“最高なピックアップ・メーカー”と語る、Toltec Pickupsのカスタム・ピックアップを搭載。ライアンの好みに応じてワインドされたもので、80年代のDiMarzio Super Distortionを意識したパワフルなサウンドがポイントとのこと。ピックアップによるサウンド・キャラクターの違いがあるため、メインと本器を使い分けているのだという。

この日のライブでは中盤5曲で使用された。

使用楽曲(2026年10月2日@渋谷duo MUSIC EXCHANGE)

  • 「Things You Should Be Knowing」
  • 「Back To The Bolthole」(Capo 4)
  • 「Running Into You」
  • 「A Point Too Hard To Make」
  • 「Another Number」

2018 Taylor Guitars
514ce

「Shoot The Poets」で聴かせた
艷やかなアコースティック・サウンド

アコースティック・ナンバーの「Shoot The Poets」で使用されたのは、日本でレンタルしたTaylorの514ce。グランド・オーディトリアムと呼ばれる、ウエストが細いミディアム・サイズのボディが特徴だ。

ボディ・トップにはウェスタン・レッド・シダー、バックとサイドとネックにはトロピカル・マホガニー、指板とブリッジにはエボニーが採用されている。

サドルの裏にExpression System 2というピックアップ・システムが搭載されており、本機のサウンドはCountrymanのType10(DI)を通ってPAに信号が送られていた。

ちなみに普段はCole Clarkのアコースティック・ギターを愛用しているとのこと。Stellaの古いギターも好きなのだとか。

使用楽曲(2026年10月2日@渋谷duo MUSIC EXCHANGE)

  • 「Shoot The Poets」

Others

ピックはJim DunlopのTortex Standard .60mm。「Back To The Bolthole」で使用するカポも用意されていた。

Interview

オフセット・ギターの最も優れた要素を
すべて組み合わせたモデルになったと感じたんだ。

メイン・ギターについて教えてください。カスタムショップで製作されたものなんですよね?

これは去年手に入れたものなんだけど、このスタイルのギター自体は何年も前から作ってもらっていたんだ。ずっと前にSquierがシグネチャー・モデルを作ってくれてね。それを何本か送ってもらって、ジョニー・マー、リー・ラナルド、そしてオレのガールフレンドにあげたんだ。それからエヴァン・ダンドーにも1本持っていかれてしまって、結局オレの手元には1本も残らなかったよ(笑)。

悲しすぎます(笑)。

それでフェンダーに、“あのギターを再発売するべきだ”と何度も催促した。そしたらカスタムショップで作ると言ってくれて、“クールじゃないか、ぜひ頼む!”と返事をしたよ。それから完成までには3年くらいかかったね。だから、このギターを手に入れてからはまだ1年ほどだけど、このスタイルのギターとの付き合いはもう10年以上になる。

基本的にムスタングをベースにしているんだけど、カート・コバーンのJag-Stang(ジャグスタング)を完全にパクっているんだ。オレは小さい頃にジャグスタングを持っていたんだよね。ありきたりな話だけど、夏休み中ずっとキッチンで皿洗いの手伝いをして、そのお金で買ったんだ。それまでは20〜50ポンド程度の安いストラトキャスターのコピーばかり弾いていたから、初めてのまともなギターだったな。

カートがデザインしたギターだから、手に入れた時は本当に嬉しかったけど、どこかしっくりこないところがあってね。バランスがあまり良くないと思ったし、期待していたほど好きにはなれなかった。

独特な形状ですもんね。

それで大学に通っていた時、何度もデザインを落書きして、自分ならどういうギターを作るかを考えていた。そしてようやくフェンダーと一緒に実現する機会を得た時、フェンダー・オフセット・ギターの最も優れた要素をすべて組み合わせたモデルになったと感じたんだ。

ジャグスタングのボディは1弦側がムスタングで、6弦側がジャガーとして組み合わせたギターですが、あなたのシグネチャー・モデルはその逆になっています。

オレはカート・コバーンが大好きだったから、“ジャグスタングを逆にしたらどうだろう?”と考えていたんだよ。実際にデザインをいろいろと試しているうちに、このボディのほうがずっと機能的だし、バランスも良いことに気づいてね。異なる2つのデザインが、より上手く組み合わさったように思えたんだ。

あなたは昔からムスタングを愛用していますが、その魅力とは?

ムスタングを気に入った理由は、とにかく安かったからなんだ。昔は70年代のものだったら、ほかのどんなビンテージ・フェンダーよりもずっと安く手に入れられたからね。それが大きな理由だよ。その後、ビンテージのジャガーを手に入れたけど、ムスタングよりずっと高価だったにもかかわらず、あまり気に入らなかったんだ。断然ムスタングのほうが好きだったね。

そうだったんですか。

ジャガーにも気に入っている部分はあって、トレモロ・ユニットが好きだった。ムスタングは弦をトレモロ・ユニットに巻き付ける構造で、それによって弦の振動が少し抑えられてしまうけど、ジャガーのテールピースならボール・エンドからヘッドまで弦が真っ直ぐに伸びるから、そこがすごく気に入っていたんだよね。

でもジャガーのブリッジは大嫌いで、常にいろんなブリッジを試していたよ。そんな時、リック・オケイセックが、この黒いギターにも載せているハーモニカ・ブリッジを教えてくれた。彼は素晴らしいギター・コレクションを持っていて、それをスタジオに持ってきてくれたんだけど、彼のジャガーやジャズマスターにはどれもあのタイプのブリッジが載っていて、とても安定していたんだ。どれだけ激しくプレイしてもチューニングが狂わないし、弦がサドルの上にしっかりと収まるんだよ。

なるほど。ほかの細かい仕様はどのように決めていったんですか?

ボディの形状が定まってから細かい好みを盛り込んでいったね。シンプルなムスタングのスイッチングにして、ピックアップはハムバッカーとシングルコイルを組み合わせた。ジャガーのシングルコイルをブリッジ・ポジションに載せてしまうとかなりトレブリーになるから、それを避けたかったんだ。

アームがはずされていますが、ライブでは使わないんですか?

バンドを始めたばかりの頃はかなり頻繁にアームを使っていたけど、ツアー中にアームを紛失することにうんざりして使わなくなったんだ。ギター・テックにまで、“アームはどこ?”って聞かれる始末でね。結局、アームを使う曲をセットリストからはずさなきゃいけなくなったりして、最終的には“もうアームなんてクソ食らえだ!”って感じになってしまったよ。だからオレの場合、アームを取り付けることを前提に設計されたトレモロ・ユニットというよりも、グッドなテールピースが付いているという感覚なんだ。

やろうと思えば、ブリッジとトレモロ・ユニットの間をピッキングすることもできるよね。ソニック・ユースを真似するのが好きな人がけっこういるけど、本人以外がやると、ちょっとダサいからオレはやらないんだけど。

市販化もされたSquireのバージョンは派手なカラーでしたが、なぜ今回はブラックにしたんですか?

どうしても黒が欲しかったんだ。Squier版は紫だったけど、オレはカラフルな楽器が好きじゃないんだよ。今ではギターといえば黒か白が好きだね。

2026年10月2日(金)渋谷duo MUSIC EXCHANGE


【Setlist】
01. Dark Luck
02. I’m A Realist
03. Hey Scenesters!
04. Girls Like Mystery
05. Summer Seizures
06. Never The Same
07. We Share The Same Skies
08. My Life Flashed Before My Eyes
09. Things You Should Be Knowing
10. Back To The Bolthole
11. Running Into You
12. A Point Too Hard To Make
13. Another Number
14. Shoot The Poets
15. Looking For The Wrong Guy
16. Come On, Be A No-One
17. Men’s Needs
18. Mirror Kissers
19. Be Safe
20. Pink Snow

作品データ

『Selling A Vibe』
ザ・クリブス

ビッグ・ナッシング/ウルトラ・ヴァイヴ
PIASR1573CDJ
2026年1月9日リリース

―Track List―

01. Dark Luck
02. Selling A Vibe
03. A Point Too Hard To Make
04. Never The Same
05. Summer Seizures
06. Looking For The Wrong Guy
07. If Our Paths Never Crossed
08. Self Respect
09. You’ll Tell Me Anything
10. Rose Mist
11. Distractions
12. Brothers Won’t Break

―Guitarist―

ライアン・ジャーマン