今や国民的人気バンドとなったOfficial髭男dism、通称ヒゲダン。“ピアノ・ロック”と巷では呼ばれているようだが、魅力はそれだけではない。新作EP『HELLO EP』を聴き、ギター・サウンドの“質”に耳を澄ませば、ヒゲダンが“バンドマン”として這い上がってきたという確かな実力を感じとることができるだろう。そこで鳴り響く音は、小笹(g)の言葉を借りるならば“やんちゃ”であり、実はバンド的なのだ。ギタリストとしての姿勢、サウンドのこだわりについて聞いたギター・マガジン本誌のインタビューから、一部抜粋してお届け。
取材・文=辻昌志 ライブ写真=渡邉一生
テクニックの影響はポール・ギルバートから。
小笹さんは本誌のインタビュー初登場となります。ギターを始めた頃は、Hi-STANDARDなど、パンクをよく聴いていたそうですね。
そうなんです。横山健さん、あとKubotyさんのプレイも大好きですね。
中でも特に影響を受けたギタリストは誰なんでしょう?
テクニック面で言うと、ポール・ギルバートから大きな影響を受けているんです。メロディが美しいっていう点も魅力ですよね。
では、例えば速弾きなんかも練習していたんですか?
そうですね。やっぱりギタリストって、速弾きがしたい時期があるじゃないですか。それも理由のひとつなのですが、 ギターを始めた頃は“メタラーはギターがうまい”っていうイメージもあったから(笑)。で、地元で一番ギターがうまい先輩がいたんですが、その人がメタリカやスレイヤーを聴いていて。僕はメタリカにはあまりハマらなかったんですけど、速いフレーズを弾きたいがために聴く、みたいな感じでした(笑)。
(笑)。メタル以外の影響はいかがでしょう?
ブルース系だと、ロベン・フォードやジョン・メイヤー。ブルースと言ってももとをたどれば、B.B.キングなど多くのブルースマンがいると思うんですけど、このふたりは、ブルースというジャンルをやっていても、特に聴きやすい気がして。歌のようなプレイと、テクニカルなプレイが共存しているというか。特にロベン・フォードの場合、そのバランスがちょうど良いんです。
ロベン・フォードとはなかなか渋いですね。では、今作の使用機材の話を聞かせて下さい。レコーディングではどんなギターを使ったのですか?
リード・ギターは61年製のジャズマスター、バッキングは60年製のテレキャスターという2本で全曲録りました。テレキャスターのほうは、まさにロベン・フォードどんぴしゃの音(笑)。ライブでは、こっちをメインとして使っています。
テレキャスがライブのメインである理由は?
これはリア・ピックアップの音がイケているんですよ。
リアの音が重要なんですか?
そうなんです。 ギターを買う時も、“リアを歪ませた音がどれだけ太いか”で決めていて。“センターとフロントは良い音して当然だろ!”って思いがあって(笑)。
(笑)。試奏した時にグッとくるものがあったんですね。
そうですね。ちなみにこれ、山口和也さんと新藤晴一さんと楽器屋に行った時に買ったギターなんです。試奏時はブースが狭かったから、山口さんと僕だけブースに入り、晴一さんには外で待ってもらって何本か弾いていて。山口さんも僕も、このテレキャスが一番良いと思ってたんですが、そうすると外にいた晴一さんも、“今弾いているそのサオがいいよ!”って。要はブラインド・テストでも良かったギターというか。
ジャズマスターのほうは、以前本誌でライブ機材を取材した際(2019年9月号参照)、変則チューニング用として使ってましたよね?
セットリストに「Pretender」が入っている時は、ジャズマスを変則チューニング用として使ってます。でも、基本はレコーディングでよく使う1本で、その際はレギュラー・チューニングにしていますね。
ジャズマスをレコーディングのメイン器として使う理由は?
とにかくジャズマスの倍音が好きなんです。“ジャリン、ジャリン”っていう音がリード・ギターに合うなと。あと今作の場合、「パラボラ」でアーミング・プレイがあったから、それもジャズマスを使った理由のひとつですね。
バッキングにジャズマスターは合わない?
余分な音域が出ているような気がするんですよね。だからバッキングはテレキャスを選びました。こっちでパワー・コードとかを弾くと、うまいこと音がまとまるんです。
ピックアップで言うと、今作はシングルコイル系のギター2本だけを使ったことになりますね。
そうですね……でも「HELLO」を例にとると、バッキングは今までの僕だったらレス・ポールを使っていたと思うんです。
『ギター・マガジン2020年9月号』
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最新作
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