アイバニーズより、3基のシングルコイル・ピックアップと、そのサウンド・バリエーションを広げる“ブレンダー機能”を持ったエレクトリック・ギター“AZ2203N”が発売された。
ラインナップは、レギュラー・モデルのAZ2203N-ATQ(アンティーク・ターコイズ)と、スポット・モデルのAZ2203N-BK(ブラック)の2機種。
このAZ2203Nが誕生した背景には、アイバニーズのAZシリーズと、それに続いたAZ-Nがある。
AZはロック、メタル、フュージョンをバックグラウンドとするギタリストに向け、あらゆる演奏シーンでの対応を追求して開発されたシリーズで、発表は2018年。
一方、2021年発表のAZ-Nは、AZのポテンシャルをさらに拡張し、ネオ・ソウルに代表されるようなブルース、ジャズ、ファンクを土台とするギタリストを対象としながら、“幅広く使えるクリーン・トーン”というコンセプトで生み出されたものだ。
そして2023年1月に発売されたAZ2203Nは、AZ-Nをベースとしつつも、3つのピックアップをすべてシングルコイルにしたSSS配列を採用し、そのシングルコイル・サウンドのバリエーションを拡げるための“ブレンダー機能”(詳細は後述)をも搭載したギターとなった。
その各パーツを見ていこう。
ピックアップ
ピックアップは、セイモア ・ダンカンとの共同開発で生まれたAZ-N専用のピックアップであるFortuna(フォーチューナ)が3基搭載されている。
AZ専用のHyperion(ハイペリオン)と比較すると、Fortunaはさらにナチュラルで、幅広いジャンルに対応できるクリーン・トーンと、プレイ・ニュアンスの出しやすさを特徴とする。
コントロール/ブレンダー機能
コントロールは、1ボリューム、1トーン、1ブレンダー、5ウェイのピックアップ切り替えスイッチという構成だ。頭に“TONE”と書かれたノブが2つあるが、このうちボディ外側に近いほうが、前述のブレンダー機能を制御する役割を持つ。
その“ブレンダー機能”とは、ピックアップ切り替えスイッチで選択した1つまたは2つのピックアップの音に加え、もう1つ、フロントまたはリアのピックアップの音をミックスする、というものだ。
ノブを時計回りに回し切った状態ではブレンダー機能は無効になるが、反時計回りにするにつれ、フロントあるいはリアの音がフェード的にブレンドされていく。どちらのピックアップの音がブレンドされるかは、ピックアップ切り替えスイッチの位置による。
それを図解したのが次の図だ。上側はブレンダー機能を無効にした状態で、下側がブレンダー機能をマックスにした状態を表わしている。
この図を見ると、フロントとリアのうち、“スイッチで選択されていないほう”のピックアップの音がブレンドされるということがわかる。またスイッチがMIDDLE(センター・ピックアップ)ポジションの時は、ブレンダー機能は働かない。
この仕組みによりAZ2203Nは、通常のSSS配列よりも幅広いサウンドメイクが可能なギターとなっている。またノブを操作するだけなので、演奏中でも音色の変化を簡単に楽しむことができる。
ネック
AZ2203Nは、ギターの弾き心地に関しても様々なこだわりが詰め込まれたモデルだ。
まずネック材には、窒素加熱処理技術である“エステック処理”が施されたメイプルが採用されている。エステック処理された木材は形状安定性、反りに対する耐久性、耐水性、温度変化に強いといった特徴を持つ。
ネックのフィニッシュには、弾き込まれたギターのような質感を持つオイル・フィニッシュ仕上げが採用されている。
ネックの形状はAZ専用のOval C(オーヴァルC)で、幅はナットの位置が42mm、最終フレットが56.4mm。この形状は、ロー・ポジションでの握り込みやすさと、ハイ・ポジションにおけるクラシカル・スタイル(親指をネックの裏に置く方法)での演奏性の両方に配慮したものだ。
指板
指板材には、バランスの取れたサウンド・キャラクターと暖かみのあるトーンを特徴とするローズウッドを採用。
形状は、ロー・ポジションでのコード・プレイとハイ・ポジションでのリード・プレイのどちらにも対応するべく、ナット部が228mmで指板エンド分が305mmのコンパウンド・ラジアスが採用されている。
加えて指板のエッジをなだらかに丸めたコンフォート・グリップも採用されている。
また指板サイドに付けられた3.0mm径のドッド・ポジション・マークには、暗いステージでもポジションを見失うことがないよう、高い視認性を持つ蓄光材のLuminlay(ルミンレイ)が使われている。
ジョイント部
ネックとボディのジョイント部には“Super All Access”という名のネック・ジョイントが採用されている。これはボディの裏面から8mmの高低差で段彫りし、さらにネックとの接合部を球面に仕上げることで高い演奏性を実現したものだ。
またボディとネックとの設地面積を最大化することでサステインとレゾナンスの良さを引き出すため、6弦側のカッタウェイは浅めに設計されている。
ボディ形状
ボディ裏側のコンター加工は、表側のエルボー・コンターと相まって、プレイヤーとギターとの一体感を生み、これが演奏性の向上にも大きく貢献する。
またボディのくびれが深いため、抱えた時やステージ上での取り回しも良くなっている。
さらにボディの表面と裏面とで角のRを変えることで、座位/立位に関わらずギターを抱えた瞬間にフィット感が感じられるようにするなど、人間工学に基づいた設計が随所になされている。
トレモロ・システム
トレモロ・ブリッジには、歯切れのよいクリスピーなサウンドとプレーン弦の煌びやかな高音を特徴とするスチール製サドル・イナーシャ・ブロック付きのT1502Sを採用。
弦間のピッチは10.5mmのナロー・スペーシング設計で、これはスキッピング(弦飛びピッキング)や、ピックと指を併用するハイブリッド・ピッキングを多用するプレイヤーに向いている。
アーム・ソケットは、従来のアームのように回し入れることなく、スナップ・インでアームを装着することが可能。アイバニーズのEdgeトレモロのアームや、ウルトラ・ライト・トレモロ・アーム(カーボン製/別売)も流用できる。
トレモロ・アームのトルク調整は、アーム取り付け部のトルク・キャップを回転させることで可能。加えてチューニングのスタビリティやレゾナンスに大きく貢献するスタッド・ロック機構も標準装備されている。
さらにボディ上面のリセス(落とし込み)加工はせず、トレモロ・ブリッジのプレートとギターのボディがダイレクトに接するようにすることで、音の強弱の表現力と、プレイ・ニュアンスの再現性、さらにレゾナンスの良さを向上させている。
トレモロ・スプリング
トレモロ・スプリングは、弦振動が効率的にボディへ伝達されるよう、5本掛けになっている。またスプリングの共振・共鳴を抑えるため、ゴム製のスプリング・ミュートが装着されている。
ナット
ナットには油を含浸させた牛骨を採用し、チューニングの安定性に大きく貢献する滑りの良さと、ビンテージ・ギターのようなレゾナンスを実現している。
マシンヘッド
マシンヘッドは、チューニングの安定性に定評のあるGotoh製マグナムロックを採用。ポストの高さを調節するH.A.P.(Height Adjustable Post)機構により、弦ごとに適切なテンションを得ることができる。
以上がAZ2203Nの特徴だ。
なお、YouTubeのIbanez Guitarチャンネルでは、AZ2203N-BKのデモ演奏が見られる次の2本の動画が公開されている。上は日本の山岸竜之介で、下はイギリスのJake Willsonによる演奏だ。これらの動画でAZ2203Nのサウンドを確かめてみよう。
Ibanez
AZ2203N-ATQ
AZ2203N-BK
【スペック】
Neck type: AZ Oval C S-TECH WOOD® Roasted Maple neck
Body: Alder body
Fretboard: Rosewood fretboard w/Mother of Pearl dot inlay & Luminlay side dot inlay
Fret: Jumbo Stainless Steel frets w/Prestige fret edge treatment
Nut: Bone
Machine head: Gotoh® Magnum Lock machine heads w/H.A.P.
Bridge: Gotoh® T1502S tremolo bridge
Neck pickup: Seymour Duncan® Fortuna™(S) neck pickup
Middle pickup: Seymour Duncan® Fortuna™(S) middle pickup
Bridge pickup: Seymour Duncan® Fortuna™(S) bridge pickup
Controls, Pickup selector: 1 Volume, 1 Tone, 1 Blender, 5way lever switch
Hardware color: Chrome
String gauge: .010/.013/.017/.026/.036/.046 (D’Addario® EXL110)
【価格】
オープンプライス
【問い合わせ】
星野楽器販売 TEL:0561-89-6900 http://www.ibanez.co.jp