TAP the Fingerboard! Vol.3 ichika直伝、最新タッピング・スタイル TAP the Fingerboard! Vol.3 ichika直伝、最新タッピング・スタイル

TAP the Fingerboard! Vol.3
ichika直伝、最新タッピング・スタイル

英ギター誌『Total Guitar』の読者投票ランキング企画にて、“現代最高のギタリスト”部門で8位を獲得した世界的アーティスト=ichika。世界中を虜にするタッピング・プレイを、本人が直伝解説してくれた。第3回はコード&メロディを美しく響かせるプレイを紹介。今回はソロ・ギター・スタイルで生かせるフレーズがもりだくさんだ。

演奏=ichika 動画制作/録音=Takumi Osera 採譜/譜面解説=石沢功治

Ex-1:下降スライドをくり返し哀愁感UP!

ichika ソロ・ギター・スタイルの中でタッピングがメロディを補っているフレーズですね。コード自体は慣れればそこまで難しくないと思いますが、狙った弦だけを的確に弾くっていうのに最初は苦労するかもしれません。これは練習あるのみですね。あと、このフレーズで使っているタッピングは、どれもスライドで下降させているんですよ。上の音域のメロディが下っていくので、哀愁感というか切ない感じを出すのにひと役買っているんです。それと、ビートはR&B的なノリで、リズムを乗せるとしたら2拍4拍にアクセントが入ってベースがイナたい感じで鳴っているようなイメージ。なので、ギター側もそういう感覚で弾くと良いと思います。

▲メジャー・コードで始まり、5度を最低音に持ってきたメジャー・コードで終わっているものの、哀愁を帯びて聴こえる。その理由はA△7の1小節目でG♯音(2弦9f)、E△7の2小節目後半でD♯音(3弦8f)と、どちらもコードの最初にメジャー7th音が強調されているからだろう。また、出だしの2拍の音型をモチーフ(主題)にし、1小節目の後半でその音型を発展させたフレージングを、さらに2小節目前半ではモチーフの音型をそのままC♯mに移して弾いている。これが実にメロディアスに響く。

Ex-2:矛盾する右手の動きを制御する

ichika この企画の中で、個人的に一番難しいフレーズだと思います。まず、3つ目と4つ目のコードがスムーズに押さえられるまで、その型を叩き込むのが難しい。あと、3音目を親指のアップ・ストロークで弾いていますが、それで右手が上に動いていくのに対して、そのあとにタッピングを入れなくちゃいけないんですよ。つまり、弦から逃げようとしている右手を無理やり止める感じというか、動き的に矛盾している。そこで僕が意識しているのは、親指でアップ・ストロークする時に人差指を軸に手首を回転させているようなイメージですね。そうすると人差指が弦から離れないので、タッピングに移行しやすいんです。

▲1小節目と5小節目にCメジャー・コードが出てくるためキーをGメジャーとしたが、雰囲気的にはDメジャー・キーのような印象だ。そのため、アルペジオ全体に浮遊感が感じられるのが、特徴かつ魅力になっている。また、4小節目では、5線譜を見ておわかりのとおり、1拍目に弾かれる低音F♯(6弦14f)よりも、その1拍目裏で弾かれる4弦開放D音のほうが低くなる逆転現象(?)が起きていて、そこもユニークだ。

Ex-3:右手と左手のモーションをシンクロさせる

ichika このフレーズは左手のコードもメロディとして生きていて、全体的にメロディが下ってからどんどん上がっていく動き方ですね。下る時はタッピングもスライドで下って、上がる時は上がっていくっていう、コードの動きとタッピングした右手の動きを連動させています。わかりやすい表情のフレーズですよね。このフレーズは「You Are Not Alone」の一部なんですけど、元気付けるようなイメージで作ったので爽やかなメロディですよね。ここまでのフレーズを習得できている人ならば、奏法的にはそこまで難しくないと思うんですが、強いて言うなら左手のコード・チェンジが少しややこしいので、そこを叩き込むのがキモかなと思います。

▲軽快なテンポがゆえに爽やな雰囲気だがキーはG♯マイナーで、メロディ・ラインにはナチュラル・マイナー・スケールを基調とした叙情的なニュアンスがブレンドされている。総じてコード・ボイシングの妙が見て取れるリックだが、中でも3小節目のふたつ目の和音は斬新極まりない。また、1小節目のふたつ目や3小節目のふたつ目をオン・コードにすることによって、低音が流れるような動きである点も注目ポイント。

 

ichika

いちか◎1994年生まれ。Instagramに投稿した演奏動画から人気に火がつき、世界中から注目される新世代のギタリスト。叙情的なメロディを独創的なタッピング・テクニックで描き出す唯一無二の世界観が高い評価を集めている。川谷絵音とのichikoroや“Nito”名義でのコラボレーション作品など、ソロ以外でも精力的に活動中。

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