奏法分析|ナイア・イズミ『A Residency in the Los Angeles Area』最高難度の歌伴テクニック 奏法分析|ナイア・イズミ『A Residency in the Los Angeles Area』最高難度の歌伴テクニック

奏法分析|ナイア・イズミ『A Residency in the Los Angeles Area』
最高難度の歌伴テクニック

タッピングを用いた独創的なフレージングがナイア・イズミのトレードマーク。しかも、単体でも難しいそのフレーズを、弾きながら歌う。ここでは、そんな楽曲の顔にもなっているバッキング・プレイをご紹介しよう。

譜例作成/文=安東滋 浄書=Seventh

高難度テクを鏤める、新感覚の歌伴奏スタイル

現代的なネオソウルの音像の中に先進的なギター・テクニックをちりばめる注目のギタリスト=ナイア・イズミ。タッピングを駆使した高難度のバッキング・パターンを事もなげにループさせ、その上に自身のソウルフルなボーカルを乗せる!……この歌伴奏スタイルはまさに新感覚。そこにシンガーソング・ギタリストとしての独創性と大きなアピール・ポイントが浮かび上がってきます。以下に挙げたのは、その技巧的なバッキング・プレイにフォーカスした演奏サンプル。

Ex-1:高難度のタッピング・リック

「Natural Disaster」の主題となるタッピング・パターンを基本形にまとめた模擬譜例(参考CDtime=0’12″~)。左手側は5fのセーハ・フォームを保持した態勢で3&4弦の7f上をタッピング(譜例中のT印)、右手側はピックを持ったままの態勢で「中指・薬指・小指」の各指でタッピングしていきます(同↓印)。それ以外の音はピックあるいは右手側の余指での発音です。

これらの音がランダムに交錯していく様は、まるで迷路のよう(笑)。このめちゃ難度の高いタッピング・リックを涼しい顔でループさせながら歌も歌っちゃうんですから……もう、おそるべし! 変則的なリズム展開もイレギュラー感を増幅させていますね。いや~、それにしてもムズい!

参考音源

Ex-2:ブルー・ノートを効かせたノーマル・バッキング

16分音符がバウンスするグルーヴに乗った、「Six Inch Stilettos」のAメロ部のバッキング・パターンを模写したモデリング譜例(参考CDtime=0’17″~)。こちらは押弦だけで弾くノーマルの奏法です。

奇数小節に挿入される♭5thのブルー・ノート(3弦10f)を含む複音がセクシーに響きますね(笑)。演奏動画を観ると、人差指を7f上に置いたキレイなセーハ・フォームを軸に演奏しています。

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Ex-3:幾何学的な変拍子シーケンス

9/16拍子の難リズムで進行する「Voodoo」風のバッキング・パターンを参考譜例として模写してみました。テンションを含む3本弦セットをパターン化された音形でループさせていくAメロ部をイメージした例題です(参考CDtime=0’12″~)。

ピッキングは「ピック+中指&薬指」のコンビネーション。おそらくこの併用ピッキングのパターン化された動きがフレージングのモチーフになっていると思われます。

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Ex-4:サンプリング感覚のショート・ループ

「Soft Spoken」の導入パートからタッピングで弾くショート・ループを模写してみました(参考CDtime=0’16″~)。左手側は5fセーハを保持した態勢で4&5弦の7f上を薬指でタッピング(譜例中のT印)、右手はピックを持ったまま中指&薬指でタッピング(同↓印)……この両手のコンビネーションが軸。譜例冒頭のA音(5弦5f)はピックで発音、1&2小節目1拍目の16分音符裏の音は右手側の指でハジいて発音している模様です。譜例後半2小節目のパターン頭に休符を置くリズム展開は、まさにサンプリング感覚。

参考音源

作品データ

『A Residency in the Los Angeles Area』
Naia Izumi

輸入盤/2021年7月30日リリース

―Track List―

01. Honesty
02. Natural Disaster
03. Six Inch Stilettos
04. Voodoo
05. Water
06. What Happened To Love?
07. Good At Being Lonely
08. Sad Song
09. As It Comes
10. Be Still
11. Personal Heaven
12. Hand In Hand
13. Soft Spoken (Sound City Version)

―Guitarist―

ナイア・イズミ