毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回は、T-ボーン・ウォーカーが生んだ画期的なプレイ・スタイルを、TAB譜を交えながら解説しよう。
文/譜例作成=久保木靖
フレーズ①
マイナー・ペンタ基軸のターンアラウンド・フレーズ
ターンアラウンドで活用されるマイナー・ペンタ+M3rdのシグネチャー・リック。譜例は「I Got A Break Baby」を参考に作成したもの。えっ? 使い古されたフレーズだって? それを開発したのが、T-ボーンなのだ!
ポイントは、冒頭と4拍目に出てくるM3rd(3弦9フレット)の使用と、m7th(2弦11フレット)をクォーター・チョーキングすること(図1)。
T-ボーンのフレーズには正確に1/2音や1/4音ではない微妙なチョーキングが当たり前のように織り交ぜられる……ニュアンスの塊なのである。
フレーズ②
“これぞT-ボーン!”な倍テン・フレーズ
T-ボーンの常套技の1つ、いわゆる倍テン・フレーズだ。こちらも「I Got A Break Baby」を参考にしたもので、8分音符主体でゆったりと弾いていた中にぶっこんだ16分フレーズのサンプルである。やはりマイナー・ペンタを基軸に、M3rd、6th、9thを加えた音使いだ(図2)。
1小節目〜2小節2拍目は異弦同音フレーズで、チャーリー・クリスチャンらジャズ・ギタリストがグリッサンドで行なっていた奏法をチョーキングに置き換えたもの。チャック・ベリーを経由してロック・ギターのベーシックなフレーズにもなった。
フレーズ③
9thコードを半音上下からアプローチするバッキング
ジャジィな9thコードを活用したスロー・ブルースのバッキング・パターン。「Call It Stormy Monday」のコーラス3〜4小節目をシミュレートしたものだ。
譜面ではわかりにくいが、1小節〜2小節の1拍目は(図3)に示したG7(9)コード(ルート省略)のフォームを、半音上下からコード・トーンにアプローチしている。
2小節2拍目の1音目は、やはりG7(9)コードの半音下のフォームの一部。2音目と3音目はGコード(3弦4フレットと4弦5フレット)へ向けての全音下からのアプローチ。ただし、続く3拍目1音目は休符のため解決せず、アクセント的に2音目でルート(1弦3フレット)を弾いている。オシャレ〜!