パーラメント『ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ 第13回 パーラメント『ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ 第13回

パーラメント『ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム』/マーク・スピアーの此処ではない何処かへ 第13回

現代の音楽シーンにおける最重要ギタリストの1人、クルアンビンのマーク・スピアーが、世界中の“此処ではない何処か”を表現した快楽音楽を毎回1枚ずつ紹介していく連載。

今回のアルバムは、ファンク・バンド=パーラメントの『ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム』。

文=マーク・スピアー、久保木靖(アルバム解説) 翻訳=トミー・モリー 写真=鬼澤礼門 デザイン=MdN
*この記事はギター・マガジン2022年5月号より転載したものです。

パーラメント
『ファンケンテレキーVS.プラシーボ・シンドローム』/1977年

スペーシーで、いかがわしい、Pファンク諸作で1,2を争う傑作

“ファンク撲滅を目論む怪人との戦い”というちょっとお馬鹿(!?)なコンセプトのもと、間合いの大きなヘヴィ・ファンクが唸りを上げる作品。ギターではゲイリー・シャイダーやマイケル・ハンプトンが活躍。R&Bチャート1位獲得の「Flash Light」におけるシャープなカッティングはキャットフィッシュ・コリンズによる演奏だ。「Bop Gun」に撃たれてファンク・パワーを増大させよう(笑)。

誰一人としてカチっとハマったプレイをしようとしていない。

 今回は誰もが知るパーラメントの作品をチョイスしたよ。僕が初めて行ったコンサートがフェイス・ノー・モアだったのは以前の回(2022年3月号)でも言ったけど、ほぼ同時期に観に行ったのが実はパーラメント/ファンカデリックのショーだったんだ。

 音楽に触れ始めた頃の僕が、まったくカラーの違う2つのバンドを体験したわけさ。大きな影響を与えてくれたよ。フェイス・ノー・モアのショーにも「なんてロックなんだ!」と感動したけれど、パーラメント/ファンカデリックのショーを観て「僕はこういうバンドに入りたいんだ!」って思ったんだ。実に刺激的だった。

 それで、このアルバムはたぶん、僕が初めて聴いた彼らのレコードだ。当時の僕はベースをプレイしていたから、どうしてもベースばかり聴いていたね。「なんて最高なベース・ラインなんだ!」っていう感じで、愛聴していたよ。

 ギター・プレイに関しても達人級だけど、どちらかと言うとサポートするようなリズミカルなプレイが詰まっているよ。そのおかげでドラム、ベース、ホーン・セクション、そしてジョージ・クリントンが目立つアルバムとなっている。もちろん、グレン・ゴインズ(g,vo)も少しは歌っているけれどね。

 そして特筆すべきは、「リズムというもののとらえ方」だ。タイトさとルーズさが共存していて、かなり自由なプレイがされているんだよ。とにかく、誰一人として「カチっとハマったプレイをしよう」なんて意識していない。その場のグルーヴに任せて自由にプレイしている感じで、それが実に素晴らしいんだ。

マーク・スピアー(Mark Speer) プロフィール

テキサス州ヒューストン出身のトリオ、クルアンビンのギタリスト。タイ音楽を始めとする数多のワールド・ミュージックとアメリカ的なソウル/ファンクの要素に現代のヒップホップ的解釈を混ぜ、ドラム、ベース、ギターの最小単位で独自のサウンドを作り上げる。得意技はペンタトニックを中心にしたエスニックなリード・ギターやルーズなカッティングなど。愛器はフェンダー・ストラトキャスター。好きな邦楽は寺内タケシ。