新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。
デザイン=MdN
答えのない世界だからこそ、オリジナリティを築ける。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。ギターを持って公園にでも行きたい季節からすっかり梅雨、を抜け、そして夏! 湿気や、気温にギターのことを気にかける季節となりました。
ここ最近の私はというと、ライブをバンド編成で行なうことが増え、エレキ・ギターを弾くことが多くなり、とてもウキウキしています。そんな中で、やっぱりどうしても悩むのは、エレキ・ギターの音作りです。私は多くの皆様と同様、エフェクターを通し(通さずとも)、アンプから出します。ギターの音作りは、答えのない世界だからこそオリジナリティを築ける、理想の音像へ近づき、また、偶然理想を超える音にも出会える! 楽しい過程ですが、まだまだ私は探検不足です。
フェスなどで、たくさんのミュージシャンの方々の演奏を見ていると、白熱する演奏、グルーヴに高ぶる気持ちで胸がいっぱいになるのと共に、聴こえてくるギターの音に逐一「とってもかっこいい~」と感じています。どんなセッティングなのかを知りたくなる。改めて、そうした私にとってギター・マガジンの記事は偉大で、たくさんの方々の愛用するペダル、アンプ、ギターを詳しく知ることのできる、まるで魔法の書です。また、レコーディング時の機材、音作りの方法も知れますよね。ギターやエフェクター・ボードの写真を見ているだけでも十分楽しいのに、こんなにも知識を頂けて良いのでしょうか。大・参考になっております。
レコーディングも、音源として残るものであるからこそ、ライブと同様に、場合によってはそれ以上に綿密に音作りをしていきたいものです。最近リリースされる音楽を聴いていますと、エレキ・ギターの音のハイゲイン成分は年々少なくなる傾向にある気がします。サブスクの性質や今の時代に合わせた、ローがしっかり出ている、歌がバチコンと聴こえるミックス(または70年代ロック・ポップスのように音数が少なく、こちらもまた歌がよく聴こえるミックス)などによる位相の影響が大きいのかなと感じますが、ギターそのものの音作りの段階からある程度中域や低域を意識しているのだろうと思われます。それがまた、気持ち良い。とても素敵です。歪みのざらつきを感じつつ、柔らかで耳障りが滑らか、テンポの遅い音楽でのコード・ストロークは櫂のように音楽全体を進めてゆくように思えます。
海外で録音された音源である場合、電圧の違いによるアンプの鳴りも関係していると思われますが、私もそのような音作りをしてギターを弾きたいなと思う今日この頃です(補足なのですが、ギターがオケに溶け込み過ぎているものより、ギターが割としっかりドシンとあるもの、音像の見えるものという体でお話を進めています)。
一方、ヒリヒリした音色もエレキ・ギターの魅力でしょう。ハイが少なく、どれだけ中域~低域寄りで柔らかくギターが鳴っていようが、歪みでヒリヒリ感は出せます。ファズはいつでもがつんとヒリヒリで最高です。
個人的に最近、この音かっこいい!と思ったのは、トロ・イ・モア氏の新アルバム『MAHAL』の1曲目、アンノウン・モータル・オーケストラをフィーチャリングした「The Medium」。その名のとおりミディアム・テンポで繰り広げられるサイケ・ロックな楽曲で、真ん中で大きく鳴るメロディアスなフレーズ、 そのファズ+ワウの王道ロックなサウンドがカッコ良いです。ステレオで鳴るリフ、バッキングのフェイザーのかかったような歪んだサウンドも最高です。初めて聴いた時には、耳障りの良いヒリヒリ感、気持ち良さに思わず「やったー!」と叫びそうになりました。このアルバムは、ほかの曲もどれも音像が特徴的でとてもカッコ良いので、ぜひ聴いてみて下さい。なんとなくジミ・ヘンドリックス味があります。ジミ・ヘンドリックス作品に関しても今後またどこかで触れたいです……!
著者プロフィール
崎山蒼志
さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。現在19歳。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。