崎山蒼志の未知との遭遇 第11回:とんでもないペダルを弾いた! 崎山蒼志の未知との遭遇 第11回:とんでもないペダルを弾いた!

崎山蒼志の未知との遭遇
第11回:とんでもないペダルを弾いた!

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

轟音です。そう、轟音なのです。

 東京に来て、明らかに楽器屋さんでギターやエフェクターを手に取る機会が増えました。最初のほうは、緊張でなかなかお店に入れなかったのですが、入ってみれば優しい店員さん。あと、とにかく楽器屋さんが多い! 最近は気ままに足を運んでいます。お世話になっている皆様、丁寧な接客をして下さる皆様、いつもありがとうございます。

 そんな具合で先日行ってきた池袋の楽器屋さんにて、とんでもないペダルを試奏してきました。海外のストレンジなペダルを紹介するチャンネルで目にしたことはありましたが、生で見るのは初めてでした。JPTR FXのSuper Weirdoです(なんとそのお店にはJPTR FXのペダルがほかにもたくさんありました。クレイジー)。

JPTR FX Super Weirdo

 「グリッチ・スーパー・ファズ、タイム・モジュレーション・ユニット」とスイッチ下に表記されたそれを試奏した瞬間。僕の高揚感は頂点に達しました。とんでもない音圧、ロウ。クリーン・トーンからスイッチを踏んだ瞬間に雷が落ちたような、そんな衝撃が体を走りました。ザクザクで攻撃的な低音を兼ね備えた非常にファジーなバイト感は、こちらの衝動的なプレイを、どんどん駆り立ててくれます。

 ハイも凄まじく、それはまるで公園で近所の子どもたちが耳を塞ぎ、鳥もバタバタ飛んでいってしまうほどの轟音です。そう、轟音なのです。ですが、これがまた病みつきで、弾き手の演奏の熱量に、さらなる拍車をかけます。

 それから、タイム・モジュレーション・ユニット! この効果がやばいです。一度ツマミを動かせば、凍てつく地下室で鳴らされるようなリバーブ感で、音が耳をつん裂きます。そこからツマミを少し動かせば、予測のできないグリッチ・エコーが飛び交います。これはまさしく、トリップへの招待状でしょう。左下のスイッチは、フィードバック効果を催すようで、ツマミを右にいじれば、高速モールス信号のような強烈なフィードバック、そこからツマミを左にいじればトランス・ミュージックのような低音が、不規則に暴れまわります。

 フィードバック・スイッチを押しながら、そうしたツマミの動きをくり返せば、もはやフィードバックは取り返しのつかない、無法地帯へとたどり着くでしょう。「加減のなさ」が総じてこのペダルの素晴らしい点のように感じました。迷った挙句、結局購入しなかったのですが、非常にクリエイティブでスーパー・グリッチィなペダルには間違いないので、今後また欲しくなる、手に入れる可能性は十分あります(うーん、買うでしょう)。素晴らしい出会いでした。これを読んでくださっている皆様にも一度体感してほしい! そう思います。

 JPTR FX Super Weirdoのようにクレイジーなペダルで、クレイジーにギターをプレイする、そんなギタリストが僕は好きです。

 例えば、テラ・メロスのニック・ラインハート。ユニークなリフやフレージングの中で、空間系のエフェクトやモジュレーションを効果的に使っている印象があります。ローランドのサンプラーSP-404を使ったプレイなど、いつも「こういう発想があったか!」と驚かされます。むしろ、エレキ・ギターなのにシンセサイザーのような音の瞬間が多くあって、足下で音を自由自在に変えてゆく様は、常々エフェクターの魔呪術師のように、僕には映っています。何よりも本人が楽しそうで、見てるこちら側も楽しくなるところが最高です。

 テラ・メロスのライブ映像ではフェンダーのジャガー(メイプル指板なのがまたかっこいい)と、スクワイヤーのスーパーソニックを使い分けていて、その影響でそのどちらのギターも欲しくなってしまうほど、好きなギタリストです。エフェクターの試奏動画のようなチャンネルにも出てくる人物なので、もしかしたら「知らない」と思った皆さんも、もうすでにご覧になられている人物かもしれません。いつか会ってみたいです。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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