崎山蒼志の未知との遭遇 第12回:SGに惹きつけられて 崎山蒼志の未知との遭遇 第12回:SGに惹きつけられて

崎山蒼志の未知との遭遇
第12回:SGに惹きつけられて

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

果てしなく、取り憑かれてゆく。

 この間、ギブソン・カスタム・ショップのSGを弾きました。60th Anniversary 1961 Les Paul SG Standard、艶やかなチェリー・レッドに映る杢目が美しく、サイドウェイ・ヴァイブローラが搭載されています。太く、そして手に馴染みやすいネックで、手に取った瞬間からとても素敵なギターだと確信しました。

 サイドウェイ・ヴァイブローラの効果もあってか、弾いた時の手に伝わる振動、鳴り感が心地良く、ずっと弾いていたくなります。アンプはマーシャルでした。クランチさせて、弦を弾けば太くパリッとした音がパワフルに飛び出してきます。ミッドが気持ち良いです。リアもハイが絶妙に心地良く、抜け感がたまりません。トーンを絞って、さらにゲインを上げればまるでカルロス・サンタナの音色です。クリーンはふくよかで、特にこれまたトーンを絞りフロントで鳴らせば、フルアコのような音がしました。ジャズにぴったりです(特に国外ではSGを使うジャズ・ギタリストが多いと聞きました)。

 総じてこのギターの、ピッキングや指弾きといった細かなニュアンスを拾ってくれるところに惹かれました。精巧な作りとギブソンらしい屈強さ、かつ軽さ。個性がありながらジャンルレスに使い分けのできる、素晴らしい1本でした。何にせよSG、ダブル・カッタウェイなその見た目がかっこいいです。

 自分の好きなギタリスト、ミュージシャンがSGを使っていることが多いのもあって、随分前からSGに魅力を感じてきました。自分自身ビンテージのSGスペシャルを持っているのですが、クラシックなチェリー・レッド、ハンバッカーのSGへの憧れは強まるばかりです。今回試奏したサイドウェイ・ヴァイブローラの付いた、同じくレス・ポール/SGスタンダードと名付けられるであろうもの(本物の1961年製?)を、大好きなトム・ヨーク氏も使用しています。レディオヘッドのアルバム『In Rainbows』(2007年)あたりから、舞台上で弾いているイメージがあります。『In Rainbows』の収録曲、「Bodysnatchers」のライブ映像にて、曲頭でかっこいいリフをかき鳴らすそのSGを持ったトム・ヨークの姿、鳴らされる音、すべてに心が満たされます。また、照明が当たり、より際立つボディ・エッジの陰影がかっこいいです。

 ほかにSGを使っている方だと、種類は違えど、坂本慎太郎さん、灰野敬二さんも好き。最近ではブラック・ミディのジョーディ・グリープ。大好きな音楽家の持つ、大好きなSGの魅力。果てしなく、今後も取り憑かれてゆくことだと思います。ちなみに私はスモール・ピックガード派です。やー、それにしてもカスタム・ショップのLes Paul SG Standard、素晴らしかったー、、。今欲しいギター、暫定一位です。

 御茶ノ水の楽器街を抜け、隣の神保町に向かいました。神保町は古本屋がたくさん。立ち並ぶ本を通して、作者や前の持ち主、様々な感性、様々な歴史や記憶が、見えない煙のように立ち昇ります。楽器屋さんも同じ理由で好きだったりします。そのギターの前の持ち主、作った人物、メーカーや時代背景、多国籍なギターが並ぶ姿に、いつ行っても胸が高鳴ります。

 話題が変わりまして、インスタで凄まじいギタリストをお見かけすることが多々あるのですが、最近だとギオーム・ムシャレという方に衝撃を受けました。素速い運指、フレージングはジャジィかつ、時にクラシックを思わせます。ピッキングがあまりにもなめらかで、その細かなニュアンスの付け方が心に響きます。「pick or finger improv : 1 or 2 ?」と名付けられた動画が個人的にオススメです。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

Official HP>
Instagram>
Twitter>