ポール・リード・スミス氏が語る、PRSとして初のエフェクター開発 ポール・リード・スミス氏が語る、PRSとして初のエフェクター開発

ポール・リード・スミス氏が語る、
PRSとして初のエフェクター開発

PRS Guitarsにとって初のエフェクター・ラインナップとして、HORSEMEAT、MARY CRIES、WIND THROUGH THE TREESの3機種が発表された。洗練されたデザインやオーバードライブ/コンプレッサー/フランジャーというセレクトに加え、そもそも“PRSがエフェクター!?”と驚いた人も多いはず。気になるこれらの開発について、来日していたPRS代表のポール・リード・スミス氏に話を聞いていこう。

インタビュー=橋本修一 翻訳=トミー・モリー

“最終的にペダルボードに入るものを生み出す”ということが重要なポイントでした

どれも凝ったデザインのエフェクターですが、まずは3機種に共通する波のモチーフについて聞かせて下さい。

HORSEMEAT(オーバードライブ)
HORSEMEAT(オーバードライブ)
MARY CRIES(コンプレッサー)
MARY CRIES(コンプレッサー)
WIND THROUGH THE TREES(フランジャー)
WIND THROUGH THE TREES(フランジャー)

 これは私たちがギターに施している鳥のインレイの一部なのです。すべての線は鳥のインレイから由来しています。これは私たちのアート・ディレクターであるマーク・クイッグリーのアイディアでした。私も美しいと思い、すべてのペダルに同じカラーリングを施したいと考えたんです。ただ、これについては相当な議論を重ねてきて、最初は誰も賛同してくれませんでした(笑)。私だけがひねくれ者としてプッシュしていたのです。

開発時に考えていたことはありますか?

 多くの人々が様々なペダルを購入していますが、それらがペダルボードに入らないことも多いですよね? “40個ほどペダルを所有していても、実際にボードに入るのは7つだけ”ということは頻繁に見られ、購入されても愛される存在になることはとても難しい。なのでPRSとしては、“最終的にペダルボードに入るものを生み出す”ということが重要なポイントでした。

ペダルの製作についてはいつから計画されていたのでしょうか?

 おそらく10年くらい前、私がエフェクト・ペダルを収集し始めた頃からです。多くの人から“ペダルを作らないのか?”といった質問を常に受け続け、その度にノーと答えてきました。しかし、ゼロから設計したHORSEMEAT(オーバードライブ)の出来の良さを自分たちでも気に入り、ペダル・ビジネスへの参入を検討することにしたんです。

 それからは本格的にペダル・ビジネスに参入するかどうか、ひたすら議論を重ね続けましたね。そもそもHORSEMEATという名前が良い名前なのか、これは本当に良いペダルなのか、実際にビジネスとして成立するのか……何度となく話し合い、最終的に現在の状態にいたりました。

“ケンタウロスをランチとして食ってやる!”という意味を込めています(笑)

トランスペアレントなオーバードライブはこの10年で増えてきたものですが、HORSEMEATはほかのトランスペアレント系とどのような違いがありますか?

 グッドなサウンドということですね(笑)。浮遊感のあるサウンド、すなわちフワっとした音楽的な音ですね。多くのオーバードライブの問題点は雑味が強く、ダーティなサウンドであることです。本機はゲルマニウム・ダイオードを搭載し、高価で厳選したパーツを表面実装ではなくスルーホール・マウントしています。

 また、VOICEノブによってハイからミッド・レンジを加えることができる一方で、トレブルやべースも加えられます。これはトーン・ノブを1つだけ搭載させているクロンの本家Centaurとは大きく異なるポイントで、サウンドを細やかなところまで作り込むことができるんです。私にとってはこれこそが“トランスペアレントな”ペダルであり、ビッグで厚みのあるサウンドが得られるんです。それこそ甲高いイルカの鳴き声ではなく、ライオンの咆哮のようなサウンドですね。

先ほどHORSEMEATは“ゼロからの設計した”と言っていましたが、具体的にはどのような開発の流れでしたか?

 まず、電子設計エンジニアに私が求めていることをすべて伝えました。“それならできると思います”ということで、非対称クリッピングの歪み回路になりました。そしてサブ・ハーモニックとして、1オクターブ上の倍音成分をたっぷりと加えています。これはイーブン・ハーモニックス(偶数高調波)と呼ばれているものです。

ベン・エラーがクロンのCentaurを引き合いに出していましたが、実際にCentaurを参考にした点はあるのですか?

 それはナイスな質問です。そもそもHORSEMEATという名前には“ケンタウロスをランチとして食ってやる!”という意味を込めています(笑)。Centaurは非のつけどころがない素晴らしいペダルですし、実際に私も1台持っています。ただ、Centaurはゲインを上げるとベースを失うという傾向があるので、私たちのペダルではそれが起こらないように設計しました。ゲインをどの位置に設定しても、しっかりと低音のコントロールができるものとなっています。

 このモデル名の由来はジョークによるもので、私たちはクロンのCentaurをリスペクトしているんです。私たちがこういった名機を愛しているのは、“それらが優れているから”ということはもちろん、私たちがビジネスを行なってくうえでも大切な存在だからなのです。

ジョン・メイヤーがこのペダルをベタ褒めしてくれましたよ

MARY CRIESについても聞かせて下さい。

 これはテレトロニクスのLA-2Aをベースにしたオプティカル・コンプレッサーです。ペダルというサイズに落とし込んでいますが、本物のアウトボード機材と同じものです。スタジオユースのレベルのものですから、ボーカルに使うこともできますし、フルバンドをカバーしているのでどんな使い方をしてもパーフェクトです。

 ティム・ピアースはこれをコンプレッサーとしてのみならず、ブースト・ペダルとして使うことを好んでいます。あまりにもトランスペアレントなサウンドゆえに、ライトが点灯しなければオンになっていることがわからないかもしれません(笑)。

では、フランジャー=WIND THROUGH THE TREESについても聞かせてもらえますか?

 WIND THROUGH THE TREESという名前は森に吹く強烈な嵐の音を意味しており、風が複雑に混ざり合う様子を意図しています。ジョン・メイヤーがこのペダルをベタ褒めしてくれましたよ。

 音は1msec単位の時間をかけて移動しますが、フランジャーは原理的に6〜8msのレンジの中で作用しています。コーラス・ペダルとなると30msくらいで機能していますね。またレスリー・スピーカーでは上部と底部のスピーカーで約3フィート離れており、3msの遅れが発生しています。このペダルに関しては2つのレスリー・スピーカーが内蔵されており、それらを混ぜ合わせているのです。

初めて触る人のためにコントロールについても教えて下さい。

 REGENノブはフランジャーのためのもので、通常のフランジャーではコントロールできないハイエンドの調節を可能とさせています。またMIXノブで2台のフランジャーを混ぜ合わせることができますね。DRY/WETのコントロールも可能で、ギターの信号だけ、もしくはフランジャーを通過したシグナルだけを取り出せますよ。とはいえ何よりもまず、トライしてもらいたいですね。

今後より多くのペダルがリリースされていくのでしょうか?

 もちろんです。ただ詳細についてはまだ聞かないで下さい(笑)。

PRS Guitars
HORSEMEAT

【スペック】
Pedal Type: Transparent Overdrive
Analog/Digital: Analog
Inputs: (1) 1⁄4” instrument
Outputs: (1) 1⁄4” instrument
Bypass Switching: Ture Bypass
Amperage: 16mA
Power Source: 9V DC Power Supply, regulated and/or isolated (not included)
Batteries: (1) 9V DC (not included)
Length: 12.3cm
Width: 9.3cm
Height: 5.9cm
Weight: 499g

【価格】
49,500円(税込)

【問い合わせ】
Paul Reed Smith Guitars Japan https://www.prsguitars.jp

PRS Guitars
MARY CRIES

【スペック】
Pedal Type: Optical Compressor
Analog/Digital: Analog
Inputs: (1) 1⁄4” instrument
Outputs: (1) 1⁄4” instrument
Bypass Switching: Ture Bypass
Amperage: 8mA
Power Source: 9V DC Power Supply, regulated and/or isolated (not included)
Batteries: (1) 9V DC (not included)
Length: 12.3cm
Width: 9.3cm
Height: 5.9cm
Weight: 499g

【価格】
44,000円(税込)

【問い合わせ】
Paul Reed Smith Guitars Japan https://www.prsguitars.jp

PRS Guitars
WIND THROUGH THE TREES

【スペック】
Pedal Type: Dual Analog Flanger
Analog/Digital: Analog
Inputs: (1) 1⁄4” instrument
Outputs: (1) 1⁄4” instrument
Bypass Switching: Ture Bypass
Amperage: 22mA
Power Source: 9V DC Power Supply, regulated and/or isolated (not included)
Batteries: (1) 9V DC (not included)
Length: 12.3cm
Width: 14.4cm
Height: 5.7cm
Weight: 590g

【価格】
66,000円(税込)

【問い合わせ】
Paul Reed Smith Guitars Japan https://www.prsguitars.jp