新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。
デザイン=MdN
音楽性からは想像できないギター。胸が熱くなります。
自分はエレキ・ギターの、ファットでプリッとした音が1番好きかもしれません。ということを、この間初めてリッケンバッカーを弾いて思いました。2020年前後に生産された、たしか360ジェットグロー、箱物です。
まず持った瞬間、(安直なのですが)「このギターしっかりしているな〜」と感嘆しました。ネックが手によく馴染み、ボディ全体の重さのバランスも最高です。頼り甲斐がある。そんな印象を受けました。そうしてひとたびコードを鳴らせば、私の心は完全に掴まれました。心地良くプリっとした、クリアなサウンド。箱物というのもあって深みもあるトーンです。中域あたりの音に、ほかのギターにない独特なリッケンらしさがあるなと感じました。それにしても、ストロークやアルペジオをするのがなんて心地良いサウンドなのでしょうか。草原に居るような気持ちです。弦を押さえる左手、弦を弾く右手の負担も一切なく、いつまでも弾いていられそうで、生鳴りも気持ちいいです。センターで弾いていたのですが、フロント・ピックアップにすればフルアコの音の甘さ、温かさがありました。レスポンスも速く、一音一音が粒立っていて、ジョージ・ベンソンっぽいジャズのフレーズなんかを弾きたくなります。自分の知識のなさかもしれないですが、ジャズでリッケンの人って、そう多くないですよね……。
今度は歪んだ音を確認。ビンテージのMaxon、オーバードライブを通します。そうするとまた印象が変わり、音がクッと前に抜ける、ロックなサウンドとなりました。まとまりが良いドライブ・サウンドです。リアにした時のシャープで渇いた音もかっこいい。バンド内でも埋もれることなく音が前に出て、かつ、「あぁ、リッケンだ」ってわかりそうだなと思いました。どんなバンドにも合いそうです。
何よりも、頼りになるギターだと感じました。勿論、楽器屋さんでよく調整されていることも要因かと思いますが、本当に素晴らしいギターでした。今までさほど注視していなかったのですが、これを機に真っ直ぐリッケンが欲しくなってしまいました。
さっきちょっと触れました、リッケンでジャズを〜みたいな話。私にとって、リッケンでジャズやレゲエなんかをやっている方がいれば、なんといいますか、意外だな、面白いなと感じます。ハードコアをフルアコでやっている方がいたり、ショウ・ミー・ザ・ボディというハードな音楽性のバンドはバンジョーを弾いていたりする。ルイス・コール氏は何故かメタル感満載のフライングVを動画内で弾いていました。ハイエイタス・カイヨーテのボーカルの方(ネイ・パーム)もジャクソンのギター。そういった、音楽性からは想像できない組み合わせのギターを持っているのって、なんだか胸が熱くなります。グータッチしたくなる。見た目的にもそうですが、音も、その音楽性との意外な化学反応を知れるようでワクワクします。
一方で、その方の奏でる音楽性らしいギターをしっかりと持っているのも、かっこいいなと思います。ネオソウル系の方々がセミアコやストラトキャスターを弾いていたり、オルタナの方々がジャガー、ジャズマスターを掻き鳴らしていたり。皆さん大体の予想を遥かに上回る、素晴らしい音を出されていて、いつもいつも感嘆、惚れ惚れしています。
総じてその方の音楽性らしいギターも、音楽性とは違った意外な組み合わせのギターも、弾き手が鳴らしたいように鳴らす音、持ちたいように持っている姿が好きなのだと思います。うーん。なんといいますか、使いたいギターを使えばそれが素敵だし、かっこいいってことですね……‼︎
自分がいつかハードコア・バンドをするならば、KAWAIのCB-2Vというギターを使いたいです。バンジョーの形をしたビザール・ギター。オリジナルのミュートが付いていて、その音がなんともバンジョーらしく、また、奇妙に響き渡ります。弾き語りなんかで使っても面白そうですね。うん、ギターが欲しいんです。
著者プロフィール
崎山蒼志
さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。