ジミ・ヘンドリックスが使った“スパゲティ・ロゴ”のストラトキャスターに迫る連載企画。彼のキャリアで最も印象深いシーンの1つ、モンタレー・ポップ・フェスティバルで登場したサイケ・ペイントのストラトも、スパロゴを持つ1本だった。
文=fuzzface66 Photo by Paul Ryan/Michael Ochs Archives/Getty Images
※文中のギターの年式表記は、各スペックから推測される最も近い年式を採用している。
1964 Fender Stratocaster Fiesta Red
- フィニッシュ:フィエスタ・レッド&ペイント
- 指板:ラウンド貼りローズウッド
- 使用期間 : 1967年6月
ラウンド貼りのローズウッド指板で12フレットのポジション・マークの間隔が狭く、ピックガード・ビスがセンターPU寄りに位置していることから、スパロゴ最終期の1964年製とみられるフィエスタ・レッド・ボディのモデル。ジミ自らスプレーやマニキュア、アクリル絵の具などでサイケデリック模様にペイントを施している。
パフォーマンス前の数時間でペイントを施した!?
1967年6月18日、モンタレー・ポップ・フェスティバルのラスト・ナンバー「Wild Thing」のクライマックスで、ジミが火を付けて破壊したことであまりにも有名な1本。
このロック・ミュージック史上に残る伝説的なギターにジミがペイントを施したのは、なんとフェスティバル当日の午後。つまりペイントから数時間後にあのパフォーマンスを披露していたことになる(滞在先のバルコニーで、西海岸の太陽を浴びながら一心不乱にペイントしているジミの様子を、同フェスティバルの出演者であり友人だった、アニマルズのエリック・バードンが目撃している)。
また、これまでこのモデルは、モンタレー現地の楽器店で購入したというのが定説だったが、様々な写真を細かく検証した結果、5月のヨーロッパ・ツアーで使用していたフィエスタ・レッド・モデルと同一個体である可能性が非常に高いことが判明した。“スパロゴ”の貼り付け位置やストリング・ガイドとの位置関係、“ORIGINAL Contour Body”デカール周辺にある杢目のシミのような模様まで完全に一致しているのだ。
また、余談だが、同じく5月のヨーロッパ・ツアーで使用していたもう1本の赤モデル“キャンディ・アップル・レッド”は、6月4日にロンドンのサヴィル・シアターで破壊されたモデルである可能性が非常に高い。
ちなみに、90年代後半にフェンダー・カスタムショップから、このモンタレー・ペイント・モデルが限定復刻された際、なぜか“スパロゴ”仕様ではなく“トラロゴ”仕様で復刻されていた。おそらくリサーチ・ミスだったのだろう。
これ以降、ジミのステージで赤系ストラトキャスターの使用は確認されていない。