崎山蒼志の未知との遭遇 第21回:ダンエレクトロ愛 崎山蒼志の未知との遭遇 第21回:ダンエレクトロ愛

崎山蒼志の未知との遭遇
第21回:ダンエレクトロ愛

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

一目惚れでした。

 思えば、楽器との出会いはいつも突然です。ネットでも、スクロールする画面に突如ビビっと来るギターは現われるもの。特別狙い目も無く入った店内に、好きなギター・メーカーの、それも好きなモデルが鎮座していました。1ピックアップ、色は黄色というよりもクリーム色で、最近自分がチェックしていた市場では、あまり見かけなかったギターです。自分の持っているオリジナルのDanelectro U-1 ワン・カット・タイプの、再発モデルでした。2001年製で、ピックアップがななめに位置されていて、オリジナルのU-1はまっすぐなので、そこが違います。一目惚れでした。

Danelectro U1

 店員さんに声をかけ、試奏をします。店員さんがテキパキした動作で、ギターをチューニングしたり、セッティングしている姿に、私の胸は最大限に高まります。今から弾ける。いつまでたってもその瞬間が好きだし、好きでいたいと思います。アンプに置かれた値札に目がいきます。49,900円(税込54,890円)、その時点で、とても安い値段に感じました。セッティングがひと段落終え、店員さんに鳴らされ、ついにアンプからギターの音が出力されます。艶っぽく、太くありました。私の心は強く惹かれます。

 いざ、自分でギターを抱えます。ネックを握った段階での、ギターに対する感想は、「凄くしっかりした、調整されたギターだな」、でした。弦高は高く無く、ネックの握り具合としましては、少し太いかなといった感じでありました。次に、コードを鳴らします。生鳴りが心地良い。ギターが全体で鳴っています。これは相当、当たりなギターな気がしました。ボリュームを上げ、アンプから音を出します。レスポンスがとてもはやいです。弾いていて気持ちが良い。音が抜けてきます。かつ、ローがしっかり出ています。もともと所持しているオリジナルに比べ、音にいなたさがありません。いなたさ、それも味わいのひとつなのですが、総じてオリジナルよりエフェクターのノリも良さそうな、使い勝手の良さそうな印象です。ブリッジは換えられていました(金属製のプレートの上に木製のものから、ALLPARTS BRIDGEになっているようです。個人的にはこちらのほうが、弦交換がしやすいです)。

 ワン・ボリュームに見えてトーンも付いています。潔くシンプルな見た目が、かっこよく、可愛らしすぎます。

 同じダンエレクトロでも、年代によって、個体によってここまで違うのかと驚いてしまいます。最近ダブル・カット・モデルの1958年製U-1も試奏したのですが、全然印象が違いました。ダンエレクトロの音らしさ、リップスティックPUらしさはありつつも、もっと音が繊細で、ロー成分もワン・カット・モデルに比べて少ないように感じました。かといって、一度歪ませれば雷のような、ひりつく音を轟かせます。ビンテージ特有の存在感、所々感じる渋みに、こちらのギターにもまた心を掴まれた記憶が鮮明に残っています。

 ダンエレクトロは本当に見た目が素晴らしい。自分のツボに突き刺さって、こびりついて離れません。リップスティックPU、ボディの中空構造ならではの音も、個体差がありながらも総じて個性的で、愛らしく、素晴らしい。キュートでシンプルな、つるんとした薄い箱が鳴っているような。それを抱えて弾く浪漫。そこに脈々と受け継がれる名だたる愛用者たちの音楽のDNA、歴史が積み重なり、ギターを通して私は広く夢を見ます。痺れる。歴史的にも、存在のとっても稀有なギターだと思います。

 私が所持するダンエレクトロはこれで二つ目(+一本貸して頂いています)。ベースも欲しいな……。いつかコレクターになっていそうで、嬉しくもあり怖くもあります……。

 私の好きなダンエレクトロの弾き手は、ベック、そしてジミー・ペイジです。Silvertoneですと、マック・デマルコも大好きです。掻き鳴らしたし、爪弾きたし。ニュー・ダンエレクトロ、宜しくね!

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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