ギター・マガジンで連載中の40周年記念企画「偉大な40枚の○○○名盤」の内容を、本WEBサイトで順次公開しています。今回紹介するのは、ハンブル・パイ、テン・イヤーズ・アフター、サヴォイ・ブラウン、チキン・シャック、フォガット、ステイタス・クォー、クライマックス・ブルース・バンドが1960年代末から1970年代初頭にかけて残した名盤です。
選盤・文:安東滋
ハンブル・パイ
『Rockin’ The Fillmore』
●リリース:1971年
●ギタリスト:スティーヴ・マリオット/ピーター・フランプトン
“動と静”のギター・コンビネーション
“黒人よりも黒い”と評されたソウルフルな歌声の持ち主=スティーヴ・マリオットを中心に結成されたハンブル・パイ。本作は相方にピーター・フランプトンを配した時代のライブ音源。ブルージィ&ダイナミックに攻めるマリオット、そこにスマートに絡むフランプトン、両者の“動と静”のプレイ・キャラクターの対比が同期の大きな聴きどころ。
ハンブル・パイ
『Smokin’』
●リリース:1972年
●ギタリスト:スティーヴ・マリオット/デイヴ・クレムソン
ソウル満載の黒いブルース・ロック
ピーター・フランプトンの後任として、英国の凄腕ジャズ・ロック集団=コロシアムからデイヴ・“クレム”・クレムソンを迎えた初作。ブルース・ロックにも秀でた腕を持つクレムソンを加えたハンブル・パイは、前期よりもより一層、黒人音楽に根ざしたソウルフルなブルース・ロックを展開していく。次作『Eat It』(73年)も是非!
テン・イヤーズ・アフター
『Undead(イン・コンサート)』
●リリース:1968年
●ギタリスト:アルヴィン・リー
スウィングしまくる“速弾きギター”
英国ブルース・ロック界きっての“速弾き男”として名を馳せた、剛腕アルヴィン・リー。彼が率いるテン・イヤーズ・アフターの第2作目として発表されたライブ盤。スウィンギーなリズムに乗ってハード・ドライブする疾走感満点の速弾きギターが満載された作品だ。ウッドストックでの名演で知られる「I’m Going Home」の初期バーションも収録。
テン・イヤーズ・アフター
『Ssssh(夜明けのない朝)』
●リリース:1969年
●ギタリスト:アルヴィン・リー
ロック色を強めたキャリア中期の作品
圧巻のパフォーマンスで速弾き奏者としての冠を不動のものにしたウッドストック出演と同年同月の、キャリア中期の代表作。ヘヴィに編曲されたブルース・スタンダード「Good Morning Little Schoolgirl」での豪快な弾き倒し、そして邦盤のアルバム・タイトルともなった初のビック・ヒット「I Woke Up This Morning」が目玉。
サヴォイ・ブラウン
『A Step Further』
●リリース:1969年
●ギタリスト:キム・シモンズ/デイヴ・ぺヴェレット
英国ブルース・ロックの名門バンド
フリートウッド・マック、チキン・シャックと並んで英国ブルース・ロックの3大バンドと称されたサヴォイ・ブラウン。名ギタリスト=キム・シモンズを中心に英国ブルース・ロックの系譜に太い幹を形成した名門バンドだ。本作は次第にロック色を強めていくキャリア中期の4th。聴きものは22分を超えるライブ・メドレー「Savoy Brown Boogie」。
サヴォイ・ブラウン
『Boogie Brothers』
●リリース:1974年
●ギタリスト:キム・シモンズ/スタン・ウェブ/ミラー・アンダーソン
“ブギー3兄弟”が合体!
キム・シモンズ率いるサヴォイ・ブラウンの陣中に、チキン・シャックの中心人物スタン・ウェブとキーフ・ハートレー・バンドのミラー・アンダーソンの両雄が加わったトリプル・ギター編成の作品。ソロとバッキングの両面で、英国ブルース・ロック界を代表する3奏者それぞれのプレイ・キャラクターがたっぷりと楽しめる逸品。
チキン・シャック
『Forty Blue Fingers』
●リリース:1968年
●ギタリスト:スタン・ウェブ
本格ブルースの趣あり
英国3大ブルース・ロック・バンドの一角をなすチキン・シャックの1st。本作に代表される初期の数作は(ブルース・ロックというよりは)良質な英国ブルース・アルバムの趣あり。それを牽引するのは 、B.B.キングやフレディ・キングなどから影響を受けたモダン派の節回しを太い音色でたっぷりと奏でる、スタン・ウェブの本格的なブルース・ギター。
フォガット
『Foghat』
●リリース:1972年
●ギタリスト:デイヴ・ピヴェレット/ロッド・プライス
ハードに決める豪快ブルース・ロック
サヴォイ・ブラウンから分離した3人のメンバーを中心に結成された英国出身ブルース・ロック・バンドの1st。ロンサム・デイヴ・ピヴェレットとロッド・プライスのツイン・ギターを看板に据えたハード&キャッチーな演奏が身上だ。この1stには、デイヴ・エドムンズ、トッド・ラングレン、アンディ・フェアウェザー・ロウなどのゲスト陣も参加。
ステイタス・クォー
『Piledriver』
●リリース:1972年
●ギタリスト:フランシス・ロッシ/リック・パーフィット
ハード・ブギー、一直線!
フランシス・ロッシとリック・パーフィットのツイン・ギターを中心に、徹頭徹尾ハード・ブギーで押しまくる“剛球一直線”の豪腕スタイルがこのステイタス・クォーの大看板(その潔さはある意味、英国版ZZトップと言えるかも:笑)。ここにあげた5thは初めてUKチャートにランク・インした出世作。驀進するハード・ブギーを体感せよ!
クライマックス・ブルース・バンド
『Tightly Knit』
●リリース:1971年
●ギタリスト:コリン・クーパー/ピーター・ヘイコック
キャッチーな音も含む変遷期
本格的な英国ブルース・バンドとして活動したキャリア初期から、徐々にブルース・ロック色を強めていく4th。本作はホーン隊も加えたキャッチー&カラフルな音が売り。ちなみに、キャリア後期の70年代後半からは徐々にポップ色を強め、王道ブルース・ロックからは乖離していく。このあたりの変遷はフリートウッド・マックとも共通する(苦笑)。
*本記事はギター・マガジン2021年1月号にも掲載しています。
『ギター・マガジン2021年1月号』
特集:追悼 エディ・ヴァン・ヘイレン
12月11日発売のギター・マガジン2021年1月号は、エディ・ヴァン・ヘイレンの追悼特集。全6編の貴重な本人インタビューを掲載。