初期キング・クリムゾンの最重要ギター、ロバート・フリップの1959年製レス・ポール・カスタム 初期キング・クリムゾンの最重要ギター、ロバート・フリップの1959年製レス・ポール・カスタム

初期キング・クリムゾンの最重要ギター、ロバート・フリップの1959年製レス・ポール・カスタム

キング・クリムゾンの結成時にロバート・フリップが入手した1959年製レス・ポール・カスタムは、名盤『クリムゾン・キングの宮殿』を彩ったロック史における最重要ギターの1本だ。今回はその59年製を始め、ロバートがこれまでに手にしてきたレス・ポール・カスタムを一挙に紹介しよう。

文=細川真平 Photo by David Redfern/Redferns/Getty Images

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キング・クリムゾンのために入手した59年製

プログレッシブ・ロックを代表するバンド、キング・クリムゾンのギタリストでありリーダー(と言うよりも、この人がいなければキング・クリムゾンではないし、もっと言えばこの人がキング・クリムゾンそのものだ)、ロバート・フリップ。間違いなく天才だが、あえて“鬼才”と呼ぶほうが相応しい気にさせてしまう人物でもある。

コロナ禍に入った2020年から、妻のトーヤ・ウィルコックスとともにロック有名曲のカバーを、コスプレをするなどしてユーモラスに届ける一連の動画も投稿しており、従来のイメージとのギャップに驚きながらも、さすがロバート・フリップ……と思わせ、納得させてしまうところもまた“鬼才”ならではか。

そのロバートがキング・クリムゾン初期から使用し、彼の代名詞的な存在ともなったのがギブソン・レス・ポール・カスタムだ。

まず登場したのは、“PAF”ピックアップが3基搭載された、59年製の“ブラック・ビューティー”で、シリアル・ナンバーは“9 0993”。フロント・ピックアップのみがゼブラ仕様になっている。

このギターは、1968年11月にロンドンのシャフツベリー・アベニューの楽器店で購入したもの。クリムゾンを結成して間もない頃で、それまでギブソンES-345を使用していたロバートは、このバンドのために新たなギターを導入しようとしたようだ。

1969年7月5日にザ・ローリング・ストーンズがロンドンのハイド・パークで開催した、ブライアン・ジョーンズ追悼のためのフリー・コンサートに、レコード・デビュー前のクリムゾンがオープニング・アクトの1つとして出演したが、その際にこのカスタムを使用していることが確認できる。

この直後からクリムゾンは1stアルバム(『In the Court of the Crimson King』/1969年)のレコーディングに入るので、ロバートはそこでも、このフロント・ピックアップがゼブラの59年製カスタムを使ったと判断していいだろう。

つまり、あの「21st Century Schizoid Man」を奏でたのもこのギターだ。

ロバート・フリップが手にした、いくつかのレス・ポール・カスタム

彼は1972年にもう1本の59年製カスタムを入手したという話も伝わっている。ロンドンのデンマーク・ストリートの楽器店で購入したもので、それ以前はスティーヴ・マリオットが所有していた個体だという。だが、このギターについては情報が不足しており、詳細がわからない。

しかし、1972〜73年頃に、カバーなしで、ともにブラック・ボビンのハムバッカーを2基搭載したカスタムをロバートが使用している写真が残されている。

こちらは、ペグの形状が“ワッフルバック”であること、コントロール・ノブの形状が“ソンブレロ”であることなどから、1968年以降に再生産されたモデルだと思われる。ということは、ボディはマホガニー・バックにメイプル・トップが貼られたラミネート構造になっているはずだ(オリジナルのカスタムはオール・マホガニーだった)。

もしかしたら情報が錯綜していて、1972年に購入したと言われているカスタムは、59年製ではなくこの68年以降の再生産モデルのことかもしれない。

また彼は、57年製のカスタムも使用しており、シリアル・ナンバーは“7 8774”。

本器には、カバーが付いたままの“PAF”が3基搭載されている。カスタムに“PAF”が採用されたのが57年のことだから、その最初期モデルということになる。またペグは、この時期はクルーソン製がデフォルトだが、グローバー製に替えられている。そして、ピックガードの上にセンター・ピックアップのためのボリューム・コントロール・ノブを追加するモディファイがなされていた。

このカスタムは、1979年にリリースされたロバートのソロ・アルバム『Exposure』以降に使用されている。

ここまでロバートのレス・ポール・カスタムについて、憶測も含めてご紹介してきたが、しかし本人にとってはそんなことはどうでもいいはずで、彼はモノとしてのギターには興味がなく、あくまでも音楽表現のための道具と考えているようだ。

そもそもカスタムを(と言うよりもレス・ポール・モデルを)使用し始めたきっかけについても、“みんなが(レス・ポールは)良いと言うから試してみようと思った。流行りだったんだよ”という発言を残している。

しかしながら、彼が思い描くとおりの、緻密で、難易度が高く、複雑な音楽を、最高度に表現することを可能にしたのがレス・ポール・カスタムだったことは間違いがない。

レス・ポール・カスタムは、鬼才のための最高の武器だった。

ロバート・フリップとレス・ポール・カスタム

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