フェンダーから昨年秋に発売され、幅広いギタリストの注目を集めているHighwayシリーズ。春畑道哉もその魅力に惚れ込んだひとりで、先日行なわれたソロ・ツアーのロゴにHighwayシリーズをあしらったデザインを採用したほど。もちろんステージでもHighwayシリーズが大活躍し、豊かなサウンドで多くのファンを魅了した。そんな春畑に、Highwayシリーズとの出会いや印象などを聞いた。
取材/文=西本勲
Fender Highway Seriesとは?
伝統的なアコースティック・ギターの外観を踏襲しつつ、軽量かつ薄型のボディで快適な演奏感を実現した、フェンダー・アコースティックの新シリーズ。フィッシュマンの最新テクノロジーFluence Acousticピックアップ・システムにより、豊かな響き、トーン、ダイナミクスを余すところなく表現する。ドレッドノート・タイプとパーラー・タイプの2種類/4モデルをラインナップ。
春畑さんは昨年の11月に、Xで“コレは最高だ!”とHighwayシリーズを弾いている写真をポストしていましたね。
春畑 ちょうどいろんなアコギを手に入れて、家でも弾くことが多かったときにHighwayシリーズの存在を知ったんです。それでフェンダーのショールームで弾かせてもらったら、すごく体に馴染んで弾きやすい。そしてアンプに通すと、「こんなに自然なアコギのサウンドがアンプから出るんだ!」って本当にびっくりしました。アコギに関しては、自分に聴こえる音をそのままお客さんに届けたいと思っていつも試行錯誤しているので、すぐに「コレだ!」となったんです。
弾きやすさのポイントは、やはりボディの薄さと軽さでしょうか。
春畑 そうですね。座って弾いても立って弾いてもしっくりきます。ライブではリード・プレイがメインなので、ネックのジョイント角を調整して弦高も下げ、ゲージも細くしています。こうすると手の小さい人でもさらに弾きやすくなるし、初めてギターを手にする初心者にもすごく良いと思います。エレキの感覚で弾けるアコギですね。僕が持っているのはドレッドノート・タイプですが、邪魔にならないサイズなので、家にいるときはベッドの横に置いていて、寝っ転がって弾くこともあります(笑)。生音の大きさも、家で弾くのにちょうどいいんですよ。
ボディのトップ材が異なるNatural(シトカ・スプルース)とAll-Mahogany(マホガニー)の2種類がラインナップされています。
春畑 両方持っています。マホガニーの方が少し温かい音で、ふくよかで豊かな感じ。スプルースは明るくて抜ける音というイメージですね。今回のツアーではスプルースを使いました。
遠山哲朗(g/今回のツアーにサポート・ギタリストとして参加) 僕と春さん(春畑)とふたりでHighwayシリーズを弾く曲があって、主にバッキングを弾く僕はマホガニーを使いました。春さんはギター・アンプを鳴らして、僕はラインでメロディの帯域に被らないようなキャラクター付けをしましたね。
春畑 PAエンジニアさんにも好評でした。同じシリーズのギターなのに、全然音が被ってなくて、ちゃんとバランスが取れているって。
遠山 スプルースのシャキッとした音は、ギター・アンプで鳴らすのにも合っているなと感じました。
フィッシュマンのFluence Acousticピックアップ・システムの貢献度も高そうです。
春畑 素晴らしいですね。最初にショールームで弾いたとき、そこにあったアンプに挿して弾いただけで、もう何も触らなくていいと思ったんです。これなら調整に苦労することはないだろうなと。ダイナミクスも手元でしっかり表現できます。
先ほども、普段はアコギの音作りに試行錯誤しているという話がありましたね。
春畑 まだアコギ初心者なので(笑)。以前はとりあえずピエゾを付けてジャックを挿せばOK、みたいな感じだったんですけど、新たにプリアンプを導入したり、ピエゾとマイクの両方をバランス取って出力したりと、色々やっています。スタッフと哲朗にも手伝ってもらいながら、この帯域は無い方がスッキリするとか、それでもふくよかさは欲しいとか……ハウリングとのせめぎ合いもありますし。Highwayシリーズはほとんどハウらないので、そういう点でもすごく楽ですね。
コントロール部の効き具合いはどうですか?
春畑 いわゆるトーン・コントロールとは異なるコンター・ノブが付いているのですが、フルに近付けるとリードやメロディ向きの音になって、逆にキラキラさせたいときは絞る。このバランス感も絶妙です。
レコーディングでも使用していますか?
春畑 「Remember Me -TUBE×GACKT-」(2024年2月にリリースされたGACKTとのコラボ・シングル「サヨナラのかわりに」のカップリング曲)のサビに出てくるハーモニクスは、Highwayシリーズで弾いたものです。あの曲では、裏メロはこれ、アルペジオはこれという感じで色々なギターを試しました。
今後、Highwayシリーズをどんなふうに使っていきたいですか?
春畑 このギターでできるネタを増やして、またライブをやってみたいですね。今回のツアーでやったギター・デュオを発展させるのも面白そうだし、もちろんTUBEでも使いやすいと思います。こういうタイプのギターって、音が薄かったりチャラチャラしていて物足りなさを感じることも多いんですけど、Highwayシリーズはそこを最初からクリアしている。最初に話したとおり、本当にアコギらしい音がするので、それを活かした使い方をしていきたいですね。