次世代のモデリング・デバイス、IK MultimediaのTONEX OneをKubotyが徹底レビュー! 次世代のモデリング・デバイス、IK MultimediaのTONEX OneをKubotyが徹底レビュー!

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次世代のモデリング・デバイス、IK MultimediaのTONEX OneをKubotyが徹底レビュー!

IK Multimedia(アイケー・マルチメディア)から発売されたTONEX One(トーンエックス・ワン)は、先行しているソフトウェア版のTONEX やそのペダル版であるTONEX Pedalに続く、アンプ&歪みペダルのモデリング・デバイスだ。ここでは製品の特徴に加え、ギタリスト/プロデューサーのKubotyによるレビューを見ていこう。

Presented by フックアップ
取材・文:ギター・マガジン編集部 撮影:八島崇
*本記事はギター・マガジン2024年8月号に掲載した「PICK UP TONEX One × Kuboty」を再編集したものです。

IK Multimedia/TONEX 製品概要

IK Multimedia/TONEX One

アンプやペダルの音を正確にキャプチャーするTONEX

 最新技術でアンプやペダルの音を再現するIK MultimediaのTONEXシリーズには、Mac/Windowsで動作するソフトウェア版と、TONEX Pedal、TONEX Oneという2つのハードウェアがラインナップしている。全体の構成を理解するために、まずソフトウェア版からおさらいしていこう。

 2022年に同社からリリースされたTONEX は、アンプや歪みペダルの音響特性を解析(キャプチャー)し、いつでも呼び出すことのできるソフトウェアだ。キャプチャーには先端のAI技術を活用したAI Machine Modelingという方法が用いられており、音のリアルさや演奏フィールの自然さが大きな話題を集めた。アンプ、スピーカー・キャビネット、歪みペダルの音をキャプチャーすることができ、その単体または組み合わせで作られたプリセットは“トーン・モデル”と呼ばれる。

TONEXのトーン・モデル選択画面
▲TONEXのトーン・モデル選択画面。名機とされるアンプやペダル、またはその組み合わせがAI Machine Modelingによってキャプチャーされている。エントリー・グレードであるTONEX CSは無償ダウンロード可能なので気軽に試すことができる。

 また、リアンプ・ボックスやマイクなどの外部機器は必要になるが、自分の手持ちの機材をAI Machine Modelingでキャプチャーできることも特徴。世界各国のユーザーが参加するToneNETというフォーラムには、ユーザーが独自に作成したトーン・モデルが公開されていて、その数は2024年6月現在で3万を超える。

 TONEXはスタンドアロンのアプリとして利用できるほかプラグインとしても使えるため、様々な音色を使いながら制作を行ないたいギタリストにはうってつけのツールだ。

TONEXの音をスタジオやステージに持ち出せるTONEX One

 そのTONEXをスタジオやステージで利用できるのが、今回の主役であるTONEX Oneだ。TONEXで設定したトーン・モデルを最大20個までインストールして持ち運ぶことができ、どんな場所でも自宅と同じクオリティの音を出すことが可能となるのだ。

 先行して、3つのフット・スイッチと8つのコントロールを備えたTONEX Pedalという製品もリリースされている。こちらもTONEXの設定を持ち運ぶという、基本的な使い方は同様だ。

 プリセット切り替えや音の調整を頻繁に行なうならTONEX Pedal、ある程度決まったセッティングをコンパクトに持ち歩きたいならTONEX Oneという選択になるだろう。オーディオ部分はどちらも同じクオリティのものが備えられているので、音の違いに関しては心配無用である。

IK Multimedia
TONEX One

【スペック】
●コントロール:VOLUME/GAIN、BASS/GATE、MID/COMP、TREBLE/REVERB、ALTスイッチ
●入出力端子:インプット、アウトプット(ヘッドフォン端子としても動作)、USB-C端子
●電源:9Vアダプター
●外形寸法:48(W)×94(D)×53(H)mm
●重量:160g
●付属品:USB-C to USB-Cケーブル、TONEX SE、AmpliTube 5 SE(ソフトウェア・ライセンス)

【価格】
33,000円(税込)

【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213  http://www.hookup.co.jp

Kuboty × TONEX One 試奏レポート
「ブラインド・テストだったら、真空管アンプの音かどうか、区別がつかない!」

製品概要に続いてはKubotyによる試奏レポートをお届けしよう。この日初めてTONEXの存在を知ったというKubotyと一緒に、製品の特徴を探っていく。

Kuboty

Kuboty プロフィール

クボティ●1981年生まれ。ギタリスト/作曲家/アレンジャー/プロデューサー。2019年にTOTALFATを脱退後、MONGOL800やsyudouのライブや録音をサポート。他、乃木坂46やHYDEへの楽曲提供や、岡崎体育の編曲を行なうなど活動は多岐に渡る。

https://twitter.com/kuboty666

POINT 1:
現場では微調整だけ! 使い勝手がよく考えられている。

今回試していただくTONEX Oneは、TONEXソフトウェアの設定をそのままペダルに入れて持ち運べるんです。

Kuboty IK Multimediaは自宅録音の時にAmplitubeを愛用しているので、馴染みがあるんですよ。他社のモデリング・アンプも色々使ってきたんですけど、それがそのままステージに持ち出せたら良いなと思っていたところだったんです。

のちほど、Amplitubeとの違いについても見ていきましょう。まずはTONEX Oneの初期設定である、Fender Super Reverb、Marshall JCM 800の2台のキャプチャーを試していただきましょうか。

Kuboty 特徴をよくとらえていて、今はスタジオのモニター・スピーカーから出力していますが、気持ちよく弾けますね。昔からモデリング・アンプを使ってきて音のクオリティには苦労したこともありましたけど、出音がとても良くなってきているので時代は進んだな~と実感します。キャビネットのシミュレーションはオン/オフが可能なんですか?

IKが提供しているアンプについてはキャビネット・シミュレーターのオン/オフが可能ですし、キャビネット・モデルだけ変更することも可能です。IK独自のIR(VIR)も使えてマイクの種類やスピーカーからの距離も設定できるので、ここでもかなり緻密に音作りができますね。

Kuboty お~、その辺も今時の音作りですね。歪みが強そうなタイプをいくつか弾かせて下さい。……マーシャルのJMP100にTS808の組み合わせが好きな音ですね。メサブギーのDual Rectifierのハイゲインなセッティングも良い感じ。実機のアンプを思い浮かべながらいじると、TONEX OneのEQの効きはちょっと穏やかに感じます。

そこがTONEX の特徴の1つです。アンプの挙動そのものを再現するAmplitubeと違って、キャプチャーした際のセッティングを精巧に分析するAI Machine Modelingという技術が使われ、そのセッティング時の音を高精度に解析しています。

Kuboty なるほど、TONEXはその状態だけを徹底的に解析する感じか~。確かにTONEXのEQは、効き方がプラグインっぽくて微調整に使いやすいと思います。TONEX のソフトウェアで気に入ったセッティングを見つけて、TONEX Oneで持ち出すという使い方なら、自宅で追い込んで現場で微調整だけだから、かなり合理的ですね。ただ、ディスプレイがないから、どのアンプになっているかわかりづらいかな?

そのために、ツマミの発光色がトーン・モデルごとに自分の好きなように変えられるようになっているんですよ。

Kuboty おお、これなら一目瞭然ですね!

DIとTONEX One
▲ライブハウスなどで使う際には、本機の出力からライブハウス備え付けのDIに送り、PAまで届くことになる。ドラムのいるバンドであれば、後述のようにDIで分岐してギター・アンプに送っておくと良い。

POINT 2:
ユーザーに人気のあるトップ10のアンプはどれも良い。

インターネット上にあるToneNETという専用サイトには、全世界のユーザーがキャプチャーしたトーン・モデルがアップされています。そこからもいくつか試してみましょう。最もダウンロードされているTop 10 Most Downloadedというランキングがあるのですが、その上位の“Perfect Marshall”というトーン・モデルで、フリードマンBE100とマーシャル1960Bキャビネットの組み合わせです。

Kuboty おお、これは良いですね! 日本でも海外でも人気のアンプですが、どんな音楽でも合う歪み方だと思います。ゲインも初期設定でちょうど良い感じ。キャプチャーした人のセンスが出ますね。

ToneNET上のトーン・モデルの画面
▲ユーザーが投稿しているToneNET上のトーン・モデル。取材日時点での“Top 10 Most Downloaded”を順に試奏してみた。

人気のクリーン・アンプも入れてみましょう。Mayer Packというトーン・モデルですが、おそらくジョン・メイヤーをイメージしているようですね。

Kuboty これも人気があるのがわかります。しっかり、キャビネットを通したアンプの音がしていますね。弾き心地も十分に満足のいくものに仕上がっていると思います。アンプのセッティング自体をキャプチャーしているから、自分のギターの特性に合っているものやそうでないものを選ぶのに時間がかかるのではないかと思っていました。だけど、人気の高いものから選んでいくのがわかりやすくて間違いないと思います。トップ10に入っているものはどれも良いですね。

Kubotyさんのボードとも組み合わせてみましょう。

Kuboty ……クリーン・アンプのトーン・モデルを入れておいて、僕のペダルボードで歪みを足していくと使い勝手が良い! 自宅でアンプとペダルの組み合わせを設定するのは、防音がないから難しいですし、試行錯誤することでペダルボードの良さも引き出せますね。キャビネットによっても歪み感が変わるんで、その組み合わせもじっくり時間をかけて試してみたいな~。

ボードの最後につないだTONEX One
▲Kuboty所有のボードの最後につなぎ、TONEX Oneをアンプとして使い、ペダルとの組み合わせも試してもらった。

POINT 3:
歪みペダルとしても、実機に迫る弾き心地。

TONEX Oneはシンプルな歪みペダルとして使うこともできます。歪みペダルとしてのサウンドも試してみましょう。

Kuboty おお、これは弾き心地も音も、良い出来ですね。僕が実機で持っているエフェクターもありますが、これはブラインド・テストだったらわからないくらいに迫っていますよ。

ToneNETには、一般的なものから超マニアックなものまで、様々な歪みペダルがアップされています。

Kuboty モデル名を見ても知らないのとかがけっこうありますね。俺の秘蔵のペダルを聴いてくれ!という感じなのでしょうか。これを掘っていったら時間がいくらあっても足りませんね~(笑)。音のクオリティが高いので、自分の好みに合うものがあれば実用的です。

ペダルボード内に入れたTONEX One
▲ボードに入れるとこのようなサイズ感。バンドやセットリストによって入れ替え可能な歪みエフェクターとしても活躍するはず。

POINT 4:実機ではコントロールできないことをTONEXでは簡単にできる。

KubotyさんがTONEX Oneをライブで使うとしたら、どんな使い方になりますか?

Kuboty さっきやったみたいに、ペダルボードの最後に持ってきて、歪みは実機のペダルを使いつつTONEX Oneをアンプとして使いますね。ドラムがいる環境だったら、TONEX Oneからの信号をDIで分岐して、片方はミキサーに送ってPAさんに処理してもらい、もう片方は現場にあるJC-120やマーシャル系などの一般的なアンプに送って自分の音をモニターするのがオススメです。と言うのも、普通のライブハウスのレイアウトだと、最前列のお客さんにはバンドの音が直接届いているので、あまりメイン・モニターの音が聴こえなかったりするんですよ。その場合、ギターをラインのみにしてしまうとステージ側にはドラムの音しか聴こえない場合があるんです。ドラムがいない小編成のユニットだったら、ギター・アンプを使わずとも、モニターからの音で十分聴かせられますね。

歪みペダルとしてはどう使いたいですか?

Kuboty 僕は、ProCo RATのツマミを全部最大にした極端なセッティングが好きなんですけど……そんなセッティングも探せば投稿されているのかな?

TONEXソフトウェアでは、機材のキャプチャーが簡単にできるんですよ。その工程はリアンプとほぼ同じなので、一般的なリアンプ・ボックスとマイクがあれば誰でも自分の機材をキャプチャーして、トーン・モデルを作成することができるんです。

Kuboty そうか、自分の機材の音をキャプチャーしてしまえばいいんですね! お気に入りのペダルとアンプを良い感じにセッティングして、自宅なりスタジオなりでキャプチャーしておけば、それをソフトウェア上でも使えるし、TONEX Oneに入れて持ち出して使えると……これは便利!

 実際、気に入った音を持ち運ぶというのはすごく大変なことなんですよ。ペダルとアンプ、キャビネットを用意することはもちろん、指定のマイクで良いポイントにマイキングしないと、その音をステージで使うことはできない。しかも、アンプの前にいたらマイクを通った音がチェックできないですから、録音するか、アンプをブースに入れて別の部屋で聴くなどしないと、PAに送られている音が自分の思ったとおりになっているかジャッジができないんですよ。それがTONEXなら簡単にできてしまう。

最後にオマケとして、2台のTONEX Oneをつないで、片方をペダル、もう片方をアンプとして使ってみましょう。

Kuboty これはまた面白いですね。まだ見た目の印象と音とのギャップに脳みその処理が追いついていないですが(笑)、ディストーション・ペダルとダンブル・アンプが並んでいて、それがマイキングされてモニターから出ているということですね。すごい世の中になりました!

2台のTONEX One
▲アンプに設定されたTONEX Oneとペダルに設定されたTONEX Oneをつなげてみた。見た目はミニ・ペダル2個だが、音はディストーションをかけたハイエンド・アンプということで、Kubotyも困惑(?)。

TOTAL IMPRESSION:
曲作りに使った音を、ライブハウスに持っていけるのが素晴らしい!

最後にTONEX Oneの全体的な印象をお聞かせ下さい。

Kuboty ToneNETのライブラリーが膨大で試しきれない部分がありましたが、もっと試してみたいと思えるポテンシャルがありますね。で、TONEXソフトウェアで気に入ったものがこのサイズで持ち運べるのが良い。僕は今、自宅での制作の仕事が多いんですよ。ギターも自宅で録音してデータで納品して。その音をライブで再現するのって難しいんですが、このTONEXならそのまま持っていけますね。

アナログ派の人にとってはどうですか?

Kuboty アナログ派の人がブラインド・テストしても、実機との区別がつかないほどのクオリティだと思いますよ。真空管アンプで録音したと思ったら、TONEXだったということは普通にありそうです。使い勝手としては、やはりパソコンがあると圧倒的にポテンシャルを引き出せますが、トーン・モデルをソフトウェアからドラッグ&ドロップするだけですから操作も簡単!

頻繁にバンド活動をしている人には嬉しいサイズ感ですよね。

Kuboty 公共の交通機関で移動するエコロジー系ギタリストには特にオススメです。車がないとアンプの持ち運びは厳しいですし、フロア・タイプのマルチも意外と重いので、TONEX Oneの手のひらサイズは革命ですね。曲作りに使った音を、そのままライブハウスに持っていけるというのは本当に素晴らしいです。

ToneNETというコミュニティがあるのも面白い点ですね。

Kuboty 自慢の機材がある方には、キャプチャーに挑戦してアップデートしてもらいたいですね。僕がダウンロードしますんで! 希望としては、超レアなダンブルとか、状態の良い古いマーシャルなんかをぜひお願いします(笑)!!

Kuboty
Kuboty

ギター・マガジン2024年8月号

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