毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回はバディ・ガイのオススメ盤を5枚紹介。まずはこれらを聴くべし!
選・文=久保木靖
バディ・ガイ(Buddy Guy) オススメ盤5選〜まずはこれを聴くべし!〜
❶バディ・ガイ
『I Was Walking Through The Woods』
(1970年/Chess)
チェスに残された1960年代前半の名演集にして、絶対的な必聴盤! 異様にテンションの高いスロー・ブルース「Stone Crazy」や「First Time I Met The Blues」はバディ・スタイルの象徴で、特にギター・プレイに関しては、音使いはB.B.キングの影響が強いものの、表現は流麗なB.B.とは真逆な感情的なもの。はち切れんばかりのエナジーとソリッド・ギターによる鋭利なトーンは、もはやブルース・ロック的だ。「No Lie」ではマイルス・デイヴィスの「All Blues」のリフがアレンジに使われている。また、「Let Me Love You Baby」はジェフ・ベックが『Truth』(1968年)でリメイク。
❷ジュニア・ウェルズ
『Hoodoo Man Blues』
(1965年/Delmark)
ジュニア・ウェルズ(harp)の初リーダー作であると同時に、ブルース界屈指の名コンビによる初作。「Ships On The Ocean」など、ウェルズのおどろおどろしいボーカルに触発され、バディの陰湿(!?)な面があらわになっているが、そんな不気味さを楽しむのが正しい聴き方だ(笑)。テンポが速い曲でもバディのミュート・プレイが不穏さを醸している。ちなみに、契約の都合でバディは“Friendly Chap”という変名で参加。ロリー・ギャラガーが取り上げた「Messin’ With The Kid」が収録された同時期録音の名コンピ『Chicago/The Blues/Today! Vol.1』(1966年)もオススメ。
❸バディ・ガイ
『This Is Buddy Guy!』
(1968年/Vanguard)
ヴァンガード移籍後の2作目にして、初のライブ・アルバム。十八番のスロー・ブルースはもちろん、メンターであるギター・スリム、ジャズ・シンガーのペギー・リー、ソウル・シンガーのエディ・フロイドなどと選曲が幅広く、そのいずれもがハイ・テンションで、こんな楽しい(けど疲れそうな)ライブはおそらくほかにはない! ジミヘンも真っ青の制御不能といった様子のギターも随所で炸裂しており、特に「I Had A Dream Last Night」での壊れっぷりは凄まじい。テナー・サックスはのちにアルバート・コリンズらと共演するシカゴNo.1のA.C.リードだ。
❹バディ・ガイ
『Stone Crazy!』
(1979年/Alligator)
前掲の『This Is Buddy Guy!』に輪をかけて鬼気迫るテンションなのが、このフランス録音盤だ。全6曲中4曲がスロー・ブルースで、切羽詰まって追い込まれたようなボーカルと、そこから一転、苛め抜くかのように弾き倒されるギター……この“慟哭”が聴き手の胸をこれでもかと圧迫する。ギター・プレイは単に感情的なだけでなく、ロックに直接影響を与えた技も満載だ。権利の問題で曲名が変更されているが、「Are You Losing Your Mind」がアルバム・タイトルの「Stone Crazy」である。
❺バディ・ガイ
『Damn Right, I’ve Got The Blues』
(1991年/Silvertone)
1980年代の活動鈍化に終止符を打った復帰作。曲もプレイもロック的だが、これはバディがロックへすり寄ったわけではなく、さまざまな音楽を吸収してきた彼のスタイルであり、だからこそ1990年代でも受け入れられた。ジェフ・ベックやエリック・クラプトンらが華を添えたことでセールス面でも成功を収め、グラミーも受賞。ボトルネック奏法かと耳を疑うダイナミックなチョーキング、スタッカートでピッキングしながらのチョーク・ダウンなど得意技もてんこ盛り。「Rememberin’ Stevie」はレコーディング直前に亡くなったレイ・ヴォーンに捧げられたインストだ。