ダフト・パンクが教えてくれたギターの魅力。 ダフト・パンクが教えてくれたギターの魅力。

ダフト・パンクが教えてくれたギターの魅力。

ダフト・パンクが解散を発表。めちゃくちゃ悲しい……。でも、あのビデオを観て、“最後までクリエイティブな表現をありがとう”と感謝の気持ちが込み上げてきた。ギタマガでは『Random Access Memories』がグラミーを受賞した際にナイル・ロジャースにインタビューしたくらいで、なかなか取り扱うジャンルではなかったが、これを機に彼らとギターの関係を探っていきたい。ぜひギターが活躍する彼らの楽曲をまとめたプレイリストを聴きながら読んでほしい。

文/選曲=編集部 Photo by Michael Putland/Getty Images


ギターのサンプリング

まず、1st作品『Homework』は完全なるギターレス。彼らの楽曲でギター・サウンドが鳴り始めたのは2nd作品『Discovery』からだ。

ヒット曲「One More Time」や「Harder Better Faster Stronger」などがフィーチャーされがちだが、ギター的に注目したいのは「Digital Love」と「Aerodynamic」の2曲。

「Digital Love」はジョージ・デュークの「I Love You More」(『Master Of The Game』収録/1979年)のカッティング・リフをサンプリング。ネタ元のギターはデヴィッド・マイルズ(同名のカントリー/フォーク系ギタリストとは別人)が弾いている。

一方、「Aerodynamic」はシスター・スレッジの「II Macquillage Lady」(『The Sisters』収録/1981年)がトラックのベースにありつつ、間奏ではなんとギター・ソロが入る。ディストーションをがっつりかけたタッピングで、ヘヴィなサウンドとテクノを融合。このタッピングはシーケンスな音運びで、なるほどEVH流ライトハンドはシンセっぽいイメージで使えばエレクトロ・ミュージックとの相性も良いのだ、と気づかせてくれた。

ダフト・パンクによる演奏

そして3rd作『Human After All』では、ギターも自ら演奏することに。名曲「Robot Rock」では、ファズのリフが途中で“ロボット・ロック”と歌う、めちゃくちゃオシャレなアプローチが聴ける。彼らのボコーダーによる歌のイメージがあってこそ、ギターのトーキング・モジュレーター・サウンドがここまでフックになるのだと思う。アタック部分を調整し、ある種のギターらしさを排除しているのも意識的なものだろう。

同じくトーキング・モジュレーターを使用したタイトル曲「Human After All」、単音リフがミニマル・グルーヴを生む「Make Love」など、シンプルながら印象的なギターの使い方が非常にタメになる。

ギターの新たな調理法

最後は『Random Access Memomries』。これはディスコ・リバイバルの発火点であり、その後のブルーノ・マーズとマーク・ロンソンの「Uptown Funk」、果てはBTSの「Dynamite」にまで影響を残していることに異論はないだろう。

「Give Life Back to Music」で70年代ロックっぽい煽りをスパイスに、ダンス・ミュージックにつなげる見事な演出を聴かせ、ナイル・ロジャースをフィーチャーした「Get Lucky」で、ソウル、ディスコ、エレクトロ・ミュージックを最高の形で融合した。その「Get Lucky」についてナイル・ロジャースが語ったインタビュー動画を、ここに掲載しておこう。

「The Game Of Love」や「Beyond」でのポール・ジャクソンJr.の職人的プレイも聴きどころ。サウンドはストレートなソウル/ディスコ・サウンドだが、配置の妙でまったく新しい響きを持たせていると感じる。

ダフト・パンクが参加したザ・ウィークエンドの「I Feel It Coming」(『Starboy』収録/2016年)でもポール・ジャクソンJr.がギターを弾いている。彼らとポールの信頼関係も興味深い。

ダフト・パンク楽曲で聴けるギターはどれも、真新しい音運びかと問われるとそうでもない。ただ、サウンド・メイクやミックス処理、アンサンブル上の配置、味付けとしてのトリッキーな使い方で、常に最先端のものとして僕らの耳に届いた。

2000年代にはギター不要説が叫ばれていたが、別にギターという楽器が古くなっていたわけではないのだ。その時代の流行のサウンドに合わせたギターの使い方に答えが見つからない時期が続いただけで、ダフト・パンクはその魅力的な解決方法を提示してくれたのだと思う。今、ポップ・ミュージックの最前線でギターが鳴り響いているのは、彼らの影響によるところも大きいはずだ。