【前編】鈴木迅(Laura day romance)が語る、『合歓る – bridges』での自由な楽曲制作と自身のギター観 【前編】鈴木迅(Laura day romance)が語る、『合歓る – bridges』での自由な楽曲制作と自身のギター観

【前編】鈴木迅(Laura day romance)が語る、『合歓る – bridges』での自由な楽曲制作と自身のギター観

2025年12月24日(水)にアルバム『合歓る – bridges』をリリースしたLaura day romance。本作は、2月に発表した『合歓る – walls』と連なる2部作の後編となる。すべての楽曲の制作を手がける鈴木迅(g)が、“やりたいことにストップをかけず全部詰め込んだ”と語るとおり、そのアレンジやサウンドはどこまでも自由で、特にギターに関しては不穏なノイズあり、メロディアスなアコギあり、壮大なサウンドスケープありという、正真正銘のギター・アルバムとなっている。ギター・マガジン初登場となる彼に、アルバム制作の裏側はもちろん、ギターとの向き合い方について話を聞いた。

取材・文=小林弘昂

鈴木迅

ギターという楽器の面白さみたいなところは
最近改めて感じています。

ギタマガ初登場となりますので、まずはギターを始めたキッカケから教えていただけますか?

自分が小学5、6年生くらいの時、兄がYUIさんをすごく好きだったんです。たしか当時のYUIさんのシングルは、1つ前のシングル曲のアコースティック・バージョンがカップリングで入っていたんですよね。それを兄がどうしても弾きたかったらしく、家にあった父親のギターを借りていたんですけど、3日くらいで飽きて(笑)。そのあと自分が暇だったのでギターを触っていたら、父親から“ギター教室行くか?”と言われて、教室に通ったりしていました。

プレイ・スタイルで影響を受けた人は?

このバンドをやる前はセッションっぽいプレーヤーが好きだったんですよ。セッションっぽいと言っても、あくまでロックの人がやるセッションで、当時はジョン・フルシアンテが好きでしたね。自分で音源を作るようになってからはブラーのグレアム・コクソンが好きになりました。あとはプリンスとかジミヘンとか、ソング・ライターのギターがすごく好きなんです。

ソング・ライターが弾くギターですか。

ギター・ヒーロー然とした人よりは、楽曲のことを想っている人というか。例えばウィルコのジェフ・トゥイーディーみたいに、歌う人のギターが好きなんですよ。ジミヘンはギター・ヒーローですけど、最初はまず何よりも曲が良いなと思いました。そのうえで弾いているギターが好きなので、曲の良い人が好きなんですよね。グレアムも曲を良くしてくれているギタリストっていう感じがしますし。

Laura day romanceは音源をリリースするごとに、楽曲の中でギターが占める割合が減っていますよね。迅さんのギターの立ち位置はどう考えていますか?

たしかにそうですよね。バンド・ミュージックが好きな時もあれば、トラップとかヒップホップとかハウスとか、その時々で自分の中で流行っているものが中心にくるんですよ。だからギターはそのあとなんですよね。自分はソング・ライティングが先にくるタイプだと思うので、曲にギターが必要なかったら必要ないですし。でも、ギターという楽器の面白さみたいなところは最近改めて感じています。

例えばどういうところですか?

ギターの特異性じゃないですけど、いろいろと理にかなってない設計の部分とかもあったりして、それが楽曲に反映されていると思いますね。ギターから作曲を始めることも多いので、楽曲にいびつな光をもたらしている感じがします。それが自分の個性になってるかな。

前作『合歓る – walls』が発売されたのが今年の2月で、その時点で後編の今作『合歓る – bridges』がリリースされることがアナウンスされていました。10ヵ月もインターバルを設けた理由は?

単純に時間をかけてアルバムを完成させたかったんです。曲はアルバム2枚分あったんですけど、RECは別のスケジュールだったんですよ。まずは1枚作って、それを自分が客観視してみて、その次にどう進みたいかと考えたんですね。なので20曲あってスタートしたというよりかは、10曲できて、“次の10曲をどうしようかな?”と思い直す期間でした。なんとなく“この曲は入るだろうな”とかは思っていましたけど。あとは、もっと攻めようと思って。

今作のアプローチは攻め攻めでしたね。

自分的には前編でいろんな挑戦をしたんですけど、今振り返ってみると、そこまで自分たちの好きな部分とか良い部分を踏まえてものづくりをしていなかったというか……。良くも悪くも、そんなに危なくない作品だなって思ったんですね。それで後編はもっと危ないアルバムを作りました(笑)。

2作で20曲という迅さんの楽曲制作のスピード感や制作欲って、どんなところからきているんですか?

自分が好きな作品って、作り手が追い込まれて作ったものが多くて(笑)。そういうものへ憧れとかですかね。自分に負荷をかけて、とてつもなく良いものができる……それにすごく魅力を感じるというか。自分にしか作れないバランスの価値観のものを提示したいし、そういうものが広がって、より面白いものをほかの人に返してもらいたいと思っているんでしょうね。作りたいものがあることがすごく幸せです。

作曲はギターで行なったんですか?

楽器の中で一番得意なのはギターなので、ギターから作ることが多いかな。でも今作の後半からはパソコンを導入してDTMでいろいろ作業するようになったので、それが大きかったですね。DTMを通してピアノのちょっとしたコードだったり、リズム・パターンだったり、シンセの音色からも曲を作れるようになったので、今後はギター以外から作っていく曲も増えると思います。

今作は1曲の中で展開がガラッと変わる楽曲が多い印象でした。

重々の内容にしたかったんですけど、前編のアルバムが10曲だったこともあって、このアルバムも10曲にしようと思っていたんですよ。なので今回は1曲1曲の満足度を意識しました。自分は“これで終わったらつまんないな”とか思うタイプの人間なので、サプライズ精神じゃないですけど、“ここでこっちに行って、さらにこう行くんだ!”みたいに驚かしたうえで、“これが正解だ!”と思わせたいんです。いつもだったらそういうアレンジは止めているんですけど、今回は“止めるか/進むか”の2択で迷った時は進もうと決めていたので、ビックリする展開が多くなっています。

おもにサウンド面の斬新なアプローチが耳を惹きつけますが、Laura day romanceにおけるボーカルの立ち位置はどう考えていますか?

自分は音楽好きの方だけに向けて音楽をしているわけではないというか。いろんなところでよく言うんですけど、あわよくば、おじいちゃん、おばあちゃん、子供たちにも“良いな”と思われたくて。

なるほど。

言葉は誰でも持っているものだし、誰でもすぐに再現できるものじゃないですか? ポップネスという意味では、楽器の演奏のすごさよりも、歌が一番リスナーとつながれるところですよね。自分はそういう領域に微妙に毒を混ぜる仕事をしています(笑)。毒の味を知ってもらうためにロック・ギターを入れていて、それが良いスパイスになればいいなと思いますね。自分が中心に行きたいとはあんまり考えてないです。

ポップスとオルタナティブの割合を常に考えているという。

それはこのバンドで一番大事なことかなと思います。

ギターのトラック数が本当に多くて
エンジニアの方によく絶句されています(笑)。

ここからは各楽曲のお話も聞かせてください。「何光年?|how far…?」はスプリング・リバーブ、グリッチ、アコギなどが入っていて、ギター・サウンドが満載ですね。

良いですね、めっちゃギタマガですね(笑)! 『ツイン・ピークス』っていうドラマ・シリーズがあって、その劇伴に使われているスプリング・リバーブがすごく好きなんですよ。それを取り入れたいなと思っていたので、“『ツイン・ピークス』のスプリング・リバーブの感じにしたいです”ということをエンジニアの方に伝えました(笑)。自分の中でのサウンドのイメージとして、ちょっと古臭いテレビとか、安っぽいSFみたいなものがあって、こういう音選びになりましたね。

この曲の後半で聴こえるスライドにはピッチ・シフターをかけていますか?

スライド・ギターを何本か重ねたうえで、Logic Pro内でWhammyのエフェクトをかけました。

迅さんは1曲の中でギターを何本も重ねていますよね。

ギターのトラック数が本当に多くて、エンジニアの方によく絶句されています(笑)。ミックスでほぼ聴こえていない音も録ってるんですけど、自分にとってはギターが一番そういう音を作りやすい楽器なんですよね。

「ライター|lighter」のAメロにはリバース・ディレイやボリューム・スウェルのようなエフェクトが入っています。

これはギターじゃなくてシンセですね。ギターとシンセの音の境界が一番微妙なバンドかもしれないです(笑)。レコーディングではけっこうシンセを使っていて、響きが物足りない時にはボリューム・ペダルを追加したりもしているんですよね。この“フワ〜”っていう部分は、ライブだとギターでボリューム・ペダルを使っています。

レコーディングが進んで楽曲の全体像が見えてきた時、ギターの音を追加、または変更したいということはありますか?

基本的にギターを録る段階では、“これ以上削れないし、これ以上足したくない”というところまでフレーズを作るので、いざ録ってみて満足いかないと思うことはないですね。

なるほど。「ライター|lighter」の2番ですが、右chに単音ミュート、左chにカッティングが入ってきます。これは最初から考えていたアレンジですか?

そうですね。こういう曲だとギターのバッキングってアレンジの面積を取るんですよ。なので面積を最小限にしつつ、ギターの手触りやテクスチャーは欲しかったので、ストイックな動きの単音フレーズを2本重ねています。この手法はよくやっていて、「ライター|lighter」の2Aはまさにこれですよね。

不思議に思ったギターのアレンジがあって、2番サビにディストーションを効かせたコード・ストロークが1発だけ入っているんです。普通はもっと入れようとしてしまいますが、なぜ1回だけに抑えたのでしょうか?

アンサンブルの中に溶けてますけど、実はそこでリピートをすごく延ばしたディレイを薄っすらかけていて、残り香が曲の最後まであるんですよ。サビ頭の“ジャカジャーン”が残り続けているので、“そこでインパクトを作れたら1回で大丈夫”という判断をしたんだと思いますね(笑)。

「ライター|lighter」に関しては削ぎ落とし系のアレンジというか、“少ない要素や残っている雰囲気だけで成立させる”のがテーマだったので、ギターはわりとストイックなアレンジになっているかなと思います。

作品データ

『合歓る – bridges』
Laura day romance

ポニーキャニオン
PCCA-06451
2025年12月24日リリース

―Track List―

01. 何光年?|how far…?
02. ライター|lighter
03. 分かってる知ってる|yes, I know
04. プラトニック|platonic
05. ランニング・イン・ザ・ダーク|running in the dark
06. 肌と雨|skin and rain
07. 恋人へ|Koibitoe
08. making a bridge|橋を架ける
09. orange and white|白と橙
10. 後味悪いや|sour

―Guitarist―

鈴木迅