ギタリストなら絶対に聴くべきモダン・ジャズの名盤40(1/4) ギタリストなら絶対に聴くべきモダン・ジャズの名盤40(1/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
モダン・ジャズの名盤40(1/4)

『ギタリストなら絶対に聴くべき名盤40』の5つ目のテーマはモダン・ジャズ! 初回はまずジョニー・スミス、タル・ファーロウハーブ・エリスバーニー・ケッセルチャーリー・バードジミー・レイニーらが1950〜70年代に残した10枚のアルバムを紹介します。

文・選盤=久保木靖

Johnny Smith
『Moonlight In Vermont』

●リリース:1956年
●ギタリスト:ジョニー・スミス

テクが際立つコード・メロディ

ベンチャーズで有名な「Walk Don’t Run」の作者であり、ギブソンやヘリテージで知られたジョニー・スミス・モデルの考案者による1st(録音は52〜53年)。特徴であるシングル・ノートによるヒルビリー風味の速いパッセージと、オルガン奏法を参考にしたというムード満点のコード・メロディが凝縮されている。「Walk〜」の初演は『Moods』(56年)で。

Tal Farlow
『The Swinging Guitar Of Tal Farlow』

●リリース:1957年
●ギタリスト:タル・ファーロウ

“元祖速弾き”による音の洪水 

指板に絡みつく大きな手から“オクトパス・ハンド”と称される名手のトリオ作。チャーリー・パーカー作「Yardbird Suite」のこなし具合といい、“これぞビ・バップ・スタイルの最高峰”というプレイのオンパレードだ。ギブソンES-350から放たれる太く硬質なトーンで、激流を下るかのようなライン取りはスリリングこのうえない。バッキング時の生音刻みも気持ちいい!

Tal Farlow
『This Is Tal Farlow』 

●リリース:1958年
●ギタリスト:タル・ファーロウ

ハード・ドライビングの傑作

超絶テクニックとハード・ドライビングがピークに達したカルテット作。ぶっ速いテンポの大スタンダード「Stella By Starlight」、「All The Things〜」では、シンプルに歌い上げるテーマと、突進&急反転で予測不可なアドリブが好対照を成す。スローの「How Long〜」では十八番の人工ハーモニクスを駆使したソロも。絶頂にあったこの1年後、タルは一時引退へ。

Herb Ellis
『Nothing But The Blues』

●リリース:1957年
●ギタリスト:ハーブ・エリス

泣く子も黙る、全曲ブルース!

全曲ブルース(もしくはそれに類するタイプ)で占められた2nd作。と言っても、鼻にかかったようなトーンが醸し出すのはダークさではなく、カラッとしたカントリー・テイスト。この時代のジャズ・ギタリストにしてはチョーキングが多いのも特徴だ。時折聴こえるチャカポコしたパーカッシヴ音は、エリスがネックを叩いて出している。愛器はES-175だ。

The Oscar Peterson Trio With Herb Ellis
『Hello Herbie』

●リリース:1970年
●ギタリスト: ハーブ・エリス

直情的なグルーヴは唯一無二

オスカー・ピーターソン・トリオのメンバーだったエリスが元ボスにフィーチャーされた快作。見せ場は「Naptown Blues」と「Seven Come Eleven」で、ともにアップテンポをものともせず、グルーヴを強調する直情的なフレーズをこれでもかとくり出す。ピーターソン時代では『At The Stratford Shakespearean Festival』(1956年)もオススメ。

The Poll Winners
『Ride Again!』

●リリース:1958年
●ギタリスト:バーニー・ケッセル

ギター・トリオ編成のバイブル

ギター・トリオ(ギター、ベース、ドラム)編成を世に知らしめたのがポール・ウィナーズで、本作はその2nd。チョーキングを交えてグイグイと突き上げてくるシングル・ラインやビッグバンドを彷彿するコード・ソロなど、ケッセルのガッツあるプレイに耳が釘付けになること必至。ビールのCMでお馴染みの「Volare」はこのユニットの代名詞的ナンバーだ。

Barney Kessel
『On Fire』

●リリース:1965年
●ギタリスト:バーニー・ケッセル

桁外れのドライブ感を体験せよ

同じギター・トリオでも、ポール・ウィナーズが三者対等だったのに対し、こちらはケッセルの独壇場。燃え上がるようなジャケのごとく桁外れのドライブ感に圧倒されるが、それに一役も二役も買っているのがスウィープ・ピッキングの雨あられ! ブルース進行と循環のサビが合体した「Slow Burn」や急速調ボサ・ノヴァ「Recado Bossa Nova」がハイライト。

Charlie Byrd
『Blues Sonata』

●リリース:1962年
●ギタリスト:チャーリー・バード

不思議なブルージィ・テイスト

クラシック・ギター奏法でなければ表現しきれない音の動きやボイシングで独自の世界を作り上げたガット名手の傑作。とは言え、チャーリー・クリスチャンやジャンゴ・ラインハルトの延長線上にいるストレートアヘッドなギタリストだ。「Polonaise Pour Pietro」で聴ける不思議なブルージィ・テイストは真骨頂。アルバム後半ではエレクトリックも登場。

Jimmy Raney
『Visits Paris』

●リリース:1958年
●ギタリスト:ジミー・レイニー

クール・スタイルの決定盤!

エネルギーを外に向かって激しく発散するビ・バップに対し、内向的に青白い炎を燃やす“クール”なスタイルでのし上がったのがレイニー。欧州を訪れた際のインパクトがあまりに大きく、現地ギタリストが皆フォロワーに。本作はその1954年の録音だ。カウンター・ラインの活かし方、思索的なメロディ・ラインなど、イマジネーション溢れるプレイにうっとり。

V.A.
『The Fourmost Guitars』

●リリース:1956年
●ギタリスト:ジミー・レイニー、チャック・ウェイン、ジョー・ピューマ、ディック・ガルシア

クール派のレア・コンピ盤

 “クール派” 4人が集結した好企画盤。各々のグループを率いるレイニーとウェインは、テーマを奏でる管楽器に対してカウンター・ラインで仕掛けるが、一方、同じグループのピューマとガルシアは2本のギターのハーモナイズにこだわりを見せるなど、それぞれのハーモニーに対する意識の違いが面白い。「Li’l Basses」ではピューマ得意の中低音域プレイが炸裂。

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*本記事はギター・マガジン2021年5月号にも掲載しています。

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