ギルド・ギターズの誕生から現在までをふり返る短期連載『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』の完結を記念し、YouTuber/音楽評論家のみの、ギタリストの関口シンゴを迎えたスピンオフ・イベントが2026年9月に開催された。ギルドにまつわる名演を聴き、その魅力を語るというこのマニアックなイベントの模様をレポート使用。
写真/文=編集部
去る2026年9月26日、Yamaha Sound Crossing Shibuyaにて、ギルド・ギターにまつわる名盤を聴きながらその魅力を語るリスニング&トーク・イベント、“Guild Guitars Japan × ギター・マガジン presents 今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史 名盤を聴く、語る、奏でる。”が開催された。
第一部:みの × ギター・マガジン
第一部のゲストは、YouTuber/音楽評論家の“みの”。ステージに登壇すると、司会進行を務めた編集部とともに本誌2024年4月号でギルドの試奏企画を振り返り、“野趣あふれるというか、「ワルい」音の印象ですね”など、ギルド・ギターの印象を語ってくれた。
Ernest Ranglin「Green Dolphin Street」(1965)
1曲目はスカ/ロック・ステディのレジェンド・ギタリスト、アーネスト・ラングリンのジャズ期を収めた『Guitar in Ernest』(1965年)から「Green Dolphin Street」をピックアップ。ジャケでもラングリンが手にしている、T-100D Slim Jimが使われたと思われる1曲だ。
ES-175やSuper 400などのフル・デプスのボディが主流だった当時のジャズ・シーンにおいて、ギルドのシン・ボディのT-100Dを選んでいる点について、“ほかのジャンルに向かっている人の楽器の選択なのかもしれませんね。リズムの感覚もレゲエに向かう感じがありますね。しかし1曲目がスカ/ロック・ステディ以前のジャマイカのギタリスト……たぶん音楽オタク検定だったら、偏差値70くらいですよ(笑)。”とみの。
Melvin Sparks「Texas Twister」(1973)
続いてはメルヴィン・スパークスの『Texas Twister』(1973年)より表題曲の「Texas Twister」。ジャケの裏には“Melvin Sparks plays a guild guitar with the tri-oct attachment”と書いてあり、本作ではギルドのオクターブ・ジェネレーターであるTri-Octも使われているという。ジャケットで手にしているのは、X-175Bと思われるブロンド・フィニッシュのフルアコ・モデルだ。
音源を聴きながら、“少し思ったのは、ミーターズのようなセカンド・ライン・ファンクっぽい雰囲気がありますよね。メルヴィンはテキサスで、ニューオーリンズから少し距離はありますけど、同じ南部で同時期にそういう方向に向かっていったのかなって。あと、これはオクターブは鳴ってないですよね? 何の曲で使われているのかも気になります。アーネスト・ラングリンと比べると、オクターブ奏法の際にツヤ感があって、大きいボディのギターという印象は感じます”と語ってくれた。
Robert Jr. Lockwood「Little Queen Of Spades」(1977)
次はロバート・ジョンソンの義理の息子としても知られる、ロバート・ジュニア・ロックウッドが12弦ギターをフィーチャーして作った『Does 12』。妻のアニーがプレゼントしたというStarfire XIIが使われている。チョイスされた楽曲は、ロバート・ジョンソンの「Little Queen Of Spades」だ。
ギルドの12弦ギターとブルースとの相性について問われると、“少し語弊があるかもしれませんが、ある時期以降のブルースと12弦は相性が悪い気がするんです。チョーキングが難しかったりしますし、エレキ・ブルースだと単音でのプレイも増えてくる。でも、デルタ・ブルースのようなスタイルとかでは映える気がするんです。レッド・ベリーとかも12弦を使っていたり、(高音弦側を追加した)9弦を使うブルースマンもいて、それをそのままエレクトリック化したようなこういうスタイルでの12弦の採用は、すごく素敵なアプローチだと思います”と深い考察を披露してくれた。
Al Di Meola「Norwegian Wood」(2020)
ビートルズ好きのみのと聴きたいと、編集部がチョイスしたアル・ディ・メオラのビートルズ・カバー・アルバム『Across The Universe』からは、ギルドの12弦アコギを使った「Norwegian Wood」をピックアップ。ガット・ギター、6弦のアコギに加え、ギルドのFシェイプの12弦モデルが使われている。
音を聴きながらまず、“カッコ良い! よりインド成分に接近したような印象です。”とみの。“ビートルズの原曲はジョージ・ハリスンがシタールを弾いていますが、シタールは復弦があって倍音が鳴るように設計されているんですよね。その質感を12弦ギターで表現するというのは、西洋的な楽器ですけど理に適っているアプローチかとは思います”と、アンサンブル構築に関する考察も聞かせてくれた。
また以前にギタマガの企画でも弾いてもらったギルドの12弦について、“僕はめちゃくちゃ好きですね。12弦で選択肢が限られる中で、ギルドの12弦には第一候補になり得るストレートさがある気がするんです”と印象を語ってくれた。
John Denver「Take Me Home, Country Roads」(1971)
第一部の最後は、ギルド・アコースティックを語るうえでははずせないジョン・デンバーの、名曲「Take Me Home, Country Roads」をセレクト。オリジナル・バージョンが収録された『Poems, Prayers & Promises』のジャケでは、おそらくF-212XLと思われる1本を手にしている。
みのは“ジョン・デンバーはギルドのイメージがありますよね。いやぁ〜、良い曲だなぁ。ドラムもオカズとかもなくシンプルで、ギターもアルペジオっていうだけで、こんなにも心が温かくなれる。で、ここまでの楽曲の中ではド直球のギルドの使い方ですよね。僕がギルドのギターを弾いてきた中で感じた、ストレートさが一番出ている感じがします”と語った。

第二部:関口シンゴ × みの × ギター・マガジン
第二部は“アーティストの耳にはギルドの音がどう聴こえるのか”という視点を主題に、第一部に引き続きみのにも登壇してもらいながら、ゲストに関口シンゴが登場。第一部の時からステージ上にセッティングされていた、PolaraとビンテージのX-175は関口の愛器で、まずはX-175について話を聞く。
“これは20年以上前に買ったんですけど、リペアでお世話になっていたショップの壁にかかっていたギターだったんです。当時ジャズをやりたいと思い始めた時に、フルアコでしょう、と。でも人と同じものは使いたくないと思って、このギターを選んだんです。周りはギブソンやジョージ・ベンソン・モデルとか、小ぶりで使いやすいものを使っている人が多かったので、どこに持っていっても「なにこれ! デカ!」って言われましたね(笑)。見た目はふくよかな音が出そうですけど、意外とアタックがバンって出るんです。自分もジャズから入ったわけではないので、そこがフィットした感じはありました”と語ってくれた。

Larry Carlton「Blues Bird」(1982)
第二部はラリー・カールトンの「Blues Bird」からスタート。ギルドのM-75 Blues Birdで演奏され、モデル名がそのままタイトルとなった1曲だ。
カールトンの代名詞であるES-335のサウンドとの違いについて関口に聞くと、“丸過ぎないですよね。ちょっとエッジが出ている感じがあります。それが気に入って曲名にまでしちゃったということですね”。みのも“ミスター335のささやかな抵抗というか、それ以外の音を出したいという気持ちを感じますね”と語る。
さらに関口から“ギルドの美味しいところが出ている気がします。弱く弾くと滑らかなトーンなんだけど、強くピッキングした時の「ギャッ」っていう質感をうまく使っている印象がありますね”とプレイヤー視点のコメントも聞けた。
Buddy Guy「The Things I Used to Do」(1968)
2曲目はバディ・ガイの1968年のライブ盤『This is Buddy Guy!』から「The Things I Used to Do」をチョイス。1967年のニューポート・フォーク・フェスティバルに出演した際にギルドからプレゼントされたというStarfire IVをジャケで抱えている1枚だ。
関口も“ちょっと太さを感じますね。バディ・ガイと言うとストラトのカリッカリな音という印象がありますが、これはそのエッジはありつつも太いですね”と第一印象を語る。
みのは“チョーキングは出るんですけど、今のところ少ないですよね。ストラトだと.008〜の弦を使っていたりすると思うんですけど、それを封印した感触がありますね。もしかすると弦も太いかもしれない”と鋭く指摘。
John Mayer「Come When I Call」(2008)
続いてはジョン・メイヤーのライブ名盤『Where The Light Is』から、ギルドのStarfire IVをプレイした「Come When I Call」。トリオ・セットでピノ・パラディーノ(b)、スティーヴ・ジョーダン(d)ということにも“メンバーもヤバすぎる”とみの、“ヤバいですよね。僕もめっちゃ聴きました”と関口。
音源が流れ始めてすぐ、“うまっ……うまいなぁ、この人”とみの。ソロを聴き終えて、関口も“ジョン・メイヤー何歳ですか? うますぎて、これでやる気をなくしたギタリスト、めっちゃいると思います”。
ギルドのStarfire VIを弾いているジョン・メイヤーの相性についてみのは、“ジョンはストラト的なイディオムの人だと思うんですけど、ギルドを弾くこの曲はそれがなくなって、一気にT-ボーン・ウォーカーとかルーツ系の感じにいっている気がして。そっちもいけるんだって”。さらに、“B.B.キングのような感じも出ましたよね”という関口のコメントを受け、“細かいですけど、B.B.的な高音のフレーズもオクターブで弾いていて、3%くらいジャズが入っている感じがしました”と分析のマニアックさに拍車がかかる。
関口は“このライブはアコースティック、バンド、トリオの3部に分かれていて、このトリオ編成ではスーツでキメているんですよね。そこにギルドっていうチョイスは粋じゃないですか。プレイも少しジャジィさがあって、「狙っているな!」って感じも含めて大好きですね”と、ジョンの視点も推察した感想を聞かせてくれた。
George Benson「No Sooner Said This Done」(1974)
最後はジョージ・ベンソンの『Bad Benson』から、「No Sooner Said This Done」。ジャケでは12弦のStarfire XIIを手にしているが演奏は6弦で、おそらく自身のシグネチャー・モデルによるプレイだと思われる1曲だ。
フィル・アップチャーチ(g)、ロン・カーター(b)、スティーヴ・ガッド(d)のバックにも耳を奪われる2人。当時のギルド・ギターとジョージ・ベンソンとの相性について関口は“瑞々しさを感じるかな。若さもあると思いますが、アタック感や抜けの良さがある。後期の頃は和音を弾いた時に塊になって出てくる感じなんですけど、もうちょっと分離がある感じがします。そういう若さとギルドの音がマッチしている印象がありますね”と語ってくれた。
本イベントを終えて、改めてギルド・ギターの印象を聞いてみた。
みの“アーティストの別の一面を無理なく出してくれている感じがします。特にバディ・ガイとジョン・メイヤーに感じましたが、ギルドを持った時に、本来持っている別の個性を出してくれる印象を受けましたね”。
関口“弾き手としては、自分が入る隙間があるギターだと感じるんです。自分が入って完成するという余地を残してくれている感じがあるんです。表現をしたいという人、周りと同じギターは嫌だっていう人にはピッタリだと思います”。

Shingo Sekiguchi Special Live
最後は関口シンゴによるギルド・ギターを使ったスペシャル・ライブで締めくくり。1曲目はX-175を使ったソロ・ギター・スタイルでの「North Wing」。ミニー・リパートン「Lovin’ You」やアリシア・キーズ「If I Ain’t Got You」のモチーフを交えながら、良い意味で雑味のある温かな音色をジャジィに聴かせる。さらにブリッジ寄りのピッキングでギャリっとした質感を出したりと、ギルドらしさをたっぷりと聴かせてくれた。
2曲目はPoralaに持ち替え「Raincoat」を披露。ルーパーを使いコード・バッキングやリズム、ベースをその場で組み上げながら、“チル”でメロウなメロディを乗せる。ソロ・パートではブルージィなプレイも聴かせてくれた。
最後はトラックを使った「Origami Song」で、コーラスも歌いながらギターを紡ぐ。少し歪ませたリードから、煌びやかなクリーンまで音色を切り替えながら、現代のギルド・ギターが持つ魅力を最大限に伝えてくれた。