Interview|安藤正容T-SQUARE退団の決断と、今後の展望。 Interview|安藤正容T-SQUARE退団の決断と、今後の展望。

Interview|安藤正容
T-SQUARE退団の決断と、今後の展望。

T-SQUAREの公式YouTubeチャンネルにアップされた安藤の退団発表動画では、その決断に至った理由が簡潔に語られていた。しかし、あれだけではまだまだ納得できないし、退団後の活動の展望についても気になってしまう。まず我々は、その純粋な疑問からぶつけてみたのだが、彼から返ってきた言葉は、いちギタリストとしての未来に期待感を膨らませるものだった。さっそく気になる答えを聞いていこう。

インタビュー=近藤正義 写真=小原啓樹

自分自身のクリエイターとしてのクオリティを保つために。

2000年のバンド形態から伊東さんとのユニットに移行する少し前に、当時のメンバーに退団を告げた一件がありましたが、今回の決意はその延長上にあるものなのでしょうか?

 あの時とはちょっと意味合いが違いますね。当時は、T-SQUAREというバンドが僕の考え方とは違う方向へ進んでいたから、僕が抜けて誰か違うギタリストを入れてバンドを継続してもらえばいいと思ったんです。あれからもう21年が経ちましたが、今回の決断は一言で言えば“自分自身のクリエイターとしてのクオリティを保つため”というか。実はここ数年、じわじわと考えてはいたんですよ。

どういうことが要因になったのでしょうか?

 考えてみたら、T-SQUAREみたいに毎年オリジナル・アルバムを出してる人なんて、ほとんどいないじゃないですか(笑)。さらにその間にはツアーもあり、企画アルバムも作ったりする。そのT-SQUAREならではの早い活動ペースに合わせて、曲を書いたりギター・パートを考えたりすることがキツくなってきたんです。僕はもう若い頃のようにそのスピードにはついていけないし、もう少し時間をかけて自分の作品を作らないと、ただ消耗していくだけになるんじゃないかっていう不安もありました。もっとアイディアや曲を貯めに貯めて、吟味したうえで納得のいく形で発表するのが、今の僕が理想としている活動ペースなんです。

T-SQUAREの活動ペースを調整するなど、何か折衝案は考えられないのですか?

 それでは僕がバンドの足を引っ張ることになってしまいますから。それならバンドからは離れたほうがいいと思ったんです。ずっとバンドにいたので“リーダーだ”だったり“スクエアの顔だ”って言っていただくこともありますが、僕自身はそういう風には考えていませんしね(笑)。

ファンの皆さんからの反応はいかがですか?

 TwitterなどのSNSではご理解いただけて、“これからもT-SQUAREを応援していきます”という肯定的なメッセージが多かったので安心しました。退団するとはいえ、これからも曲を提供したりギターを弾いたり、T-SQUAREのアルバムやコンサートにゲストとして参加することがあるかもしれませんので、僕個人の活動、T-SQUAREの活動、あわせてよろしくお願いします。

ギタリスト安藤正容がこれから歩む道のり。

今、どんなギタリストに注目していますか? それがすなわち、安藤さんのやりたい音楽かもしれませんしね。

 僕がマイケル・ランドゥのファンであることはこれまでにも喋っていますけど、マイケルにしてもロベン・フォードやラリー・カールトンにしても、みんなブルージィな方向に向かっていますよね。どんどんシンプルになっている。ここで言う“シンプル”の意味は、T-SQUAREのようにアレンジや曲の作りで聴かせるというよりも、純粋に“演奏の味”で聴かせるということです。僕も、コード進行が複雑に行ったり来たりするのを考慮しながら弾くのではなくて、ワン・コードでもいいからもっとギターで自由に歌いたいと思うことが多くなってきているんです。

野呂さんや是方さんとのバンド、オットットリオには、そんなテイストもありますよね。

 オットットリオは適当だからね。ギターが3人もいると、誰が何を弾いているのかわからなくなる瞬間もあるけど……(笑)。でも、シンプルにギターで歌えるほうが楽しいんですよ。“このチョーキングを聴いてくれ!”という感じだったり(笑)。

T-SQUARE退団後の計画は何か具体的に決まっているのでしょうか?

 まだ、何も計画は立てていません。今年いっぱいはT-SQUAREのスケジュールが詰まっていますから。ただ、御厨(裕二)君とはよく連絡を取り合っています。でも、このコロナ禍ですから、“もう少し世の中が落ち着いてからやろうか”なんて話をしていますね。いずれにしても、しばらく充電しないと。いや……退団して自分の時間がたっぷりとれるようになったら、逆に放電してしまうかも(笑)。

これまでずっと高出力でしたからね(笑)。

 でも、一度空っぽになるくらい放電するのもいいかもしれない。デビューしてからの43年間、ありがたいことにそんな時間を持つことはできなかったですから。それが済んだら必ず、僕自身も納得のいく音楽を作りますので、楽しみに待っていて下さい!

作品データ

『FLY! FLY! FLY!』 T-SQUARE

T-SQUARE Music Entertainment Inc./OLCH10022-23/2021年4月21日リリース

―Track List―

01.閃光
02.FLY! FLY! FLY!
03.Only One Earth
04.Quiet Blue
05.Brand new way
06.Growing Up!
07.The Hotrodder
08.回帰星-kaikiboshi-
09.Joy Blossoms

―Guitarist―

安藤正容