“月曜の朝にさ、皆の気分が晴れるような音楽を毎週届けたいのよ。何かアイディアない?” そんな編集長の問いに、WEB担当Fはこう答えた──“月曜は「ストマン」一択ですよ”。そうして立ち上がった企画が、この“月曜朝のストーミー・マンデー”です。今週はシカゴの隠れた名手、エディ・クリアウォーターの89年作から。エディとウィル・クロスビーのふたりによるギター・プレイも色気あるメロウなアプローチで、かなり優れた味わい深いカバーです。
文=小出斉 デザイン=猪野麻梨奈
おい、どっちが弾いているんだ?
シカゴの左利きギタリスト、エディ・クリアウォーターが89年にパリで録音した仏ブラック&ブルー盤『Blues Hang Out』に収録。チャック・ベリー・スタイルのロックンロールも得意とする個性派として知られたクリアウォーターの「ストマン」は、ゆったりとしたB.B.キング・スタイルのギターでスタートする。フィーリング豊かな、色気を感じるフレージングだ。コード進行はⅡmを経由するスタイルで、9小節目のドミナントのあと10小節目で半音上がるタイプ。
1コーラス分ギターが続き、“ビッグ・ママ・ソーントンに捧げる”と語り、歌うはクリアウォーターではなく、シカゴの女性シンガー、ビッグ・タイム・サラ。重量感があり、ディープな歌声は味あり。その歌に絡むギターもいい感じで、バイオリン奏法なども駆使。しかし、“カモン・エディ”の掛け声にうながされてソロを弾き出したのはそちらでなく、それまで地味にサイド・ギターを担当していたほう。え?
実はイントロの1コーラスと、歌のオブリガート(と2番目のソロ)は、もう1人のギター、ウィル・クロスビー。バッキング・ミュージシャンとして、90年代以降、エディやシル・ジョンソン、キャリー・ベル、メイヴィス・ステイプルズらの録音にしばしば参加。隠れた実力者なのであります。途中にビッグ・ママ・ソーントンの「ボール&チェイン」(ジャニスで有名になったアレね)なども挟んで歌うビッグ・タイム・サラともども、クリアウォーター名義で、別人活躍の隠れた名カバー。