山田海斗(Novelbright)× フェンダーMade in Japan Hybrid Ⅱ Stratocaster 山田海斗(Novelbright)× フェンダーMade in Japan Hybrid Ⅱ Stratocaster

山田海斗(Novelbright)× フェンダーMade in Japan Hybrid Ⅱ Stratocaster

進化を遂げた日本製フェンダーのMade in Japan Hybrid “Ⅱ” シリーズ。これまでにJazzmaster、Telecasterとプロ・ギタリストによる試奏レビューをお届けしてきたが、最後はもちろんStratocaster! 今回その実力をチェックしてくれるのは、4月にメジャー1stアルバム『開幕宣言』をリリースしたNovelbrightのギタリスト、山田海斗。ステージではレス・ポールを抱えているイメージの強い海斗だが、レコーディングや自宅ではSTタイプも愛用する。ピックアップ・レイアウトなどもさまざまな種類を試してきたという彼は、新しいHybrid Ⅱ Stratocasterをどう評するのか?

取材/文=井戸沼尚也 撮影=小原啓樹

フェンダーのMade in Japan Hybrid Ⅱ Stratocasterは、ビンテージ・ライクなルックスと、プレイヤーや音楽のジャンルを選ばないモダンなスペックを融合した、まさに“ハイブリッド”なモデル。定評のあるアルダー・ボディに、新設計のピックアップ、2点支持トレモロ・システムを搭載。これらを、世界中から高く評価されているMade in Japanの技術でまとめあげている。

今回、本器を試奏するのは、メジャー・デビュー後初のフル・アルバム、『開幕宣言』が絶好調のNovelbrightのギタリスト、山田海斗だ。ドラマチックな楽曲で豪快なギターを聴かせる海斗は、このギターをどう見るのか。

慣れ親しんだボディ・シェイプ

STタイプを抱えている姿もたまに見ますが、やはり海斗さんといえばレス・ポール・スタイルのモデルのイメージが強いですよね。

 そうですね。ただ、バンドのサウンドの関係でライブではレス・ポールを弾くことが多いのですが、レコーディングや自宅ではSTタイプもよく弾いているんですよ。レス・ポールを持つ前は、ずっとSTシェイプのギターを使っていて、SSSや、SSHのピックアップ・レイアウトのものなど、色々と試しました。実は、バンドでは曲調に合わせてレス・ポールを弾いていますが、個人的に好きなのはストラトキャスターなんです。僕はピックと指を併用して弾くことも多いのですが、ストラトはそのニュアンスの違いもしっかりと出してくれるから、弾いていて楽しいんですよね。

そうだったんですか! 実はストラト好きということで、まずはこのMade in Japan Hybrid Ⅱ Stratocasterのファースト・インプレションを聞かせて下さい。

 まず、ネックのグリップがメチャクチャ握りやすいですね。これなら初めて触った人でも弾きやすいと思います。ネックの裏がサラサラしているのと、指板のエッジの処理が良いので、左手を狙ったポジションに正確にスライドできる。

音に関してはいかがですか? 

 ハリがあって、けっこうイマドキの音という印象ですね。ピックアップが、はっきり、しっかり音を出してくれるタイプなのかなと思います。わずかに暴れる感じもあって、そのバランスがいいですね。僕は、特にフロントPUが好きです。優しく弾けば丸くなるし、そのまま強く弾けばカッティングもいけますね。でも、どのポジションも、弾いていてテンションが上がる音ですよ。

モダン“C”シェイプのネック裏は、素早いポジション移動を助けるサテン・フィニッシュ仕上げ。
ピックアップには、本器のために開発されたHybrid II Custom Voiced Single Coilを3基搭載。

イマドキの音というのは、ビンテージとも違う感じですよね。

 ビンテージはもうちょっとピーキーだったり、ニュアンスが出すぎてしまうことがあるんですけど、このギターは、打ち込みを使ったトラックなどにも馴染む音という印象があります。悪目立ちしないんですけど、いないと寂しいという良い仕事をしてくれる感じというか。DTMをやっている人にも、とても良いと思いますよ。あとは手元のボリュームが10と9でちゃんと音が変わるくらい効くので、僕にとっては使いやすいですね。

ボリュームは演奏中にも操作するんですか?

 ストラトの場合はけっこうイジりますね。アンプのほうを少しキンキンするくらいにしておいて、手元のボリュームを下げて耳に痛いところを抑えたり、サステインが欲しい時に手元でちょっと上げるという使い方をしています。このギターは、ちゃんとそれができますよ。

海斗流ストラトキャスター活用術

レコーディングでSTタイプを起用するのは、どんな時ですか?

 曲のキャラによるんですけど、コード感を出して雰囲気を作りたい時や、カッティングをしたい時にSTタイプを使います。ピックアップはだいたいフロントかセンターですね。ハーフトーンは単体で弾くとものすごくいい音で好きなんですけど、Novelbrightは音数が多いので、アンサンブルの中で弾くと音がトラックの奥に引っ込んじゃうんですよ。なので、もう少しレンジが広いフロントやセンターを使うことが多いんです。

最新作でそのサウンドを味わえるのは?

 『開幕宣言』の中だと、「さよならインベーダー」は全部STタイプで録っています。このストラトキャスターを手に入れたら、ぜひコピーしてみてほしいですね。

もし、このMade in Japan Hybrid Ⅱ Stratocasterを今後使うとしたら、どんなシーンでしょう?

 ライブで使う場面も出てくると思うんですけど、一番活躍しそうなのは自宅でデモを作る時ですかね。Novelbrightはかなりデモを作り込むので、これだけいい音で弾きやすいギターがあれば、デモ作りがはかどると思います。練習も楽しくなりますし。

練習が楽しくなるのは重要ですよね。ちなみに、ストラトキャスターを楽器店で選ぶ時に、どういう点を見ていますか?

 ギター全体が鳴っているかどうか、きれいに振動しているかどうかですね。というと難しそうに感じるかもしれませんが、左手でヘッドのところを触って、右手で開放弦をジャラーンと鳴らしてみると、よく振動しているかどうかがわかると思います。

海斗がギター選びの際に重視するという“全体の振動チェック”の風景。本器にもOKサインが出た。
ビンテージ・スタイルのサドルはクラシックな印象だが、トレモロ・システムは2点支持のモダンな仕様だ。

最後に、このギターはどんな人にオススメですか?

 初心者の方が2本目に買うのも良いですし、10万円くらいでこの音、この弾きやすさが手に入るので、頑張って1本目として手に入れるのもオススメしたいですね。最初に弾きづらいギターを買ってしまったら、難しくて弾かなくなってしまう人もいると思うんです。そういう点でも、1本目にちゃんとしたものを買うことが、上手くなる近道にもなる。このギターは、冒頭に述べたようにグリップが握りやすくて、とても弾きやすいですから、ぜひ手に取ってみてもらいたいですね!

山田海斗

やまだ・かいと◎1993年、大阪府生まれ。2020年にメジャー・デビューを果たした5人組ロック・バンド、Novelbrightのギタリスト。2021年4月にはメジャー1stアルバム『開幕宣言』をリリース。