取材・文=井戸沼尚也 機材写真=星野俊 デザイン・図版=猪野麻梨奈
ブースターとして、そして時にはメインの歪みとして……言わずと知れたオーバードライブ・ペダルの大定番、BOSSのSD-1。そのSD-1のセッティング術を6人のプロ・ギタリストに聞いてみた。初回となる今回は、結成35周年を来年にひかえたTHE COLLECTORSのギタリスト、古市コータローのセッティングとコメントを紹介しよう。
KOTARO’S SETTING
弾き手に寄り添ってくれる
SD-1を手に入れたのは、ライブハウスなんかでギター・ソロを弾くときに、“ほんの少しレベルとゲインを稼ぎたい、でも音に大きな変化を求めない”という状況で使えるペダルが欲しかったから。最初に買ったのはまだ10代の頃だったと思うよ。それから30年以上使っていて、故障は1回もない。昔、大雨の野外のフェスでSD-1を使ったこともあるけど、それでも故障もせず、今でも使えるからね。いろんな現場があるからさ、頼りになるよ。俺のすべてのギターは一度はSD-1を通っているけど、リッケンバッカーでもES-335でもまったく問題ない。もちろん好みはあると思うけど、基本的にはギターやピックアップを選ばないんじゃないかな。
SD-1はエフェクターだと考えてこれに頼るんじゃなく、アンプに近い存在、自分の右手に近い存在だととらえたほうがいい。俺はDRIVEをほとんど上げないセッティングだから、人によってはオンにしても音の違いがわからないかもしれないけど、弾いている本人は単音を弾いた時に明らかに太く感じるんだよね。そういった繊細な要求をしても、ちゃんと応えてくれるんだ。さすが定番だよね。中域が出すぎることもないし、出しゃばりすぎずに、弾き手に寄り添ってくれる。うまいヘタには関係なく、寄り添ってくれるんだよ。だからずっと手放さないで使えるんだ。
PROFILE
ふるいち・こーたろー●東京都出身。来年で結成35周年を迎えるロック・バンド、THE COLLECTORSのギタリスト。浅田信一とのユニットANAROG MONKEYSでも活動中。2019年3月に、4作目となるソロ作『東京』をリリース。
LAST RELEASE
『東京』古市コータロー
コロムビア/COZP-1531-2
本記事は『ギター・マガジン2020年9月号』にも掲載されています。表紙巻頭特集は「シティ・ポップと夏。〜とろける極上ギター・ソロ篇」。ぜひチェックしてみて下さい!