『ギタリストなら絶対に聴くべき名盤40』の9つ目のテーマは南米スラッシュ・メタル! まずはブラジリアン・スラッシュを代表するバンド、セパルトゥラのアルバムから紹介します。
文・選盤=川嶋未来
Sepultura
『Bestial Devastation』
●リリース:1985年
●ギタリスト:Max Possessed、Tormentor
ブラジリアン・スラッシュの雄、爆誕
あのセパルトゥラのデビュー作は、同郷ベロオリゾンテのOverdoseとのスプリット。現在の彼らからは想像もできない激速・激イーヴルな内容で、特にのちのブラック・メタルへの影響は絶大。歌詞の英語も中学生レベルのメチャクチャさ。わけのわからないギタリストの名前が並んでいるが、もちろんマックス・ポゼストはマックス・カヴァレラの変名。
Sepultura
『Morbid Visions』
●リリース:1986年
●ギタリスト:Max、Jairo T.
セパルトゥラの最高傑作はこれだ!
メンバー表記が変わっているが、前作スプリットと同ラインナップで制作されたファースト・フルレングス。冒頭からほぼブラスト・ビートで、86年当時は最高速のメタル作品の1つだった。相変わらず演奏はラフ、歌詞は稚拙で凶悪。このあと彼らが世界的な人気を博すだろうと予想していたものなど誰1人いなかったことだろう。セパルトゥラの最高傑作はこれだ!!
Sepultura
『Schizophrenia』
●リリース:1987年
●ギタリスト:Max Cavalera、Andreas Kisser
ついにアンドレアス・キッサーが加入
このアルバムから現在バンドのリーダーを務めるアンドレアス・キッサーが加入。彼のトラディショナルなヘヴィメタルのバックグラウンドと、イゴール兄弟のエクストリームぶりが見事にケミストリーを生み出し、メチャクチャさは減退したものの確実にバンドとしてステップアップ。本作がきっかけで、セパルトゥラは大手ロードランナーとの契約を手にする。
Sepultura
『Beneath the Remains』
●リリース:1989年
●ギタリスト:Max Cavalera、Andreas Kisser
その名を世界に知らしめた1枚
そして本作で正式にロードランナー・デビュー。デス・メタルの聖地モリサウンド・スタジオにてスコット・バーンズがミックスをした本作は、当時のデス・メタル・ブームとも見事に呼応し、彼らの名を一気に世界レベルへ。当時ニュー・ルネサンスからのオファーもあったそうだが、もしそちらを選んでいたら(悪い意味で)歴史が変わっていただろう。
Sarcófago
『I.N.R.I.』
●リリース:1987年
●ギタリスト:Butcher
元セパルトゥラのボーカリストが結成
セパルトゥラを脱退したワグナー・アンチクライスト(vo)が結成したバンドのデビュー作。楽曲はもちろん、大量の銃弾ベルトに五寸釘、モヒカンというルックスもとにかくイーヴルであり、初期セパルトゥラと同様、のちのブラック・メタル勢への影響は絶大。元Mayhemの故デッドも大ファンで、彼のコープス・ペイントにインスピレーションを与えたとされる。
Sarcófago
『The Laws of Scourge』
●リリース:1991年
●ギタリスト:Fábio Jhasko
89年に復活を遂げた2nd
1stアルバムのレコーディング直後に解散してしまうも、89年に復活を果たすSarcófago。本作はEP『Rotting』に続いてリリースされた2ndアルバム。演奏が上手くなっているぶん、1stほどのインパクトはないが、こちらも実にブラジルらしい名作。ボーカルのワーグナー・アンチクライストは、現在、経済学の教授として大学で教鞭をとっている。
V.A.
『Warfare Noise』
●リリース:1986年
●ギタリスト:多数参加
ブラジリアン・スラッシュの名コンピ
ベロオリゾンテのスラッシュ・シーンを支えたコグメロ・レコードの名作コンピ。Chakal、Mutilator、Holocausto、Sarcófagoと、全バンド凶悪としか表現しようがない! 世界的にスラッシュのインテリジェント化が進んでいた時期、ブラジルは独自のディストピアを築いていたのだ! 80年代ブラジリアン・スラッシュを知るには最適な入門編。
V.A.
『Warfare Noise II』
●リリース:1988年
●ギタリスト:多数参加
ちょっぴりトホホな続編コンピ
たいてい続編というのは本家に劣るものだが、正直この作品はひどい。Witchhammer以外、Mayhem、Megathrash、Aamonhammerと、その後アルバム・リリースもない、誰も知らないバンドばかりを収録。それでもコグメロの作品というだけで手が伸びてしまうのだが。ちなみに90年には同作の『III』もリリースされ、こちらも無名バンドがギッシリ。
Chakal
『Abominable anno domini』
●リリース:1987年
●ギタリスト:Mark、Pepeu
演奏はラフ、音質もショボい、だがそれが良い!
ベロオリゾンテ出身、リリースはコグメロ・レコードから。演奏もラフ、音質もショボいし、ギターのチューニングも合っていないような気がしないでもないが、それがカッコいい。その後、アルバムを重ねるにつれ、テクニカルなものやデス・メタル、ついにはグルーヴ・メタルに手を出したりとかなり節操がないが、いまだ活動継続中。
Holocausto
『Campo de extermnio』
●リリース:1987年
●ギタリスト:Valério “Exterminator”
当時なぜか流行っていた鉤十字ルック
バンド名が“ホロコースト”。アルバムのタイトルは“絶滅収容所”。ボーカルが“ホドリゴ総統”。そしてハーケンクロイツの腕章をつけたメンバー写真。当時のブラジリアン・スラッシュでは、なぜかナチのイメージが流行しており、あのイゴール・カヴァレラ(d)ですらナチのヘルメットを被っていた。あくまで視覚的なポーズだったらしいが、アウトなものはアウト。
*本記事はギター・マガジン2021年9月号にも掲載しています。
『ギター・マガジン2021年9月号』
【特集】追悼 寺内タケシ
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■連載コラム「寺内タケシのテケテケとーく」名作選
■「だから私はギターを弾く」2003年6月号より
■寺内タケシ奏法分析
■GM SELECTION(※電子版には収録されておりません)
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・「夕日に赤い帆」寺内タケシとバニーズ
・「レッツ・ゴー運命」寺内タケシとバニーズ