Knaggs Guitarsトップ・ビルダーが練り上げる美しきハイエンド・ギター Knaggs Guitarsトップ・ビルダーが練り上げる美しきハイエンド・ギター

Knaggs Guitars
トップ・ビルダーが練り上げる美しきハイエンド・ギター

INTERVIEW
JOE KNAGGS

私たちのギターなら、弾き手の才能を余すことなく引き出せる。

ジョー本人へのインタビューをお届け。一切の妥協なく情熱を注ぐ自己のブランドについて、大いに語る。

翻訳=トミー・モリー 写真提供=Knaggs Guitars
※本記事はギター・マガジン2021年10月号に掲載された『ナッグス・ギターズ トップ・ビルダーが練り上げる美しきハイエンド・ギター』を再編集したものです。

全音域の倍音が芳醇に存在している。
“これは変革をもたらすぞ”と。

あなたはもともとPRSに在籍していましたよね? そのためナッグスがPRSに近いギターだと考える人もいると思うのですが、ナッグスがほかのギターとは違う点はずばり、どんなところでしょうか?

 私たちのギターの大きな特徴は“ブリッジ”と“ネックの製作の仕方”、そして“ルックス”にあります。まずルックスに関しては、ナッグスにはフェンダーやギブソンのクラシックなデザインを混合させたものもありますが、あくまで私自身がデザインしてきたものが多いです。PRSの要素も多分に引き継いでいますが、ナッグスは私が目指したルックスなんです。あと見た目の面で他社と大きく異なる特徴は、ボディ・トップ材でしょうね。いくつかのモデルでは、2つのレイヤーでできた木材を用いているんです。2つの層に違うフィニッシュを施すことで、多彩なカラーとデザインが可能となりました。紺のシャツに黒のパンツをコーディネイトするように、単一のカラーリングから脱却できるのです。

サウンドに関わる部分については、いかがですか? 冒頭で“ブリッジに特徴がある”と述べていましたが。

 まずはChesapeakeブリッジについてしゃべりましょうか。このブランドを始めて最初の大きな出来事なのですが、ある日“テレキャスターのブリッジ・プレートはネック側の端がネジ留めされておらず、しっかりと固定されていない!”と気付いたんです。このことからChoptankなどで見られるあのブリッジが生まれたのです。私はネック側の端もネジ留めし、さらにプレートそのものに厚みをもたせ、サドルがプレートに沈み込んで固定されるようなブリッジを開発しました。それをChoptankに搭載してプレイしてみたところ、経験したことのないサステインが得られたのです。すべての音域の倍音が芳醇に存在し、“これはギター・サウンドに変革をもたらすぞ”と確信しましたね。

もう1つのオリジナル・ブリッジであるInfluenceのことも教えて下さい。

 チューニングの安定性を高め、弦振動の伝達が向上する。これがInfluenceブリッジの魅力です。金属は真鍮を用いました。構造は簡単に言えば、ストップ・テイルピースとチューン・オー・マティック・ブリッジを“1つの塊”にした、という感じですね。サドル後方部分の弦からは高いハーモニクスが芳醇に得られ、そのハーモニクスをボディの中にしっかりと伝えることが可能になりました。単独でボディに乗っているだけのブリッジよりも優れたものだと自負していますね。

▲Influenceブリッジ。

私たちは、自分の仕事を誇りに思っている。

冒頭に挙げてもらったナッグスの特徴の1つ、“ネックの製作の仕方”に関してですが、まずセット・ネックにこだわっていますね?

 大量生産するギターなら、デタッチャブル・ネックは優れていると思います。そこに着目したレオ・フェンダーは間違いなく天才だった。しかし私自身は、セット・ネックのほうが良いサウンドになると考えています。なにせ、ネックとボディが1つの塊になるわけですから。ボルトオン構造というのは、ジョイント部の厚さやサイズ、あとはプレートやボルトなどに関して、かなり神経質になってしまう。穴の位置にも気をつかうんです。その反面、セット・ネックの場合は“両者がしっかりと接着すること”に意識を向ければ、ワン・ピースの木材の塊として機能するようになる。サウンドがボディ~ネック間をより簡単に往来することができるんです。

木材そのものについても、かなりのこだわりが感じられます。

 私たちが使っている木材の多くはクラシックなものばかりで、これらが長年使われてきたことには理由があります。アコースティック・ギターやエレキ・ギターの典型的な材の組み合わせはやはり、とても鳴るんです。叩いてみれば音は減衰せず、むしろ増大していくのがわかるでしょう。

奇抜な木材を試したことはあるんですか?

 もちろん。一度木材の卸に赴き、美しいチェリーの木材を目にして指板に使ってみようと考えましたが、“まったく鳴らないから楽器には向かない”と言われましたね。たしかに、チェリーはその特性から床板やドア材に使われていますが、ドアを閉める際に大きな音を立てたい人など、誰もいませんよね? 奇抜な木材や組み合わせを使うことを提案する人たちもいますが、私はあまり興味がないんです。

ピックガードに木材を使うなど、ナッグスは木への愛着のようなものも強く感じます。

 たしかに、“なるべく自然のものを用いよう”という思いは強いですね。ナッグスはギターのモデル名に河川やネイティブ・アメリカンの文化から名前をもらっているんですが、そういった背景からです。ただ、ピックガードに木を用いるのは純粋にサウンドを向上させるためでもあります。プラスティックと木のピックガードで音の違いを比較したことがありますが、木材のほうがよりナチュラルでした。

色々と細部のこだわりについて伺ってきましたが、ずばり、ナッグス・ギターズの魅力とはなんでしょうか?

 私たちのギターを使えば、プレイヤーの才能を余すことなく引き出せる。この言葉に尽きますね。私たちのギターは、ミュージシャンの耳とフィーリングに響くものがある。そう信じています。ネックを精巧に作り、フレットを正確に打ち込み、丁寧にサンディングを施し、我々はすべてを高いレベルで実現して、できうる最高のギターを作り上げていると自負しています。私たちは自分たちがやっている仕事を、誇りに思っているのです。それに私たちはみな優れたミュージシャンたちであることもポイントで、“良いギター”がどんなものなのか分かっているのが強みですね。幸運なことに、私たちの中にはギターを弾いたこともない、保険のセールスだったような人材はいませんから。