ギタリストなら絶対に聴くべき昭和歌謡の名盤40(2/4) ギタリストなら絶対に聴くべき昭和歌謡の名盤40(2/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
昭和歌謡の名盤40(2/4)

昭和歌謡の中からギターが映える名盤を紹介する本企画。今回はすべて1970年代のアルバムです。歌謡界も70年代後半になると海外レコーディングや現地の一流セッション・ミュージシャンの起用が当たり前になってきました。

選盤・文=馬飼野元宏

雪村いづみ
『スーパー・ジェネレイション』

●リリース:1974年
●ギタリスト:鈴木茂

茂節が炸裂する世紀の大名盤

雪村いづみがキャラメル・ママをバックに従え、服部良一の名曲群を歌った名盤。ギターはもちろん鈴木茂で、「蘇州夜曲」や「一杯のコーヒーから」の間奏で聴けるメロウな音色、「東京ブギウギ」のホーンと呼応する愉快なソロ、「胸の振子」の的確なカッティングなど、控えめながら多彩なプレイで服部メロディをポップスとしてアップデートさせている。

キャンディーズ
『年下の男の子』

●リリース:1975年
●ギタリスト:水谷公生

「春一番」のダイナミックなギター

彼女達の4作目は、表題曲での水谷公生による軽快なカッティング、4ビート・スウィング「のらいぬ」の間奏/エンディング、「涙色の幸福」でスーのボーカルと会話するかのように呼応するさりげないフレーズなどが聴きモノ。翌年にシングル化された「春一番」は、水谷のダイナミックなフレーズがなければあれだけの大ヒットにはならなかったはず。

あいざき進也
『ジャンプ・オン・ステージ』

●リリース:1975年
●ギタリスト:西村コージ

ユーライア・ヒープのカバーが◎

ライブ盤で、バックを務めているのはナベプロ生え抜きのビート・オブ・パワー、のちのMMPである。ヴァニラ・ファッジ「ユー・キープ・ミー・ハンギング・オン」の忠実なカバーもカッコいいが、ユーライア・ヒープ「対自核」カバーは完全にバック陣の趣味だろう。痛快なロックンロール「恋のペンダント」のソロもいい。この時期のギターは西村コージ。

西城秀樹
『ヒデキ・オン・ツアー』

●リリース:1975年
●ギタリスト:芳野藤丸

息がぴったりな秀樹と藤丸

75年夏の日本縦断ツアーを収録したライブ・アルバム。芳野藤丸バンドをバックに従えたロック・ショー的な構成で、グランド・ファンク・レイルロードの「ハートブレイカー」カバーの重厚なギター・ソロ、ロックンロール「恋の暴走」のノリの良いリフ、「この愛の終るとき」でのハードなソロなど、秀樹と藤丸の息ぴったりなプレイを堪能できる。

フィンガー5
『ジェット・マシーン』

●リリース:1976年
●ギタリスト:リー・リトナー、レイ・パーカー・Jr.

西海岸の腕利きが集結!

ジャパニーズ・キッズ・グループの最高峰が放った5作目。米国留学を経ての帰国第1弾で、LA録音のため“ロサンゼルス・ポリドール・オーケストラ”と雑なネーミングが付けられているが、リトナーやレイ・パーカー・Jr.らがギタリストとして参加した豪華すぎるバッキング。ディスコ、ソウル系の音でまとめられ、従来の彼らのイメージを一新する出来。

高田みづえ
『びいどろざいく』

●リリース:1977年
●ギタリスト:クレジットなし

これがいわゆる竜童メソッド

演歌スレスレの旋律にブルージィなギターの響き。昭和歌謡でこの組み合わせを多く生み出したのが宇崎竜童だ。全曲宇崎作品で固められた2作目で、やさぐれ気味の哀愁ギターが炸裂する演歌ロック「明日は何時?」や、イントロからファズ利かせまくり、演歌テイストの曲調ながらグリッサンド奏法でハードに疾走する「ビードロ恋細工」が聴きもの。

野口五郎
『異邦人』

●リリース:1977年
●ギタリスト:デヴィッド・スピノザ

NY録音の五郎流クロスオーバー

ギター小僧・野口五郎は70年代にサウンド指向のアルバムを数多く発表したが、NY録音を敢行した本作はその決定版ともいえる出来。「異邦人」のイントロからしてハイパーなカッティングだし、メロウなソウル・グルーヴ「傷心スピードウェイ」でのスピノザの乾いたフレーズなど、五郎のドメスティックな歌唱とクロスオーバー・サウンドが融合した傑作。

岩崎宏美
『ファンタジー』

●リリース:1977年
●ギタリスト:クレジットなし

詠み人知らずのナイスなギター

第一次ディスコ・ブームの渦中にリリースされ、各曲を糸井五郎のDJで繋いだ構成も斬新な2ndアルバム。目の覚めるようなイントロのギター・カッティングで始まる「ファンタジー」、同様にイントロに印象的なフレーズを配した「パピヨン」、フィリーソウル風のサウンドをベースにした「愛よ、おやすみ」の間奏のギター・ソロなど、聴きどころ多し。

内藤やす子
『サタデー・クイーン』

●リリース:1977年
●ギタリスト:クレジットなし

ブルース・ギターがむせび泣く

全編を阿木燿子・宇崎竜童夫妻が書き下ろし、ジャニス・ジョプリンばりの豪快なハスキー・ボイスと宇崎流カタカナ演歌の世界が見事に融合。ラストに配された「F#m」の渋すぎるブルース感覚に、ギターもやさぐれた音色を響かせる。タイトル・チューンのグルーヴィな疾走感も秀逸。泣きのブルース・ギターは宇崎作品の必須アイテム。

太田裕美
『海が泣いている』

●リリース:1978年
●ギタリスト:リー・リトナー

筒美京平とリトナーの邂逅

全曲を松本隆&筒美京平コンビが手がけたLA録音盤。全曲でリトナーのギターが変幻自在に響き渡り、ジミー・ハスケル編曲の「振り向けばイエスタデイ」では西海岸風の乾いた音色、シャッフル・ビートの「Nenne」ではハードなプレイ。萩田光雄編曲の「スカーレットの毛布」は完璧にシティ・ポップで、細かい符割りでメロウな音色を繰り出す。

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*本記事はギター・マガジン2021年2月号にも掲載しています。

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