ギタリストなら絶対に聴くべき昭和歌謡の名盤40(3/4) ギタリストなら絶対に聴くべき昭和歌謡の名盤40(3/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
昭和歌謡の名盤40(3/4)

昭和歌謡の中からギターが映える名盤を紹介する本企画。今回取り上げる10枚は、1978年から80年までの3年間に発表された作品です。79年に引退した山口百恵と、翌80年にデビューした松田聖子……このふたりの歌姫たちの楽曲も主役はギターでしたね!(超ギタマガ的見解です……かまわないで下さい)

選盤・文=馬飼野元宏

尾藤イサオ&ドーン
『涙のギター/悲しき願い』

●リリース:1978年
●ギタリスト:クレジットなし

尾藤イサオのカバー再録盤

ディスコ・ブーム期にカバーの持ち曲を再録音した傑作盤。トレモロ・グリッサンドにエロティックなソロが被り、コブシをぶち込んでくるボーカルも圧巻の「涙のギター」。バックで延々と泣きのソロが入るサンタ・エスメラルダ・バージョンの「悲しき願い」も良し。「朝陽のあたる家」のギター・ソロは、アニマルズを凌駕するブルージィな響き。

山口百恵
『A FACE IN A VISION』

●リリース:1979年
●ギタリスト:青山徹、萩田光雄

ギター・アルバムと言えばこれ!

百恵作品には「横須賀ストーリー」、「曼珠沙華」などカッコいいギター曲が多いが、アルバムとなると、やはりこれ。「想い出のミラージュ」での青山のダブル・トラックを駆使した重厚なプレイや「美・サイレント」でのアコギ・リード、編曲の萩田光雄自身がガット・ギターを弾いたフォルクローレ歌謡「デイ・ドゥリーム」など、傑出したギター作品。

郷ひろみ
『スーパードライブ』

●リリース:1979年
●ギタリスト:ハイラム・ブロック

ハイラム meets 郷ひろみ

24丁目バンドが全曲バックのNY録音盤。つまりハイラム・ブロックのギターと郷ひろみのアノ声とのコラボで、フュージョン色の強い仕上がりだ。ファンキーな「WANNA BE TRUE」での華麗なギター・ソロはもちろん、ビリー・バンバンの菅原進が書いた「哀愁ニューヨーク」ではブルース風のアコギが大活躍。横尾忠則のアートワークも眩しい。

狩人
『Beautiful Express―美しき瞬間』

●リリース:1980年
●ギタリスト:クレジットなし

意外にも多彩なギターが満載!?

「あずさ2号」の大ヒットで知られる兄弟が、シティ・ポップ寄りに路線変更を果たした時期の傑作盤。ブルーカラーの悲哀を歌った「ブラックサンシャイン」でのハードなギター・カッティング、「ミッドナイト・ドライバー」の重厚なファズ、ディスコ・チューン、「クイーン・オブ・シックスティーン」でのメロウな響き。いずれも意外性に満ちている。

松田聖子
『SQUALL』

●リリース:1980年
●ギタリスト:松原正樹、矢島賢、今剛、松下誠、松宮幹彦

黄金のギターを纏った昭和歌謡の真髄

歌謡曲にTOTO/エアプレイ・サウンドを持ち込んだ大村雅朗の編曲が多数を占める、デビュー盤。表題曲の意外なほど重厚なギターは松原正樹。「青い珊瑚礁」の矢島賢も厚みがありながらポップ感満載。信田かずおによる「~南太平洋~サンバの香り」での洒落たカッティングやツイン・ギターによるメロディアスなソロは今剛、松下誠、松宮幹彦の3名。

沢田研二
『G.S.I LOVE YOU』

●リリース:1980年
●ギタリスト:沢健一、柴山和彦

GS時代への愛を紡いだ1枚

ジュリー自身がGS時代を振り返り、80年代の楽曲でその世界観を再現した意欲作。当時の彼のバンドALWAYSとの共演作でもあり、メンバーで元フォー・ナイン・エースの沢健一のほか、本盤が初参加で現在もジュリーのサポート・ギタリストである柴山和彦も。「彼女はデリケート」の沢のプレイは、伊藤銀次が徹底して歪ませるよう依頼したという。

ペドロ&カプリシャス
『オアシス』

●リリース:1980年
●ギタリスト:大村憲司

大村憲司のギター・ソロは必聴

三代目ボーカル・松平直子を迎えた80年作で、松岡直也や大村憲司、坂本龍一がアレンジを手がけた。ことに大村のギター・ソロが聴ける3曲には注目! 英語詞の「MY LOVER’S EYES」、「HEAVY TRAFFIC」は完全にラテン・ベースのフュージョンで、後者は松岡とのピアノ競演も。「TURNING」は大村自身がアレンジ。

ロス・インディオス&シルヴィア
『サンバ・ピンガ・モレーナ』

●リリース:1980年
●ギタリスト:安川ひろし

ロマンチックなラテン歌謡

「別れても好きな人」の大ヒットでお馴染みムード・コーラスの雄が本来のラテン・バンドに立ち返り、ブラジル録音を敢行した意欲作。ギターはソウルメディアの名手安川ひろし。大野雄二作曲の「愛した人へのサンバ」、「夜明けのサンバ」、サーカスのカバー「月夜の晩には」で聴ける精緻なアルペジオ奏法にウットリ。サンバ・カンソン好きにおすすめ!

三原順子
『セクシーナイト』

●リリース:1980年
●ギタリスト:北島健二

重要人物=北島のファズが唸る

設立間もないビーイングが音楽面をプロデュースしていただけに、北島健二が全面参加した1stアルバム。デビュー曲「セクシーナイト」ではイントロ、歌メロ、間奏、エンディングと扇情的なフレーズを弾きまくり大活躍。ツッパリ・キャラと北島のギターは相性抜群で、「ユミ」のドスの利いたボーカルとファズの組み合わせは完璧にハードロック。

中原理恵
『Heart of Gold』

●リリース:1980年
●ギタリスト:芳野藤丸、鈴木茂、安藤まさひろ

茂や藤丸が作曲&演奏で参加!

当時のギター名手を迎えた、中原理恵の5作目。1stでも山下達郎や吉田美奈子を起用しサウンド指向のアルバムを作ってきたが、本盤では参加ギタリストが作曲もしており、「ティファナ・ブラス」での藤丸のリズミカルなプレイ、メロウ・バラード「ダイアン・キートン」での茂節全開の濃厚なソロなど、全編ギター・サウンドで統一している。

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*本記事はギター・マガジン2021年2月号にも掲載しています。

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