ギタリストなら絶対に聴くべき昭和歌謡の名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべき昭和歌謡の名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
昭和歌謡の名盤40(4/4)

昭和歌謡の中からギターが映える名盤を紹介する本企画。最終回の今回は1981年から88年までの作品を紹介しましょう。Char、鈴木茂、矢島賢、芳野藤丸、松原正樹、大村憲司らの冴えたギター・プレイが聴けるアルバムです。

選盤・文=馬飼野元宏

岩崎良美
『心のアトリエ』

●リリース:1981年
●ギタリスト:Char、鈴木茂

ニッポンの二大ギタリストが参加!

ディレクター・渡辺有三の人脈で尾崎亜美、鈴木茂、Charらが参加し、ウェストコースト系サウンドが展開された4作目。ことにChar作詞作曲の「あの時…」はCharの盟友・佐藤準のアレンジで、ギター・ソロも入ったメロウ・グルーヴな佳曲。鈴木茂作曲のオールディーズ風「唇のメモワール」ではまさに茂節と言える端正なフレージングが聴ける。

アン・ルイス
『HEAVY MOON』

●リリース:1983年
●ギタリスト:Char

ジョニー、ルイス&チャーの番外編

歌謡ロックの女王=アンさんがジョニー、ルイス&チャーとガッツリ組んだアルバム。桑名晴子作曲のバラード「Dot in my heart」では泣きのギターが炸裂し、名曲「Nave Blue」はアンの乾いたボーカルで新たな解釈を聴かせ、さらにCharのインスト「LULLER」や、思いっきりハードロックな表題曲などなど、JL&C番外編とでもいうべき完成度。

シブがき隊
『夏・Zokkon』

●リリース:1983年
●ギタリスト:クレジットなし

ハードロック路線のシブがき隊

デビュー2年目からハードロック路線を邁進した3rd。リード曲「Zokkonn命」は水谷竜緒に改名した水谷公生の作編曲で、思いっきりナイト・レンジャー「Don’t tell me you love me」を引用したギター・リフが衝撃。「ゼロからはじまる」、「ヘッドフォン・ララバイ」など、ほとんどの曲でファズを利かせまくったギター・ソロが導入されている。

内山田洋とクール・ファイブ
『愛・トリステ』

●リリース:1983年
●ギタリスト:鳥山雄司、安川ひろし、萩谷清、佐山雅弘

異色の和製ブラジリアン・ファンク

クール・ファイブがラテンに挑戦した、和製ブラジリアン・ファンクな異色作。ギターは鳥山雄司、安川ひろし、元ブルー・インパルスの萩谷清、ジャズの佐山雅弘が参加。「微笑の罠」や「追憶」のイントロで聴けるエモーショナルな泣きのソロや、ロック的なアレンジの「ひと夏の扉」でのエロティックなフレーズは、歌謡AORのスパイスとなっている。

弘田三枝子
『TOUCH OF BREEZE』

●リリース:1983年
●ギタリスト:土方隆行、松原正樹、矢島賢、他

ニッポンの匠がそろい踏み

大野雄二がプロデュースと全曲のアレンジを手がけた意欲作。しかも芳野藤丸を召喚しての制作で、ギターには土方隆行、松原正樹、矢島賢らが参加した豪華盤。アダルトなメロウ・チューン「パープル・ホライズン」は大野と芳野藤丸の共作。全体に弘田のボーカルも控えめで、それに沿ってバックもソフィストケイトされた演奏になっている。

吉川晃司
『パラシュートが落ちた夏』

●リリース:1984年
●ギタリスト:白井良明、松原正樹、今剛

吉川晃司、記念すべきデビュー作!

吉川晃司のデビュー・アルバム。打ち込みのシンセがこの時代ならではだが、デビュー曲「モニカ」では軽快なカッティングと派手なディストーション、タイトル・チューンではボーカルに絡みつくように延々とフレーズを弾きまくるなど、ギターの主張が激しい。圧巻はヘヴィ・ファンク「ピンナップにシャウト」の重厚な音色。

中森明菜
『Bitter and Sweet』

●リリース:1985年
●ギタリスト:矢島賢、芳野藤丸、松原正樹

角松プロデュースで名手たちが共演

角松敏生のプロデュースを受け、フュージョン系サウンドに接近した7作目。「少女A」でもハードなプレイを聴かせた矢島賢が藤丸と組んだ「飾りじゃないのよ涙は」のノイジィな響き、「ロマンティックな夜だわ」での今剛の的確なフレージング、AKAGUYがバッキングを務めたメロウ和ボッサ「DREAMING」での松原正樹の涼やかなソロなどが秀逸。

THE GOOD-BYE
『FIFTH DIMENSION』

●リリース:1986年
●ギタリスト:野村義男、曽我泰久

洋楽ロック・ファンを唸らせた問題作

野村義男と曽我泰久のツイン・リードで注目を集めた5作目。従来のポップ路線からグッとサイケデリックに寄せており、賛否両論を巻き起こし、むしろ洋楽ロック・ファンを唸らせた。ことに「白夜のREVOLUTION」での野村のワイルドなソロは、まるでジミヘンが乗り移ったかのよう。ビートルズにおける『リボルバー』的なポジションのアルバム。

本田美奈子
『Midnight Swing』

●リリース:1987年
●ギタリスト:大村憲司

大村アレンジのギター・アルバム

ゲイリー・ムーアに楽曲提供を受けるなどロックに接近してきた本田美奈子が、WILDCATSを率いる直前の5作目。大村憲司が全曲アレンジとギターで参加、メロウなアルペジオの「Do you remember?」、軽やかなカッティングの「夢見心地」、和ブギー「悲しみSWING」、ハードロック歌謡「孤独なハリケーン」など、完璧にギター・アルバム。

小泉今日子
『BEAT POP』

●リリース:1988年
●ギタリスト:布袋寅泰、下山淳、窪田晴男

3曲で布袋寅泰が参加!

80年代後半からグッとアーティスト志向に変わった通算12作目。ホッピー神山、戸田誠治、松本晃彦らがアレンジを手がけ、3曲で布袋寅泰が参加。オープニングの「Beauty Beat Pop」の鋭角的なカッティング、「Happy Tone」のぶっといブラッシングや特徴的なソロ、「Tell me」でのXTC風のフレーズなどは完璧に布袋節。

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*本記事はギター・マガジン2021年2月号にも掲載しています。

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