ギタリストなら絶対に聴くべきクロスオーバー・スラッシュの名盤40(1/4) ギタリストなら絶対に聴くべきクロスオーバー・スラッシュの名盤40(1/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
クロスオーバー・スラッシュの名盤40(1/4)

 『ギタリストなら絶対に聴くべき名盤40』シリーズの第4弾で取り上げるジャンルは、1980年代にスラッシュ・メタルとハードコアの融合から生まれた、“クロスオーバー・スラッシュ”です。第1回は、このシーンの立役者たるS.O.D.やD.R.I.、さらにC.O.C.という三大クロスオーバー・バンドの名盤を中心に紹介します!

選盤・文=川嶋未来

S.O.D.
『Speak English or Die』

●リリース:1985年
●ギタリスト:Scott Ian

クロスオーバー・ブームの出発点

80年代はヘヴィメタルがメインストリームだったこともあり、多くのパンク・バンドがメタル化。結果としてクロスオーバーという現象が起こったわけだが、S.O.D.に関しては最初からメタルとパンクの中間を意図した点が新しかった。Anthraxのメンバーも在籍していたからか、売上は100万枚を突破。本作をきっかけに、クロスオーバーは一大ブームに。

S.O.D.
『Live at Budokan』

●リリース:1992年
●ギタリスト:Scott Ian

92年のワンショット再結成ライブ

92年にニューヨークの聖地、ザ・リッツで行なわれた再結成ライブを収録した作品。そもそも30分のアルバムを1枚しかリリースしていないため、後半はカバー大会。Fear、Ministry、Nirvanaをそれなりに真面目にやっているのが意外と言えば意外だ。同ライブの映像作品『Speak English or Live』にはインタビューなども含まれているので、より楽しめる。

S.O.D.
『Bigger Than the Devil』

●リリース:1999年
●ギタリスト:Scott Ian

まさかのセカンド・アルバム

あくまでプロジェクトということで短命に終わったS.O.D.であったが、90年代に入り再結成。99年には誰もが予想だにしなかったセカンド・アルバムをリリース。元祖の面目躍如たるクロスオーバーを聴かせたが、セルフ・パロディ感もあり、さすがにファーストのインパクトを超えるのは無理だった気も。この年、奇跡の来日公演も実現している。

D.R.I.
『Dirty Rotten LP』

●リリース:1983年
●ギタリスト:Spike Cassidy

D.R.I.の原点

S.O.D.とともにクロスオーバー・ムーブメントの立役者となったD.R.I.のデビュー作。もともとは22曲入り16分のEPとしてリリースされた本作のドラムは、のちにデスに参加するエリック・ブレクト。この時点ではまだ完全なハードコア・パンクであるが、83年の時点でほぼブラストと言える域に達していた超高速ドラミングは、メタル、パンク双方に凄まじいインパクトを与えた。

D.R.I.
『Dealing with It!』

●リリース:1985年
●ギタリスト:Spike Cassidy

これぞクロスオーバーの金字塔

25曲で34分、若干メタル色を強めたこの2ndは、まさにクロスオーバーの金字塔。ドラムがフェリックス・グリフィンに交代し、荒々しさは減退したものの、演奏はよりタイトに。当時レコードにはデイヴ・ロンバード(Slayer/d)の推薦文がついており、ここからハードコアにハマっていくスラッシャーも少なくなかった。本作をD.R.I.の最高傑作とする者も多い。

D.R.I.
『Crossover』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Spike Cassidy

タイトルはクロスオーバーだが…

“クロスオーバー”というタイトルにも関わらず、ここでさらなるメタル化が進んでいることは、12曲で39分という収録時間からも明らか。新たなメタル層を獲得した一方、ハードコア的なエッジを失ったことに失望したファンが一定数いたことも事実だ。これ以降のD.R.I.は、クロスオーバーというよりも普通のスラッシュとして聴くべきなのかもしれない。

Corrosion of Conformity
『Eye for an Eye』

●リリース:1984年
●ギタリスト:Woody Weatherman

C.O.C.の原点

“Black SabbathとBlack Flagのミックス”という売り文句であったC.O.C.のデビュー作。Black Flagもサバスから大きな影響を受けていたわけだが、本作はボーカル、演奏ともに荒々しくハードコア寄りのため、全体的にBlack Flag感のほうが強い。ハードコア、クロスオーバー、スラッジと音楽性を変えていったC.O.C.だが、その根底にあるものは変わっていない。

Corrosion of Conformity
『Animosity』

●リリース:1985年
●ギタリスト:Woody Weatherman

疾走感が凄まじい名盤

Vo脱退のため、ベースのマイク・ディーンがボーカルも担当した2ndで、疾走感が凄まじいクロスオーバーの歴史的名作。その後、C.O.C.はスラッジ方面で大きな成功を収める。14年には本作と同ラインナップのアルバムをリリースし、クロスオーバー・ファンを色めき立たせたが、内容は超イマイチ。『Six Songs with Mike Singing: 1985』(89年)もオススメ。

M.O.D.
『U.S.A. for M.O.D.』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Tim McMurtrie

二匹目のドジョウはいたか

Anthraxが多忙だったこともあり、S.O.D.はアルバム1枚を残して解散(90年代に再結成するが)。で、ボーカルのビリー・ミラノが結成したのがこのM.O.D.。バンド名も似ているし、クロスオーバー・ファンは大きな期待をしていたが、S.O.D.には遠く及ばなかったというのが正直なところ。やはりS.O.D.のメンバーはあまりに強力すぎたのだ。悪いアルバムではないけれど。

Agnostic Front
『Cause for Alarm』

●リリース:1986年
●ギタリスト:Alex Kinon(lead)、Vinnie Stigma(rhythm)

多くの物議を醸した名盤

コテコテのハードコア・パンクをやっていたAgnostic Frontがメタル化したということで、大きな波紋を呼んだセカンド。その背後で暗躍していたのが、後にType O Negativeで大成功するピート・スティール。本作でピートは歌詞だけでなく、リフも提供していたようだ。彼の差別的歌詞も議論を呼んだ。と、いろいろと裏話のある本作だが、中身は極上のクロスオーバー。

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*本記事はギター・マガジン2021年4月号にも掲載しています。

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