エレキの神様、テリーこと寺内タケシさんの「エレキは弾かなきゃ音が出ない」という発言を知ってからは、キャラも含めて感服しています。
数年前、氏の喜寿記念ライブを観に連れて行ってもらった。引率してくれた楽器業界の年長さんのサービス精神が暴走したのだろう。「いまみち君、会長に紹介してやる。楽屋行こう」と開演前のヤバい時間帯に言われ困った。「大丈夫、大丈夫、会長はデッカい人だから気にしないって」。
“待て、俺が気にする”。
「そうだ、ついでに会長のペダルボード見てこうぜ」と、サウンドチェックを終え照明の直しをしている舞台上に俺を引っ張っていく。“あんたにはスタッフの刺すような視線を跳ね返すシールドバリアでも装備されてんのか?”。でも気がつくと、ちゃっかり神様専用ステレオ・モニター前のバミってる位置に立っている俺と引率年長氏。
すべてのペダルが黒でペイントされたボードから、最近では珍しくなった12Uラックに信号が送られ、そこからPAミキサーにつながっている。客席に出しているのと同じ音をフロア・モニターに返しているらしい。そんな説明を引率年長氏、めっちゃデカい声でするものだから、客入れ前のホールに響く響く。“やめてくれ、俺はもう立ってるのでやっとだよ、早くソデに逃げたい”。
ソデに向かう途中に気づいてたまげたのは、ギター用のシールド・ケーブルからPA卓に行くケーブル、もちろん各ペダルをつなぐパッチまで、すべてがひと目でワンオフ特注品とわかるモノばかりだったこと。
“神様、すげぇよ!”。
フラフラになりながら連れて行かれたのは、ドアは開けっ放しの神様の控室の入り口。「会長! いやぁどーもどーもご無沙汰で!」。引率年長さん、神様の隣のパイプ椅子にドンッと腰掛けると「ほら、いまみち君も座って座って」。“穴があったら入りたい”というのはこういう時のための言葉だったのだね。時計を見れば開演10分前。「ど、どうも、大切なお時間に失礼しました。ステージ楽しみに拝見します」。かすれた声を絞り出し、やっとそれだけ言うと、自分は年長引率者を引っ張るように控室を出ると客席に向かった。ブスっと無言で。
年 「何、いまみち君、キンチョーしてんの? ガハハ」
俺 「とっつぁん、ありゃさすがにないぜ? 俺だったら、あんたを以後出禁にするか、東京湾で溺れてもらう」
年 「俺は会長に信頼されてっから大丈夫、大丈夫」
俺 「ちょっと、我々、話噛み合ってなくね?」
年 「俺は会長から『ギターは弾かなきゃ音が出ない、いま弾いてないこのギター、お前が預かってくれ』って、1本ギターを託されてたりするんだぜ、特製モズライト」
なんだって!(◎_◎; )
今回は“エレキはアンプがなくても音だせるのか?”みたいなことを書くつもりが、イントロで脱線したまま暴走してるな。しかもタイトル間違えた、『神様許して!』だね。思い出すだけで、心拍いまだに乱れます。深呼吸してこよう。
では、また!
いまみちともたか
Profile
いまみちともたか
いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。