『80年代シティ・ポップの名盤40』の第2回では、AB’Sとそのギタリストである芳野藤丸、松下誠のアルバムを中心に紹介します。さらに「ルビーの指環」で記録的なヒットを飛ばした寺尾聰や、「真夜中のドア〜Stay With Me」で今なお世界中に新しいファンを生み出し続けている松原みきの作品も取り上げます。
文・選盤=西山隆行 協力=ガモウユウイチ
佐藤博 『awakening』
●リリース:1982年 ●ギタリスト:佐藤博、山下達郎、鳥山雄司、松木恒秀
グルーヴィな音のさざ波
佐藤自身による繊細な打ち込みトラックを土台に、R&Bやブラック・ミュージック的なセンスをブレンドした1枚。優しくマイルドなサウンドとグルーヴの一体感はエンドレスな心地良さを生み出している。ビートルズのカバー「FROM ME TO YOU」の鳥山雄司のカッティングも一流のセンスと技モノ。「IT ISN’T EASY」では佐藤が渋いアコギのソロを披露。
ダーティな世界観をまとっていた1stアルバムに対し、ロックのストレートさやシティ・ポップの洗練された成分などがより強調された2nd。ギターはクリーンや空間系が多用されており、本作の明るいサウンド感に一役買っている。何はともあれ「Just a Rainy Blues」の歌い上げるギター・ソロが最高。「Do You Remember Me?」の爽快なストロークも◎。
SHŌGUN活動停止後の、ソロ第一弾アルバム。渋い歌声、そして高音域が煌めく切れ味抜群のカッティング・ギターが全面フィーチャーされ、思わず体を揺らしたくなるようなノリが心地良い。「Who are you?」のイントロが始まった瞬間に誰もが“カッコいい!”と叫びたくなるだろう。のちにAB’Sとして共にサウンドを奏でる松下誠も2曲でゲスト参加。
シティ・ポップのブーム再来で「真夜中のドア〜Stay With Me」がYouTubeで驚異的な再生記録を伸ばし続けている松原みきの代表作。当時20歳とは思えないズバ抜けた歌唱力と一度聴いたら忘れられない至高のメロディ。「真夜中〜」での松原によるメロディアスなソロ、「Trouble Maker」でのハード・ロック的な激しいリフ、チョーキングなど、聴きどころ満載。