ギタリストなら絶対に聴くべき80年代シティ・ポップの名盤40(2/4) ギタリストなら絶対に聴くべき80年代シティ・ポップの名盤40(2/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき80年代シティ・ポップの名盤40(2/4)

『80年代シティ・ポップの名盤40』の第2回では、AB’Sとそのギタリストである芳野藤丸、松下誠のアルバムを中心に紹介します。さらに「ルビーの指環」で記録的なヒットを飛ばした寺尾聰や、「真夜中のドア〜Stay With Me」で今なお世界中に新しいファンを生み出し続けている松原みきの作品も取り上げます。

文・選盤=西山隆行 協力=ガモウユウイチ

佐藤博
『awakening』

●リリース:1982年
●ギタリスト:佐藤博、山下達郎、鳥山雄司、松木恒秀

グルーヴィな音のさざ波

佐藤自身による繊細な打ち込みトラックを土台に、R&Bやブラック・ミュージック的なセンスをブレンドした1枚。優しくマイルドなサウンドとグルーヴの一体感はエンドレスな心地良さを生み出している。ビートルズのカバー「FROM ME TO YOU」の鳥山雄司のカッティングも一流のセンスと技モノ。「IT ISN’T EASY」では佐藤が渋いアコギのソロを披露。

寺尾聰
『Reflections』

●リリース:1981年
●ギタリスト:松原正樹、今剛、Ted M.Gibson、笛吹利明、谷康一

攻めのギターがたまらない!

マイナー・キーが醸すムード、都会の夜や大人の恋愛を連想させるドラマチックな歌詞などが刺激的なヒット作。プログレ的なフレージングや、松原&今のスピード感溢れる鋭いカッティング、チョーキングといった名演が随所に散りばめられており、楽曲を色鮮やかに彩っている。「ルビーの指環」のリフは全ギタリストが認めるであろう、群を抜いたカッコ良さ!

AB’S
『AB’S』

●リリース:1983年
●ギタリスト:芳野藤丸、松下誠

互いのリスペクトから成る音楽

芳野&松下コンビの素晴らしさを堪能できる名盤。互いに得意とするリズミカルな16分カッティングを軸に、歌とソロ、テンション・コードの絶妙なバランスが良く、何度聴いても飽きることがない。「Dee-Dee-Phone」は1テイク録音ではないか?と思うほどの速弾きバトルに緊迫感があるし、「Asian Moon」のカッコ良さには思わず歓喜を上げたくなる!

AB’S
『AB’S-2』

●リリース:1984年
●ギタリスト:芳野藤丸、松下誠

クリーン・トーンの清涼感!

ダーティな世界観をまとっていた1stアルバムに対し、ロックのストレートさやシティ・ポップの洗練された成分などがより強調された2nd。ギターはクリーンや空間系が多用されており、本作の明るいサウンド感に一役買っている。何はともあれ「Just a Rainy Blues」の歌い上げるギター・ソロが最高。「Do You Remember Me?」の爽快なストロークも◎。

AB’S
『AB’S-3』

●リリース:1985年
●ギタリスト:芳野藤丸

デジタルに挑戦した方向性

1st、2ndとは大きく方向性を変えた3rd。デジタル・サウンドをよりフィーチャーしており、新たな時代を切り開こうとする気概を感じさせる。松下不在のためプログレ的な要素は薄くなったが、「Cry Baby Blues」、「C.I.A.」など“これぞ藤丸!”なナンバーは思わずニヤけてしまうようなカッコよさ。「Borderline」のギター・ソロは悶絶モノ!

芳野藤丸
『YOSHINO FUJIMAL』

●リリース:1982年
●ギタリスト:芳野藤丸、松下誠

ダンサブルなカッティング!

SHŌGUN活動停止後の、ソロ第一弾アルバム。渋い歌声、そして高音域が煌めく切れ味抜群のカッティング・ギターが全面フィーチャーされ、思わず体を揺らしたくなるようなノリが心地良い。「Who are you?」のイントロが始まった瞬間に誰もが“カッコいい!”と叫びたくなるだろう。のちにAB’Sとして共にサウンドを奏でる松下誠も2曲でゲスト参加。

芳野藤丸
『ROMANTIC GUYS』

●リリース:1982年
●ギタリスト:芳野藤丸、ロベン・フォード

芳野のセンスとロベンのテク!

収録曲の半分以上をLAでレコーディングした本作。ロベン・フォードら海外勢と共に作り出す鉄壁のグルーヴが高い完成度を誇っている。芳野のダンディな歌声も相まって、いわゆるシティ・ポップらしい聴きやすさがありながらも、バックに鳴り響くリード・ソロやカッティングは高難度のウルトラCが炸裂! バンド・サウンドの乾いたヌケ感も抜群。

松下誠
『First Light』

●リリース:1981年
●ギタリスト:松下誠

メロウとスピードの対比が一級

アレンジャーとしても活躍しているだけあって、一見シンプルに聴こえるコード・ワークやフレーズ、コーラス・ワークなども緻密な計算の上で構築されているであろう、ハイレベルな完成度が圧巻。松下のカッティングやリードは角が丸いメロウなトーンでありながら、鋭いスピード感も併せ持つ唯一無二の個性だ。本作では随所でそのサウンドを堪能できる。

松下誠
『THE PRESSURES AND THE PLEASURES』

●リリース:1982年
●ギタリスト:松下誠

プログレ要素&多彩さ満載!

攻めたプログレとアーバンで洒落たコード感のシティ・ポップという両極端なスタイルが上手く同居する本作。ギター・プレイはナイル・ロジャースのようなカッティングからジョージ・ベンソンのようなメロウなライン、スティーヴ・モーズのようなサウンドなど、様々な要素を感じさせる。松下の変幻自在な多彩さと高次元なレベルを堪能できる名盤。

松原みき
『POCKET PARK』

●リリース:1980年
●ギタリスト:松原正樹、土屋潔、芳野藤丸、松木恒秀、今剛、吉川忠英

ギターという大きな存在感

シティ・ポップのブーム再来で「真夜中のドア〜Stay With Me」がYouTubeで驚異的な再生記録を伸ばし続けている松原みきの代表作。当時20歳とは思えないズバ抜けた歌唱力と一度聴いたら忘れられない至高のメロディ。「真夜中〜」での松原によるメロディアスなソロ、「Trouble Maker」でのハード・ロック的な激しいリフ、チョーキングなど、聴きどころ満載。

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*本記事はギター・マガジン2021年6月号にも掲載しています。

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