「苦い気分の時や、体調が優れない時にデカい音でギターを弾いて背中で浴びると意外に復調するんだ」とSNSに投稿したら「ギター弾きはオメデタイな羨ましい」と言われた。うん、さいわいだと思ってる。
仕事として関わってくれたらなんか凄く御利益ありそうなものだけど、あいにくプライベートでの付き合いしかないという、ハリウッド映画やエンターテインメント業界全般でワールドワイドに裏方として実業畑で暗躍している年長の友人が居る。
彼曰く「ビジネス的にはオマエみたいに好きで得意なことを仕事にしたいって奴は面倒」なんだって。
「オレは好きじゃないことを仕事にしてる自覚があるからさ。それ相当の対価を要求するし、呑んでくれなきゃやらないだけ。やるとなったら、なるべく早く片付けて自分の好きなことに没頭できる時間を持つ工夫もする。だからオレの仕事は綺麗で早い」
クオリティ含め、ちゃんと成果を出してきた者だからこそのキツめの誇張表現なのだろうから「いや、俺だって」と反論しようとしたけど、やめておいた。大げさに言えば実業と虚業のどちらに根を張っているかで、取り組み方や考え方の違いもあるのは当然だし。たしかに自分は「演奏できる機会があるならば金を払ってでもやりたい」と渇望したり、実際にそうした時だってあったし、そういう思考回路は消えずに今も残ってるし。
「できれば、いつでもドライになれるくらいのしたたかな大人に育ちたかった」と返したら笑われた。
「心にもないことを。そーゆーとこが面倒なんだよ」。
「あはは」。
その匿名氏、刺激(ストレス)がないことがストレスだと豪語するほど典型的な東京者だったのに、五輪誘致で東京が騒がしくなり始めた時期に「これからは“戦時中”になるはずだから、オマエも地方へ疎開を考えたほうがいいぞ」と言い出した。
たかが数年前だけど、その頃はまだコロナのコの字もなく、せいぜい五輪開催に向けた規制や体裁づくりの演習なのか、「街に職質巡査が増えたなぁ」くらいの印象しかなかったから、「戦時? なにを大袈裟な」と返していたのだけど、時が流れた現在、彼の妄言もあながち外れていない。
King-Qは居座るし、G-Shuckは流行るわで、世の中はイライラ&ギスギスしたムードに傾きがちだし、余計なストレスを背負わされてる感じも強まっているし。
ナマのヒトとヒトとの交流が“危ないこと”だと錯覚させられる状況と、なにをする際にも“お伺い”たてて“おゆるし”を得ないとやれない雰囲気に皆が慣らされてしまうのだけは怖い。それって実際に経験したことはないけれど、どこか“戦時中”ぽいじゃないか。
都会育ちで“疎開”もしないだろう自分は、不自由さが蔓延していく中でもここに留まり、「どこまでキリギリスの意地を張り通せるか試さないとなぁ」なんて思っている2021年6月。
まずは、おっきく深呼吸。
アンプにギターを繋ぐのはそのあとだ。ではまた!
いまみちともたか
Profile
いまみちともたか
いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。