イカサマイマサ『Rough and Ready』 イカサマイマサ『Rough and Ready』

イカサマイマサ
『Rough and Ready』

表題はジェフ・ベック・グループ、71年のアルバム。とは関係なく、今回はメール・アーカイヴの話。

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最近チェックしていなかったアドレスを思い出してアクセスしてみた。これが書き文字手紙なら「実家の整理をしていて旧い封筒の束が出てきた。開けるとそれは若い頃の父が結婚前の母にあてた恋文で……」みたいな淡い郷愁も期待できるかもだけど、e-mailはもっと現実的だった。

開く前でも、本文の一部や受信した日時、返信時刻までキッチリ表示され、まさに“記録”って感じの文字列に少したじろいでしまう。高速スクロールで遡ってみたけれど、“2004年”と表示された辺りでもう降参。

時間経過で美化? 希釈? 忘却?していたアレコレも、プロバイダー・メールのサーバーに“無修正”で保管されている。SNSとかの「◎年前の今日の貴方の投稿」みたいな通知にもだいぶ赤面させられるけど、まだ不特定多数に読まれることを意識してるぶんマシ。もっとクローズなだけにメール文体の“生々しさ”ときたら……。「できるならエディット、リミックス、そしてリマスタリングしたい」なんて誰に見られるわけでもないのに思ってしまった。

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新曲や新譜などをサブスクでストリーミング再生するリスナーが増えてからは、旧譜側の対抗策としてだろう、マスターからミックスをやり直し、それにデモ・テイクやオルタネイトver.なども加え、元々の倍近い収録曲数にしたボックスセットとかも見かけるように。

時代ごとに流行りの音ってあるし、“現役の耳”で聴き返すと「古い!」と感じて、“現在の音”に寄せたくなることもあるだろうから、80~90年代にアルバムをリリースしたヒトやバンドも「ミックスやり直したい」と思うのはなんとなくわからないでもない。

アナログ盤CD化、CD再発、あるいはストリーミング開始みたいな節目ごとに、“最適化作業”が行なわれるからBARBEE BOYSのそういう機会にも立ち会ってきた。

で、やっぱり“修正したい”という欲は生まれるけれど、自分らはアナログ・マルチを残してない(TDが済んだあとは消磁器にかけ、ほかのヒトの録音に使われていた)ので、“ミックスやり直し”とかは不可能。せいぜい2ミックスをプラットフォームに合わせマスタリングするくらいが精一杯。ま、それでもけっこう印象は変わるのだけど。

でも、きっとそのくらいで丁度いいんだと思う。“レコーディング=記録”だから、初発表時の匂いや綻びは修正せず残したほうが結局は価値高いはず。どんなに「やり直し」が効く状況だったとしても、「切り上げる」って決断、あるいは「引きずらない」勇気も大切。一旦「出来あがり」と決めたのならば、その瞬間の想いを信じて「さ、次行こう」がいいね。

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件のアドレスに溜まっていた未読や既読も含めた昔のメールは、すべての送受信者に改めて感謝したあと「選択した◎◎◎◎件のメールすべて削除しますか」に「はい」で答えることで着地。動作がサクサクになり快適です。だけど昨日またアクセスしたら新着はすべてスパム系。またしばらく放置だよ。

ではまた!

いまみちともたか

▲BARBEE BOYSの“Rough and Ready”?

Profile

いまみちともたか

いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。

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