ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(1/4) ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(1/4)

ギタリストなら絶対に聴くべきニッポンのブルースの名盤40(1/4)

『ギタリストなら絶対に聴くべき名盤40』の新たなテーマは“ニッポンのブルース”です。1969年から1990年にかけて録音された名盤を、下記の4つのパートに分けて順次公開します。紹介するアルバムは必ずしも年代順に並んでいるわけではありませんが、日本ブルースの歴史を地域と時期の両面から俯瞰できる構成です。

  1. 誕生前夜〜関西ブルースの幕開け
  2. 関西ブルース〜ソウル/ファンキー・スタイル
  3. 関西圏から関東圏へ
  4. 関東圏での隆盛〜ホンモノとの共演

では「1.誕生前夜〜関西ブルースの幕開け」から行きましょう!

文・選盤=久保木 靖

ザ・ゴールデン・カップス
『Blues Message』

●リリース:1969年
●ギタリスト:エディ藩、ケネス伊東

日本初のブルース作品?

“日本初のブルース作品”とされる1枚で、ポール・バターフィールド・BBやブルース・プロジェクトなどのカバー、歌謡曲なオリジナルで構成。サイケな音作りとストレートなブルース愛で、GSファンに一石を投じた功績は大きい。このようなブルース・ロックに影響を受けたグループの存在が、本格的な日本ブルース誕生への導火線となった。

ブルース・クリエイション
『Blues Creation』

●リリース:1969年
●ギタリスト:竹田和夫

国産ブルース・ロックの台頭

GSの失速と入れ替わるように台頭してきたのがニュー・ロック。中でもクリームやブルース・ブレイカーズなどに憧憬を寄せた実力派がブルース・クリエイション(のちのクリエイション)だ。収録曲はすべてホワイト・ブルース経由のブルース古典のカバー。長尺インプロのある「Spoonful」を始め、全編で竹田のファズ・ギターが暴れまくっている。

Various Artists
『Live In Magazine No.1/2』

※スリーブなしのアナログ盤のためジャケット写真なし

●リリース:1973年
●ギタリスト:レイジー・キム、塩次伸二、山岸潤史

デビュー前のウエスト・ロードが参戦!

記録された日本最古の“本格的なブルース”。東京・新宿にあったマガジン1/2というライブハウスで録音されたもので、アナログ盤500枚の限定プレスだった。デビュー前のウエスト・ロード・BBや妹尾隆一郎(harp)に加え、英米滞在歴のあるレイジー・キムの泥臭いスライド・ギターが超貴重だ。チェスの名盤『Drop Down Mama』にも通じる雰囲気あり。

久保田麻琴と夕焼け楽団
『Sunset Gang』

●リリース:1974年
●ギタリスト:久保田麻琴、井上憲一、藤田洋麻、レイジー・キム

南国に垣間見える本格ブルース

Jロックに南洋サウンドを持ち込んだ久保田だが、本作は妹尾隆一郎(harp)やレイジー・キムの参加もあり、日本ブルース黎明期の記録として欠かせない1枚。今やハワイアン・レゲエをプレイする井上の粘っこいブルース・プレイも抜群だ。夕焼け楽団が放つパラダイス感は憂歌団(特に内田勘太郎)への大きなインスピレーションともなった。

ウエスト・ロード・ブルース・バンド
『Blues Power』

●リリース:1975年
●ギタリスト:塩次伸二、山岸潤史

ニッポンのブルース、夜明けを宣言!

関西ブルース勢の先陣を切ったウエスト・ロード・BBのデビュー作。ロックなジャケットとは裏腹に真面目な(!?)ブルースが軒を連ねるが、いかにカッコ良くコピーするか、そういう時代だった。多くの曲でクールなリード・プレイを披露するのはギブソンES-335を手にする塩次。例外は「First Time〜」で、ここでヒステリックにギターで叫ぶのは山岸だ。

ウエスト・ロード・ブルース・バンド
『Live In Kyoto』

●リリース:1975年
●ギタリスト:塩次伸二

ブルース・オンリーからの脱却へ

デビュー作リリース後に山岸が脱退し、キーボードとサックスが加わった新生ウエスト・ロードによる2枚組ライブ作。ブルースのみから脱却し、ファンク〜バラードなど幅広く熱演。T-ボーン・マナーな塩次のプレイだが、山岸に捧げた「I’ll Sing〜」ではいつになくエモーショナルだ。「七転八倒」の際どい歌詞は時代を感じるものの抱腹絶倒。

憂歌団
『憂歌団』

●リリース:1975年
●ギタリスト:内田勘太郎、木村充揮

“日本語”ブルースの出発点

関西ブルース・シーン、もう1組の主役によるデビュー作。ウエスト・ロードが英語詞でエレクトリックだったのに対し、憂歌団は日本語詞でアコースティックと対照的だった。“天使のダミ声”と称される木村のボーカルと、時に強烈なスライドをぶっ込む内田のギターが最大の魅力だ。シングル・カットされた「おそうじオバチャン」は放送禁止に。

憂歌団
『Second Hand』

●リリース:1976年
●ギタリスト:内田勘太郎、木村充揮

ギターがより前面に出た2nd

ブルース形式(スリー・コード/12小節)を逸脱した曲が多いものの、演歌や歌謡曲にはならず、きちんとブルースに聴こえてくるセンスと力量には敬服しかない。トロピカルな「ハワイアン・ムード」は内田をフィーチャーしたインスト・ナンバー。その内田のギターは国産チャキのP-1だ。「10$の恋」は甲斐よしひろもカバーした人気曲。

憂歌団
『生聞59分』

●リリース:1977年
●ギタリスト:内田勘太郎、木村充揮

ブルース魂ほとばしる名ライブ

3rdにして初の実況盤。“生聞”と書いて“ライブ”と読ませる。「パチンコ」、「嫌んなった」などの初期名曲のほか、マディ・ウォーターズ〜加山雄三といったカバー曲をとおして、メンバー4人のブルース魂が随所にほとばしる。時にディープに、時にスウィンギーにフレーズを紡ぐ内田。かすれ音まで聴こえてくる生々しいスライドにはドギマギしてしまう。

Various Artists
『8・8 Rock Dayの軌跡[ブルース編]』

●リリース:1996年
●ギタリスト:塩次伸二、山岸潤史、田中晴之、船岡辰哉、山岸潤史、石田長生、近藤房之助

ギターの顔ぶれを見て驚喜せよ

1970年代に台頭した数々のフェスの中でも、ヤマハ主催の“8.8.ロック・デイ”は日本ブルースの躍進に大きな役割を果たした。その1974〜1979年のステージから熱いブルースをピックアップしたのが本作。田中晴之率いるファッツ・ボトル・BBのアーバン・スタイルが聴けるのが嬉しい。入道が歌う「California」では山岸と近藤のツイン・リードも激アツ!

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*本記事はギター・マガジン2021年7月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年7月号』

【特集】
浮雲
東京事変

■浮雲とファントム
■SPECIAL INTERVIEW 1:浮雲 『音楽』の使用機材を全曲解説!
■新作『音楽』を彩った浮雲の愛器たち。
■SPECIAL INTERVIEW 2:椎名林檎が語る“ギタリスト浮雲”
■東京事変 全作品ディスコグラフィー
■『音楽』での浮雲のギター・プレイ徹底解説! (*電子版にはスコアは収録されておりません)
■GM SELECTION SPECIAL(※電子版には収録されておりません)
「キラーチューン」東京事変
「空が鳴っている」東京事変
「閃光少女」東京事変
「修羅場」東京事変
「透明人間」東京事変