玄人の中から誰かをチョイスするクローズドなタイプや、これから育成するに足る素人を広く探す公開タイプ、主催にお金を落としてくれる者を募る(?)タイプ……と、その種類や目的もいろいろあるオーディション。
20代半ばの頃、同世代の友人に「公開オーディションあがりでデビューするなんてロックじゃないな」と言われた。決して妬みや嫉みからの発言ではなく、オーディション自体が興行として面白くなるようショウアップされていたりするモノも多いから、そこらが気に食わない硬派としての意見だったみたい。あと、その言葉には「我が道を行くのがロックなのに、『プロとしてそこは割り切らないと』などと言い出しそうな審査員連中には屈するのか?」というニュアンスが込められていたようだ。
“いやいや、信念曲げてまでの割り切りなんて俺はしないぜ”と思いながらも「ロックバンドじゃない」と言われたことの不愉快さが先に立ち、黙ったままプルプルしていた。いま思い出すと可笑しい。
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10代の終わり頃、初めてボーカリストのバックで弾くことになったきっかけは「欠員が出たし、補充メンバーに、いまみちって奴はどう?」という知人の紹介で行った某R&R劇団の“非公開お試しセッション”だったけれど、バービーでのデビューは、レコード会社主催の公開オーディションがきっかけだったし、たしかにショウアップされていた。でも我々は割り切るどころか「主宰レーベルはロックっぽくない! 系列の別レーベルでならばデビューしてあげてもいい」などとムチャを言い、当時“ロックバンド”を欲しがっていたその系列の別レーベルから無事デビューしたものの、エラいヒトたちは「とんでもない連中にグランプリを獲らしてしまった」と困惑したそうな。
知らなかったろ? 20代の頃の友人よ。
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受ける側にしてみれば、勝ち負けや順位や自身の出来不出来が重要かもしれないけれど、オーディションを開いた側にしてみると、適性検査みたいな一面も強かったりもするし、相手に自分のどこをチェックされているかは間違わないほうが良さげ。彼らは、だいたいキミの出来不出来より「気質&のびしろ」を見ていることが多い。
先述の劇団ボーカリストのバック・メンバー適性審査に通り、本番を迎えたハイティーンのいまみち青年はアタマ真っ白、まったく思うように弾けず、終演後は控え室で暗い顔して落ち込んでいた。そこに劇団の古株メンバーがやってきて、「よぉ、オマエぶち切れてサイコーだったじゃん。ビデオ撮ってたんだ、一緒に観ようぜ!」と会場のモニター前に連れて行かれた。
「オレら“割り切り”なんて求めてないよ。ウチら“思い切り“を大事にしてるから」
そう言ってくれた劇団の古株氏と今年の春SNSで再会。今も元気にRockしてるそうです。
あら素敵。では、また!
いまみちともたか
Profile
いまみちともたか
いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ=“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。