ギタリストなら絶対に聴くべき60年代ブルースの名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべき60年代ブルースの名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき60年代ブルースの名盤40(4/4)

60年代ブルースの名盤を紹介する連載の最終回。今回取り上げるのはおもに1967年から69年にかけてリリースされた作品です。この時代のブルースを反映して、アルバム紹介文の中にも“ファンク”、“ファンキー”といったキーワードが多く見られます。

文・選盤=小出斉

Albert King
『Born Under A Bad Sign』

●リリース:1967年
●ギタリスト:アルバート・キング

王者がくり出すファット&ファンキー

シカゴ、セントルイスを経由して、66年にメンフィスにたどり着いたアルバート。スモーキーな歌、ダイナミック極まりないベンディングを駆使した、レフティからくり出すまったく独特のギター・フレーズを、ファットなスタックス・サウンドに乗せ、ブルースのモダン化をより一層進めたものだ。ロック勢への影響も特大だった。

Mississippi Fred McDowell & Johnny Woods
『Mama Says I’m Crazy』

●リリース:2002年
●ギタリスト:フレッド・マクダウェル

ミシシッピの催眠グルーヴが爆発!

ストーンズの「ユー・ガッタ・ムーヴ」のオリジネイターで、ボニー・レイットも私淑したフレッド・マクダウェルの67年録音。リフを奏でるフレッドのスライド・ギターが、ジョニー・ウッズのハーモニカと混然一体となり、いつも以上に、グガジャカグガジャカと元祖・北ミシシッピの催眠グルーヴが爆発する。レッツ・ダンス!

Magic Sam
『West Side Soul』

●リリース:1968年
●ギタリスト:マジック・サム

モダン・シカゴの永遠の1枚

間違いなく、モダン・シカゴ・ブルース永遠の名盤。1曲目はソウル風味。全体もマディ・ウォーターズ系のダウンホーム・シカゴ派でもなく、B.B.キング直系でもない、オリジナル・スタイル。収録曲のほとんどはカバーなのだが、マイナー・ブルースからブギまで、何とも鮮烈で、はっきりと新しい時代の到来を告げたものだった。

Magic Sam
『Live!』

●リリース:1981年
●ギタリスト:マジック・サム

ライブ盤を聴くならこれから!

サムのライブ録音も何種類か出ているが、まずはこの2枚組(米盤CDは曲目を削った1枚モノなので、CDを買うなら日本盤を)。猥雑な熱気溢れる63、64年のシカゴのクラブでの演奏と、トリオでの伝説的な69年アナーバー・ブルース・フェスで、特に後者の勢いはまさに完全燃焼。ブギの凄まじさはスタジオ録音を軽く凌駕する。

Johnny Otis Show
『Cold Shot!』

●リリース:1968年
●ギタリスト:シュギー・オーティス

R&Bのゴッドファーザー

40年代から西海岸で八面六臂の活躍、白人ながらR&Bのゴッドファーザーと呼ばれたジョニー・オーティス。そのモットーは“人々の聴きたい音楽をやる”。ということで、68年にはファンキーな「カントリー・ガール」をヒットさせ、本作発表。ギターは当時15歳の息子のシュギー。筋金入りセンスを持つ“天才少年”だった。

Freddie King
『Is A Blues Master』

●リリース:1969年
●ギタリスト:フレディ・キング

ファンキーなインストが出色

68年、キング・カーティスのプロデュースのもと、ジェリー・ジェモット、ビリー・バトラーら、ニューヨークの精鋭ミュージシャンをバックに録音。前半(LPのA面)は歌もの、後半(B面)はインストという構成。より成熟した歌ものもいいが、特にインスト群が超絶ファンキーで「ハイダウェイ」も見事アップデートされた。

Little Milton
『Grits Ain’t Groceries』

●リリース:1969年
●ギタリスト:リトル・ミルトン

ファンキー・ブルース快作

10代でメンフィスのサンからデビュー、セントルイスで力をつけ、60年にチェス入り。65年の「ウィアー・ゴナ・メイク・イット」のヒットでスターに。B.B.やブランドより若いソウル世代で、時代にも順応。69年の本作は、ヒットしたタイトル曲や「ジャスト・ア・リトル・ビット」などソリッドさ際立つファンキー・ブルース快作。

T-Bone Walker
『Funky Town』

●リリース:1969年
●ギタリスト:Tボーン・ウォーカー

モダン・ブルースの父

“モダン・ブルース・ギターの父”、Tボーンの60年代の代表作。ポール・ハンフリー、メル・ブラウンら西海岸の腕っこきをバックに録音したもので、タイトル曲はクールな4ビート・インストだが、オーソドックスなスタイルから、過去作のファンキーなリメイクまで、度量の大きさとオリジナリティをしっかりとみせつける。

B.B.King
『Completely Well』

●リリース:1969年
●ギタリスト:B.B.キング

ファンク・ブルースとしても一級品

この前作、『Live And Well』の、ファンク系に寄せた“ウェル・セッション”を発展させ、ジェリー・ジェモット、ハービー・ラベルらニューヨークの一流セッションマンを従えた69年のアルバム。「ソー・エクサイテッド」始め、時代に適応したファンク・ブルースを展開し、ここから「スリル・イズ・ゴーン」のヒットも生まれた。

Muddy Waters
『Fathers And Sons』

●リリース:1969年
●ギタリスト:マディ・ウォーターズ、マイク・ブルームフィールド

ロックンロールとの親子関係

“ブルースには子供がいたよ、その名はロックンロール”と歌ったマディだが、それに先立って、そんな関係を明確にした69年のアルバム。マディやオーティス・スパンらを父に、マイク・ブルームフィールド、ポール・バタフィールドらを子供に見立てたセッションで、両者の“父と子”たるゆえんをみせつつ、その違いも露わにした。

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*本記事はギター・マガジン2021年10月号にも掲載しています。

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