ロバート・フリップ『Radiophonics (1995 Soundscapes Volume1- Live In Argentina) 』 岡田拓郎の“Radical Guitarist”第12回 ロバート・フリップ『Radiophonics (1995 Soundscapes Volume1- Live In Argentina) 』 岡田拓郎の“Radical Guitarist”第12回

ロバート・フリップ『Radiophonics (1995 Soundscapes Volume1- Live In Argentina) 』
岡田拓郎の“Radical Guitarist”第12回

岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第12回はキング・クリムゾンのロバート・フリップが生み出した異色作、『Radiophonics (1995 Soundscapes Volume1- Live In Argentina) 』をピックアップ! 宇宙的なサウンド、パンニングも計算しながらの即興プレイ、ギターによる演奏だと知って聴くと驚愕することでしょう。

文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸

今回紹介する作品は……

『Radiophonics (1995 Soundscapes Volume1- Live In Argentina) 』
ロバート・フリップ

Discipline Global Mobile/DGM 9505/1996年リリース

―Track List―

01. Radiophonic I
02. Radiophonic II
03. Buenos Aires Suite
04. Atmosphere
05. Elegy (For Mothers And Children)
06. Streets
07. Sky

“フリッパートロニクス”の作り出す宇宙空間

キング・クリムゾンのギタリストとしてお馴染み、ロバート・フリップ(Robert Fripp)がライフワーク的に製作しているアンビエント・シリーズ=“Soundscapes”の第一弾が本作。

フリップは1980年前後から、2台のテープ・レコーダーを用いてリアルタイム・ループ録音を可能にする自身考案のシステム、“フリッパートロニクス”を使った実験的なギター・アンビエント作を制作している。そして時代は移ろい、時はデジタル時代となった1995年、彼は”フリッパートロニクス”をデジタル化。さらなる自由な創造マシンを得たフリップは、1996年にリリースした本作で新たなスタイルを確立した。

目隠しで本作を聴かされたなら、目の前に荘厳なオーケストラが現われるが、瞼を開けばマシンに囲まれギターを抱えたフリップが1人で奏でている……という姿に驚きを隠せない。宇宙の星雲、何万光年も先から降り注ぐ光のように抽象的で時間が消滅してくような感覚に包まれていく。ギター/シンセ/システムの詳細はわからないが、曲線的なパッセージや有機的なビブラートはギター的と言えるかもしれない。

収録トラックはアルゼンチンのブエノスアイレスで行なわれたライブ・パフォーマンスからのもので、わずかな編集が施されてはいるものの、全編即興的に奏でられている。サウンド・デザインのセンスはもちろん、その即興的な構築力には脱帽せざるえない。

著者プロフィール

岡田拓郎

おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。

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