新世代のギター・ヒロイン、イヴェット・ヤングが生まれるまで 新世代のギター・ヒロイン、イヴェット・ヤングが生まれるまで

新世代のギター・ヒロイン、イヴェット・ヤングが生まれるまで

タッピングを駆使して美しいメロディ・ラインを紡ぐギタリスト、イヴェット・ヤング。その唯一無二のプレイ・スタイルはSNSを中心に話題となり、次世代を担うギター・ヒロインとして注目を集めている。今回は、彼女がどのようにしてギターと出会い、コヴェットを結成するに至ったのか、その歩みをご紹介しよう。

文=伊藤雅景 写真=Eli Chavez

クラシックの英才教育を受けた幼少期

王道のロック・ギターとは一線を画す、タッピングを用いた新たなギター表現を模索する新世代のギター・ヒロイン=イヴェット・ヤング。その独創的なプレイ・スタイルの源流は、幼少期の音楽教育にまで遡る。

1991年6月18日、カリフォルニア州生まれ。両親はともにクラシックを中心に活動する音楽家だった。そのためイヴェットも、4歳からピアノ、7歳からバイオリンを習うなど、クラシックの世界で活躍するプレイヤーになるための“英才教育”を幼い頃から受けていた。そして10歳になる頃にはカリフォルニア・ユース・シンフォニー(注:カリフォルニア州の大規模なジュニア・オーケストラ)に加入し、各地のコンクールで演奏をするようになる。

しかし、そこでは音楽技術の優劣やコンクールの結果が重要視され、そのプレッシャーから精神面を崩してしまう。そして中学校に入学する頃には入院を余儀なくされるほどになり、ついにはオーケストラを離れることとなった。

そんな彼女を救い、再度音楽の“楽しさ”を教えてくれたのが“ギター”だった。

イヴェット・ヤング。Photo by Howerd Chen
イヴェット・ヤング。Photo by Howerd Chen

入院中のセラピーの一環としてギターを始め、独学で練習をスタート。曲のコピーや作詞作曲を“日記代わり”に取り組むようになった。その当初からタッピング奏法や、ピックを使わないフィンガー・スタイルでの演奏を取り入れていたそうで、そのルーツは“幼少期からピアノを弾いていたから、「両指でメロディを奏でる」ということには慣れ親しんでいた”ことにあるという。

この時期の経験が、彼女のギター・スタイルの土台となっていった。イヴェットは当時をふり返り、このような言葉を語ってくれた。

クラシックはテクニック重視で競争が激しい世界だった。でも、ギターを弾く時にそういったものは一切気にしなくていいのよ。誰とも比較されないし、競争もしなくていい。ただ自由に表現をして、楽しめるもの。そもそも音楽とはそうあるべきものだと私は思うわ。

──イヴェット・ヤング

ギタリストとしての決意〜コヴェット結成まで

彼女が高校生だった2009年、遊び感覚でYouTubeに投稿したという動画をきっかけに、ギタリストとしての知名度が高まっていく。その後も自身の楽曲の公開を続けながら、大学へと進学する。

2009年に投稿した初めての演奏動画。

大学では美術を専攻。イヴェットは将来の職業について“音楽か美術か”の二択で決めかねていたが、“まだ若いし、とりあえず両方をやってみてから考えようと思っていた”そうだ。ということで、彼女は大学を卒業してしばらくは美術の教師を務めながら、仕事終わりの時間を使って作曲をしていた。

2014年には初のソロEP『Acoustics EP』を発表し、徐々にアーティスト活動の幅を広げていく。そしてついに彼女はギタリストとしての道に絞り、2015年に3人組バンドのコヴェットを結成した。

コヴェットは、イヴェットが1人で書き溜めていた楽曲をバンドでプレイするために、彼女の古い友達らに声をかけ集まったのが始まりだった。当初はビジネス・ライクな動きはせず、ツアーも回らずに、単なるガレージ・バンドとして自由に活動を続けていたが、結成初年度の2015年末に発表した初EP『Currents』がマスロック界隈で一躍話題に。そして、彼女のYouTubeチャンネルやSNSも爆発的に再生回数が伸びていった。

この時すでにオープン・チューニング×タッピングというイヴェットのプレイ・スタイルは確立されており、日本でも“タッピング女王”という異名とともに知られるようになっていく。お気に入りのバンドとして、アメリカン・フットボールやtoeなどを挙げているように、彼女が多用するオープン・チューニング(FACGCE)は、そういったマスロック・バンドからの影響だろう。

そこからコヴェットはメンバーの脱退などがありながらも、毎年コンスタントに作品の発表を続けていく。

また、ポリフィアやサン・ホロなどの楽曲にフィーチャリング・ゲストとして参加したり、2020年にはIchika Nitoとのコラボ楽曲なども発表。また、アイバニーズからは彼女のシグネチャー・モデル、YY10が発売された。

そして2023年にはコヴェットの最新作『catharsis』を発表し、同年9月には来日公演も決定。幼少期の辛い経験をギターに活かし、いまや世界が注目する、新時代のテクニカル・ギタリストとなった。彼女の活躍は今後さらに加速していくだろう。

2023年現在のコヴェット。左からジェシカ・バルドー(d)、イヴェット・ヤング(g)、ブランドン・ダヴ(b)。Photo by Sara Phung
2023年現在のコヴェット。左からジェシカ・バルドー(d)、イヴェット・ヤング(g)、ブランドン・ダヴ(b)。Photo by Sara Phung

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作品データ

『catharsis』
COVET

『catharsis』
COVET

P-VINE RECORDS/PCD-25364/2023年4月21日リリース

―Track List―

  1. coronal
  2. firebird
  3. bronco
  4. vanquish
  5. interlude
  6. smolder
  7. merlin
  8. lovespell

―Guitarist―

イヴェット・ヤング